グツグツと音をたてるシチューをすくって、お皿に入れる。
焼きたてのパンと一緒に食卓に並べて、椅子に座った。
「「いただきます」」
瀬名が俺を見つけて連れて帰ってくれたあの後、家に入ってすぐに瀬名にお風呂に閉じ込められた。
まずは綺麗にしないと、と体を洗われて瀬名はシャンプーもしてくれた。
自分でできると言っても、これは家出したバツだと言ってやらせてくれなかった。
瀬名からもらった自分のパジャマを着て、瀬名に髪を乾かしてもらった。
ドライヤーの音と一緒に暖かい風と瀬名の手が髪を撫でて気持ちよかった。
目を閉じていると、唇に柔らかい感触がした。目を開けたら瀬名が俺を見下ろしていて、キスしたんだと分かった。
照れ臭さからもういい、と瀬名の腕から逃げようと考えたけど俺を見る瀬名の顔が優しく微笑んでいて、俺は負けてそのまま瀬名の腕の中にいた。
その日は2人で一緒のベッドで寝た。
瀬名の腕の中に包まれて、瀬名の匂いを嗅いでいた。
ずっと目を開けていると「…眠れないのぉ?」と瀬名は聞いてきた。
「…起きて、夢だったら…、こわいから。」これが本当に本当に夢じゃなくて現実なのかとまだ信じられなくて寝付けなかった。
そしたら瀬名は俺をぎゅうっと抱きしめて、「起きてもずっと一緒だよ、むしろ俺を置いて出ていかないでねぇ」と言った。瀬名のその言葉に安心して、目を閉じた。
次の日起きたら、ちゃんと瀬名はいた。
目を開けると、瀬名が俺のことを見ていた。
俺は朝が弱いから瀬名はずっと起きていたのかもしれない。ありがとうという気持ちと申し訳なさで瀬名の胸に頭を押し付けた。
瀬名はくすりと笑って俺のおでこにキスをした。
「おはよう、なまえ」
「…おはよ」
俺と瀬名の2人の生活がスタートした日だった。
朝ご飯を終えて、仕事に行く瀬名を見送る。
「早く帰ってくるからねぇ」
「わかった…。いってらっしゃい」
「今日はどこか行くの?」
「…お弁当くれたおばあちゃんにお金返しに行く…」
「…わかった、気をつけてね。帰ってきたら居てよぉ?」
「うん」
「じゃ、いってくるねぇ」
バイクの鍵をチャリンと持った瀬名がいってくると言ったのに出ていこうとしない。
不思議に思って首をかしげた。
「…なまえ、名前は?」
「…??」
「前言ってくれたでしょぉ!」
少し拗ねるように瀬名は腰に手を当てた。
前言った、名前、…ああ、わかった。
「……いずみ、いってらっしゃい…。」
少し照れくさくて俯いたら、瀬名が俺の顔を覗き込んでそれから噛み付くようにキスをした。
「ん、ぅ…」
「行ってきます、いい子でね♪」
手を降って上機嫌で出ていく瀬名を俺は頬を赤くして見送った。
恥ずかしい。けど、嬉しい。
ふわふわして、甘くて、ちょっと甘酸っぱい変な感じ。
どぶのなかから拾ってくれた瀬名と俺とのこれからの生活。
明るくて暖かくて幸せな暮らしがこんな俺にできるとは思わなかったけど、それを瀬名が叶えてくれた。
今日はどんなご飯にしようか、瀬名の帰りがもう待ち遠しくなった。
END
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