06


独歩side


うわぁ、雨降ってきてるよー。

傘持ってない!

コンビニでビニ傘買って帰ろう。


そんな会話が社内で飛び交う中、俺は猫背気味にパソコンに向かって溜まった仕事を消化していた。

雨かぁ…傘持ってきてなかったな。

まぁどこかで買ってかえればいいか。

最近夕方になるにつれて目が霞むのはもう歳だからか…?ああ、こんな毎日で俺は歳を重ねていくのか…。

はぁ、と小さくため息をついて出力した紙を取るためにコピー機のところへ行こうと立ち上がった。
そこへ女子社員の子が歩いてきた。

「あ、観音坂さん。お子さん…?来てますよ?」

「…え…?」

お、お子さん…??

女子社員に声をかけられて戸惑っているとフロアの入口のところについてきてくれ、と言われ後ろを歩いた。

「観音坂なまえくん、って言ってたので観音坂さんの…」

と言いながら連れてこられた入口には、まさかのなまえくんがいた。

「っ?!…えっ?ええっ?!ど、どうしてここに…っ」

「雨降ってるから…傘持ってきたー」

小さななまえくんは傘を見せて笑った。

「か、傘?!と、とりあえずちょっと外に行こう、…あっ、この子は僕の子供じゃないですから…!」

勘違いしている女子社員に違うと言っていると、なぜかわらわらと他の女子社員が来ていた。

「わ〜、ここまで1人で来たの〜?偉い!」

「え、観音坂さんのお子さんなんですか?!えっ、でも独身じゃ…」

「えっ?ち、違いますこの子は「観音坂なまえです、いつもパパがお世話になってます」えええっ?!」

何を突然言い出すんだなまえくん!!
焦って早く外に出そうと肩に触れたところで後ろから声がかかった。

「まさか…観音坂くん、隠し子かね?」

バッと振り向くとそこにはハゲ課長。

「か、隠し子?!?!ち、違います!僕に子供はっ!」

「パパ…?」

「こ、こらっパパはやめろよ…っ!」

こそ、と耳打ちするのになまえくんはケロッとしている。

「あ、あの、ち、違いますから!この子は僕の子じゃないですから…っ!」

「まぁまぁ、人生色々あるもんだよ。家族がいるっていい事だ。大事にしないとね」

子供がせっかく迎えに来てくれるんだ今日は残業しなくてもいいよ、なんて言われて俺はあれよあれよという間に定時で帰らせてもらえることになった。

早く帰れるのはいいことなんだけど……
待ってくれ、絶対勘違いされてる……


げっそりと疲れた気分になりながら、なまえくんと一緒に会社を出た。

横で歩いているなまえくんを見下ろす。

「…なまえくん…何でここに来たの?」

「…? 一二三が、今日独歩が傘もっていってないから迎えに行ってあげてー、って言うからさ。で、観音坂なまえですって名乗ればすぐに通してくれるって。」

「はぁぁっ…?!あいつ…っ!!」

「うひひ、面白かった。」

「…そういう悪ノリはするものじゃありません……」

なまえくんもリーマンだったのなら明日、社内で訂正して回る俺の気持ちをわかってるはずなのに…。
俺には今「隠し子発覚、シングルファーザー観音坂独歩」というレッテルが貼られているんだぞ?!

はぁぁ…と長いため息は肺から吐き出した。

クイクイ、と腕を引っ張られてなまえくんに目をやる。

「ぱぱぁ…。お腹空いたぁ…ステーキ食いたい。」

少し先にあるステーキのお店を指さしながら、俺を見上げるなまえくん…。

うっ、これが大の大人の25歳なら、却下と断れるんだけど…相手は子供…(中身リーマン25歳)

お腹空いたぁ、お腹空いたぁと言うなまえくんを見るとダメだ、家でご飯食べなさいと言いづらくて唸った。

体は子供でも中身はリーマン、一緒に暮らしている以上掃除や料理は自分が手伝うと言ってなまえくんは夜ご飯を作ってくれたりする。

もう用意されているんだろうし、ここで食べたら夜ご飯がもったいない。

「…今日の夜ご飯、用意してるだろう?それ食べなきゃ…」

「え?してない。だって独歩がステーキ食べさせてくれるって思って何も作ってないよ。」

「えっ……」

こ、この確信犯め……っ。

「ぱぱーー!ステーキ!!」

キャッキャとステーキ店の前で飛び跳ねるなまえくん…。

周りの視線が痛い。スーツ姿のお父さんとその腕を引っ張る子供。子供がねだっているのに連れて行ってやらないのかという無言の圧力…。

「…はぁ…食べてかえるか。」

「やったー!」

こういう時だけ子供全面に出してくるなまえくん。ため息を吐きかけたけど、笑顔でメニュー表を広げる姿を見てそれはやめた。

その代わり、くすりと笑って俺もメニューを見た。

「……?何か面白かった?」

首を傾げながら聞いてくるなまえくんに、いや、と首を振った。無邪気ななまえくんに笑いが漏れただけだ。

「ほら、どれにするんだ。言っとくけどなまえくんはお子様ステーキだからな。」

「え゛っっ!?」

今度は はは、と声に出して笑った。



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