(本当は気づいてる鳴上嵐×変なところで積極的な内気吃り男主)
休み時間にスマホを開いて、拡大すればいいものの、近すぎるくらいの距離でスマホの画面を覗き込んだ。
目が疲れるくらい見ていたら前の席に誰かが座った。
「あらっ、みょうじちゃん何見てるのぉ?」
「っっっ!!あ、あ、嵐くん…」
びっくりしてスマホを机の上に落としそうになった。
「やだぁ。びっくりさせちゃった?」
「だ、大丈夫…」
何を見ているの、と聞かれたけどまさか嵐くんのモデル写真を漁ってますとは言えないのでもごもごとなってしまう。
前の席は嵐くんの席じゃないけど、こんな風に嵐くんが前の席だったら、毎日嵐くんの背中を見放題でプリント渡す時に手が触れちゃったりなんかして、それと嵐くんと連絡先変えれたりもできちゃったり…
「みょうじちゃん…?」
「…へっ?!うぇ!あ、あ、ご、ごめん…!」
危ない、願望を色々考えてたら嵐くんの声が遠くなっていた。せっかく生身の嵐くんが目の前にいるのに!
「うふふ、そのスマホのやつって、あたしこの間仕事したわよぉ?」
「あっ、あっ、うん、こ、これ気になってて…!」
そんなわけない。ただ嵐くんが見たいだけに開いていた洋服ブランドのサイトだ。
「オシャレだし、あたしも気に入ってるのよねぇ♪」
「そ、そうなんだ…!」
嵐くん、ここの服好きなのかな…。仕事受けるくらいだし、俺には全く似合わないけど、こういうお店に出かけたりするのかな…。服を選んだり…もし誘ったら一緒に行ってくれるかな…、それから一緒にご飯食べて、遊んで…
「あ、嵐くん…」
「なあに?」
「あ、あの、ここの服…俺も、興味あって…い、一緒にお店…行ったり…とかっ、ど、どうかな…?こ、今週の休みとか…」
あああっ!言っちゃった!心臓がバクバクして顔が熱い。
すごく恥ずかしい。背が高くてモデル体型の嵐くん、憧れの人で、俺は嵐くんに恋してる。
同じクラスというだけで幸せなのだれけど、誰にでも優しい嵐くんはこんな内気で根暗な俺にも話しかけてくれる。
名前で呼んでもらえてはないけど、こうして話しかけてくれるなら脈アリかなって、ネットで調べた結果脈アリらしいから勇気を出して誘ってみた。
俺の唐突の誘いに嵐くんは俺の顔を見て目をぱちくりさせたあと「あー…」と少し言いにくそうに目を伏せた。
「ちょっと、用事があるからいけないの…。ごめんねぇ」
「あ、そ、そ、そうだよね!ご、ごめん急に…」
かなりの大ダメージだ。吃りながら手を降って誤った。お腹が痛くなってきた。ネットで断られた時の対応方法なんて見てないから、このあとの会話をどうしたらいいのかわからなくなった。
「あ、あ…ちょ、ちょっとトイレに…」
最悪だ。多分いきなり誘ってきていきなりトイレに行くとか言い出すなんて変なやつだと思われたかもしれない。
泣きそうになりながらトイレに駆け込んだ。
うう…、この縮まらない距離がすごく辛い。
もしかしたら脈ナシなのかもしれない…。
脈ナシなのに恋するなんて不毛すぎる…。じくじく痛む胸とテンパって誘ったがゆえに興奮状態に陥っていて落ち着くのにしばらく時間がかかった。
教室へ戻る頃には嵐くんは自分の席に戻っていた。残念に思いながらまた嵐くんの写真を探した。
***
休日、断られなかったら嵐くんと遊んでいただろう日。
1人で街に出た。
ぶらりぶらりと適当に買い物したりしながら歩いていると、嵐くんと話したブランドのお店があった。
小洒落た雰囲気でとてもじゃないけど俺一人じゃ入れない。本当は嵐くんと来たかったのに…とチラチラみているとちょうど入口のドアが空いて中から人が出てきた。
びっくりして、持っていた袋を落としそうになった。
出てきたのは嵐くんだった。それと、もう一人細くて小さな女の子。
ずきりと心臓が痛くなった。背の高い嵐くんと小さくてか弱そうな可愛い女の子。なんだかいい雰囲気で辛くて泣きたくなった。
