05


「それじゃ…いってきます…」

玄関で靴を履き替える独歩に手を振る。

「パパ、いってらっしゃい…」

寂しそうな子供を演じて独歩を見上げてみた。

「ちょっと、ほんとそれやめよう…。毎日のパパいってらっしゃい、とパパおかえりで俺は家庭を持ってるような気分になってきてるからほんとやめてシャレにならん…」

「なぁんだよ独歩〜!可愛い我が子が今から頑張ってお仕事してくるおとーさんをお見送りしてんだろ〜行ってくるよのチューくらいしてあげろよぉ!」

「いや、俺チューは勘弁だわ。」

俺の頭に手を置いて、肩を竦める一二三に対して、手を上げて真顔で訂正しておいた。

「一二三っ!お前はそうやって面白がって…!家庭があると思うだけで肩の荷の重さは半端ないんだぞ…っ!」

「でもさ〜、独歩が言ったんじゃん?我が子を育てる思いでいないと保護者なんてやってられないんだ、って力説してたのは独歩じゃん?」

「そ、それを持ち出すなよ…!はぁ…疲れた…もういいとりあえず行ってくる…」

「「いってらっしゃーい」」

通勤カバンを持って出ていった独歩を見送って俺と一二三はリビングに戻った。

ここ最近はここでの生活にも慣れて朝は独歩のお見送り、夕方は一二三のお見送り、って感じだ。

そして一緒に生活するにつれて俺の中身が25歳だというのも伝わったのか、割と仲良く生活できている。

「俺も毎朝通勤してたのになぁ。今じゃ子供かぁ。暇すぎる。」

「っつっても学校も行けないだろ〜?」

「いや、むしろ行きたくない。もう学校での勉強は嫌だな。そうだ、家でできる仕事とか探すか…」

俺がぶつくさ呟いて独歩から貸してもらったパソコンを開いていると一二三がいきなり俺を抱き上げた。

いきなり変わった視界に驚いて一二三にしがみついた。

「う、わっ」

「ひぁ〜やっぱ軽いなぁ〜。俺っちー、今から寝るからなまえも寝る?」

「え、まだ起きたばっかりなんだけど。」

「子供は寝て育つって言うだろぉっ!」

あっはは!と笑いながら一二三の部屋にそのまま連れていかれた。

だから、子供じゃないって。いや、まあ体は子供だけどな。

独歩の部屋と違って綺麗な一二三の部屋に抱っこされたまま連れてかれた。

「なまえいっつも独歩のところで寝てるだろ〜。たまには俺とも寝ようぜー。」

はい、ここどーぞ。なんて言われて空いたスペースに寝かされた。

カーテンを締めれば朝なのに真っ暗だ。
さすが昼夜逆転生活だ。遮光カーテンで完全に光を遮っている。

「んじゃっ、おやすみ〜♪」

言うが早いかすぐに一二三は目を閉じて1言も発さなくなった。


はぁ…2人とも俺を子供扱いしすぎだ。
体は子供とはいえ中身は25歳成人男性だぞ?

好き好んでなぜ男2人でベッドでくっついて寝ないといけないんだ…

一二三はよく俺がプニプニしてる、とか柔らかいとか言っていたけどショタコンなんだろうか…。

まさか女性が苦手だから…同性が……。

一二三の顔をじっと見てみた。

整った顔は誰からもモテそうなんだけどなぁ。

まあ、あの性格だと個性的すぎて中々近づく人はいないのかもしれない。

まあ悪い人たちじゃないからいいか。こんな俺を拾って面倒見てくれてるんだから良い人たちだ。

静かな部屋の中で目を閉じるとだんだん眠くなってきた。

体が子供だと、やっぱいくらでも寝れるのかな…なんて思いながら夢の世界に入り込んだ。


***


「おーい、起きろ〜」

「ふがっ!」

つんつんと頬っぺをつつかれて起こされた。
正直つんつんにイライラしたから、一二三を睨んでやった。

「もう…やめろぉ…」

寝起きのせいで呂律が上手く回らない。むにゃむにゃと言っていたら布団を剥ぎ取られた。

「えー?もう15時だぞ〜俺っちも準備しないとなぁ」


「…15時…?はぁ…なんと贅沢な時間の使い方…」

俺がリーマンの時なんてこの時間は汗かいて働いてたのになぁ…。

準備を始めた一二三を尻目に俺はリビングに戻ってパソコンを開いた。


暫くして一二三が玄関に行ったから俺もついて行った。

朝、独歩をからかったし一二三にもいっちょお見舞いしてやるか。

「うーしっ、じゃーひふみんいってきまーっす!」

ほんとこんな性格でよくホスト出来るよなぁ。ていうか、女性苦手なのにどうやって相手してるんだよ、と不思議に思うがまた今度聞いて見よう。

「パパぁ、いってらっしゃーい」

手をひらひらと降ったら一二三は目をぱちくりして俺を見つめた。

え?まさか自分がやられるとは思ってなかった?

ひひ、やったね大成功。なんて内心笑ってたら一二三が腰を折って屈んできた。

「いってきま〜す♪」

ちゅ、と軽いリップ音に今度は俺が目をぱちくりさせた。

ほっぺたに残る柔らかい感触。

「いってらっしゃいのチュー!」

してやられた。一枚上手でした〜みたいな一二三の笑い顔に頬を膨らませながら出ていく一二三を見送った。


独歩が帰ったら報告しよう。
一二三がいってらっしゃいのチューしてきた、って。




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