凛月から送られたメールを見て、1人ニヤけた。
練習する瀬名。汗をかいてるのに何か色っぽい。
かっこいい。とおもいながらスマホを眺めていると後ろから声がかかった。
「なまえくん!お客さん来たからお願いねぇ!」
「…っ、はい…!」
あぶない。すぐにスマホを閉まってレジに立った。
サラリーマンの男性がお弁当を1つ買っていった。
「50円のお釣りです…、ありがとうございました。」
男性の次は女性、その次は学生、皆並んでる。
450円のお弁当を買いに毎朝来てくれる人達。
お金を受け取って、おばあちゃんのお弁当を手渡す。
そう、俺はおばあちゃんのお弁当屋さんで働き始めた。そして、調理も手伝っている。
仕事は朝早いけど、今までやったなかで1番働きやすくて楽しい。
おばあちゃんから料理も教えてもらえるし、勉強になっている。
「ありがとうございました…。」
ぺこりと頭を下げて、列の最後のお客さんにお釣りを返した。
「…何かおばあちゃん、君が来て元気になったね」
そう言ってにこりと笑った男性はありがとうとお弁当を手にして帰っていった。
その言葉の意味がわからず頭にハテナが浮かび、奥の調理場で料理するおばあちゃんを振り返った。
鼻歌を歌いながら野菜を切っている。
確かに初めて見た時よりは背筋がしゃんと伸びているような…いや、気のせいかな。でもとにかく元気そうだ。
「なまえくん、おいで。」
呼ばれておばあちゃんに駆け寄った。
「これねぇ、この塩梅で入れると美味しいのよ。わかった?私がいなくなってもこれでやるのよ?」
「…何言ってるんですか…。いなくならないで…。」
残りのお金を払いに来た時にぽつりと話した俺の過去を知ったおばあちゃんは、それならうちで働くかい、とここに入れてくれたのだ。
独りだった俺を見て救ってくれた人がいなくなるのは辛い。
「…ふふ、もちろんねぇ。長生きするわよぉ。なまえくんのためにねぇ!だからまだまだしゃんとしないとねぇ!」
曲がった背中が微妙に上がる。
あんまり真っ直ぐにはなってないけどおばあちゃんの心はしゃんとしたのかもしれない。
俺もしゃんとしようと真っ直ぐ立った。
「じゃ、今日は新しいメニュー考えようかねぇ!」
「はい…っ」
おばあちゃんの隣に立って手書きのレシピノートをのぞきこむ。
その中の一つを見て、これを今日の晩御飯で試してみようと思った。
「これ…今日作ってみようかな…」
「あらぁ、これはねぇ、夫が大好きだったのよぉ」
「…そうなんですか。」
「好きな人に食べて貰えるって嬉しいじゃない?だから私も毎日作ってたわぁ」
今は亡くなったご主人を思い出しているおばあちゃんを見て自分を重ねた。
好きな人に食べて貰えるって嬉しい…。
なんだか恥ずかしくて頬が熱くなった。
「まあっ!なまえくん真っ赤!食べてもらいたい人がいるとかかねぇ?」
二マリと笑っておばあちゃんが俺を見てきた。
「ち、違います…」
「ふふふ♪愛が1番の味付けよねぇ」
ああ、おばあちゃんには適わない。諦めて真っ赤なまま仕事についた。
瀬名の仕事が終わったら待ち合わせ場所で集合して、2人で買い物に行って、一緒に帰って一緒にご飯を作るんだ。
それで一緒にご飯食べて、お風呂入って、おやすみと言い合って、2人で寝る。
そんな日常生活が楽しみで、毎日張り切れる。
瀬名という生きる意味がある。
だから今日も1日頑張れるんだ。
「…今日もよろしくお願いします…。」
ぺこりと頭をさげておばあちゃんと試作を作り始めた。
← →
back