その女の子の位置に行きたいと思ってしまった俺はいけないんだろうか。嵐くんの隣で見上げたいと思ってしまう俺を嵐くんは知ってしまったら気持ち悪いだろうか。
見たくないのに目が離れなくて、ずっと見続けていると視線に気づいたのか嵐くんがパッとこっちを見た。
あっ、と思ったけど遅くてバッチリ目が合った。
何だか悪いことをした気になって目を逸らしたかったのに逸らせなかった。
嵐くんは少し目を見開いたけど、隣の女の子にそでをくいくいと引っ張られてまた視線は女の子に戻った。
それから何事もなく2人は歩いて行った。
別に嵐くんは何も悪くない。用事があるって行ってたし、たまたま出会っただけだ。たまたま、そう、たまたまなのに、俺は悲しさが拭いきれなくて袋を握りしめた。
これは本当に不毛な恋なのかもしれない。
***
次の日、学校に来たらいつもは嵐くんを真っ先に視界にいれるけど1度も嵐くんのことは見なかった。
見たら辛いんだ。
昨日の夜からずっと考えてしまって、今は嵐くんは見れない。
見たら心臓が痛むから。
休み時間もずっと俯いたままでいた。いつもはスマホを出して嵐くんを探すけど今日はそれもしない。
ただひたすらに何かに耐えるように俯いていたらまた前の席に誰かが座った。
「どうしたのぉ?」
声をかけられて肩が跳ねた。
恐る恐る顔を上げると嵐くんが足を組んで前の席に座っていた。
「べ、別に…何も…」
目が合わせられない。かなり挙動不審になって、顔を首が痛いくらい真横に向けた。
「…昨日は挨拶できなくてごめんねぇ?」
「…っ!!あ、いや、そ、そんな…」
やっぱり嵐くんは気づいてたみたいだ。
「デ、デートの邪魔するわけには…、いかないし!あ、あの、気にしないで…っ…ください…」
自分で言って辛くなった。心臓が握りつぶされそうな程、苦しい。
ごにょごにょと語尾が弱くなり、また顔を俯くことになった。
泣くな泣くな泣くな、こんな教室の中でいきなり泣きだしたらそれこそ嵐くんにドン引きされる。
じわりじわりとこみ上げてきそうな涙を我慢していると、嵐くんがため息をついた。
「デートじゃないわよぉ。あれは、あのブランドの社長の娘さん。一日付き合ってくれって言われたから一緒にいただけでそんなんじゃないわよ」
え…、
驚いて顔を上げ思わず嵐くんを見た。
「…そ、うなんだ…」
てっきり彼女かと思っていた。少し安心してほっと息をついた。
「で、でも嵐くんかっこいいから彼女、ふ、普通にいるよねー…あ、はは…」
「……いてほしい?」
「…え、えっ…?いや、や、あ、あの…」
「いると思う?」
「あ、あ…い、いなくて、いい…」
何を言ってるんだろうか俺は…!いると思う?って聞かれたのにいなくていいなんて願望を言ってしまった。
「……ふふっ♪いないわよぉ。この間言ってた話、もうなくなった?」
「えっ、?あ、あ、そうなんだ…う、うれし…、あ、えっ?この間…?、あ、や、なくなってない!ない!」
動転しすぎて上手く話せない。
「ふふっ、漏れてるわよぉ。じゃあ次の休みでもどこか一緒に行く?」
「へ…?」
「どこか行きたいところある?」
「だ、誰と…?」
「あたしと。」
「お、俺が…?」
「そう」
「…っ!!」
嬉しすぎてお腹の下からなんか飛べそうな気がする…!意味がわからない表現だけど、でもそれくらい嬉しすぎて死にそうだ。
「い、行きたい…っ!」
「どこ行きたい?」
「え、え、…あ、嵐くんと…映画も…買い物も…、水族館も、遊園地も…あ、行きたいところいっぱい…」
まさか自分の脳内願望が口から漏れてるなんて気づいてない俺は考えあぐねていた。
嵐くんはくすくす笑って俺の答えを待っている。
「どこでもいいわよ。なまえちゃんと2人で行くことに意味があるんじゃない?」
「……っ!!!な、な、なまえ…」
嵐くんの言葉を深読みしすぎて、恥ずかしくなって机に頭を打ち付けるのは仕方がないと思う。
▼ back ▼