凛月ハピバSS


「ただいまぁ〜」

腕いっぱいのプレゼントを抱えて帰ってきたお兄ちゃんは満足そうな顔をしていた。

「おかえり…」

今日が何の日かなんて聞かなくても分かる。お兄ちゃんの誕生日だ。

それで皆からお祝いされていたのも知っている。零兄ちゃんは行っていたけど俺はその場には行かなかった。

飾り付けの準備とかはしたけど始まる前に帰った。本来なら生まれた日をお祝いするのが普通だけど…、俺は自分がいつ生まれたかも分からない。

そのまま連れてこられて朔間家の末っ子になった俺には家に来た日がちょうど誕生日だと言われて育った。何も知らなかった最初は嬉しかった誕生日がお兄ちゃんにお前は拾い子だと言われてから段々嫌いになっていた。

だから最近はお兄ちゃんの誕生日を素直に祝う気になれなかった。


「俺もう寝るから…おやすみ。」

夜遅く帰ってきたお兄ちゃんを一瞥して自分の部屋に行くため階段に足をかけた。

「…ちょっと待ってよ。何か忘れてない〜?」

「…何が?」

「今日何の日か知らないってわけじゃないでしょ〜?」

「…皆から祝ってもらってよかったね。」

こう言えば満足するかとお兄ちゃんを見るとムスッとした顔で俺を見てきた。

「お兄ちゃんの誕生日忘れたわけぇ?朝から1回もおめでとうって聞いてないんだけど」

「…皆から言ってもらったでしょ」

「俺に口答えする気?」

お兄ちゃんは階段を登ろうとしていた俺の手を掴んで、無理やりリビングに連れてきた。

「離してよ…」

「ふふふ…♪誕生日ならケーキでしょ…♪さっき食べたのも美味しかったけど、俺が作ったのはもっと美味しいんだよねぇ」

ぶつぶつ言いながら冷蔵庫から取り出してきたのは紫色と泥色の何か分からない物体だった。

「お兄ちゃんの誕生日って分かってるなら、ちゃんとケーキと一緒にお祝いしなきゃ…♪」

「なにこれ…」

謎の物体をフォークですくってお兄ちゃんは俺の口に近づけてきた。

「あーん♪」

「なっ、なにっ、それ食べ物?!ちょっ」

まさかこの得体の知れないものを食べろと?!
必死で顔を背けたのに、お兄ちゃんに顔を固定されてどんどん不気味なものが近づいてくる。

「無理っ、吐くっ、こんなのっ」

「ほらぁ、口開けて、あーん♪」

涙目になりながら必死で抵抗したのに、お兄ちゃんの食べろという顔が微笑んているのに目が笑っていなくて唇が震えた。

それを見計らって無理やり口に押し付けて来た物体は少しだけ口の中に入ってしまった。

やだっ、絶対不味い!と覚悟して舌で触れた。

「…あ、あれ…」

おどろおどろしい色味なのに味は普通に甘くて美味しい。

「どう?俺のケーキ♪美味しいでしょ〜。ほら、もっと食べて。それでお兄ちゃんお誕生日おめでとうってお祝いして」

「お、可笑しいよっ何で自分の誕生日なのにケーキ?なんか作ってんの…」

俺の言うことなんか無視してお兄ちゃんはフォークですくっては何度も俺の口に運んできた。味は美味しくても見た目がグロテスクで俺は受け付けなかった。

おめでとうと言わないとうぇっ、てなるまで口の中に入れるなんて脅してきたから観念して「言うから!」と言うとやっと解放してくれた。

「…お兄ちゃん、お誕生日おめでとう…」

「ふふふ♪そうやって一生、毎年、俺の誕生日を祝って…♪」

俺になんか祝ってもらわなくてもお兄ちゃんの誕生日を祝う人はいくらでもいるのに…。

俺は毎年自分の本当の誕生日はいつなんだろうって嫌になってるっていうのに。

「俺が弟がほしいってお願いしなきゃ、なまえはここに来なかったし、拾われなかったら今日まで生きてなかったかもしれないんだよ?命の恩人な俺が生まれた日でしょ?なまえは人一倍祝わないとねぇ♪それで俺の誕生日を祝う度に連れてこられた自分の本当の誕生日はいつなんだろうって悩んで沈んじゃえばいいよ。そうやって弱ったらお兄ちゃんがいつでも慰めて上げるからねぇ…♪」

くすくす笑うお兄ちゃんは正真正銘、酷い人だ。すぐに俺の血を飲むし、八つ当たりもしてくるし、俺にひどいこと言っても悪びれもなくむしろ楽しそうに笑っている。

全部俺の思っていたことを言い当てられて悔しくて唇を噛み締めた。

「誕生日を迎える度に俺のおかげで生きてるんだって噛み締めて絶望すればいいよ♪ああ…最高…♪」

腕組みをして笑う姿は少しだけ零兄ちゃんに似ている。

「ああ…そうだ。まだ誕生日プレゼントもらってなかったよね」

「……用意してないよ。」

「へぇ〜…。さすがなまえ。分かってるねぇ用意してないってことは自分の体を差し出すってことでしょ?」

「はぁっ?!そんなこと、」

「いいねぇ、誕生日プレゼントは自分の血。それなら俺も頷けるよ。さぞかし美味しい血にしてるんだろうね。これで不味かったらタダじゃおかないから♪」

「ち、ちがっ、血なんて」

腕を引っ張られてお兄ちゃんの部屋に連れ込まれた。ベッドに押し倒されて来ていたパジャマのボタンを外された。


「いただきまぁす♪」

ニヤリと笑って俺の首に顔を埋めたお兄ちゃんは本当に酷い人なんだ。



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