番外SS�C


夜、寝る前の暗い部屋の中でスマホを開いた。

暗闇の中で明かりを放つ画面に目を細めながら画面に指を走らせる。

「んん…、なまえ眩しいんだけどぉ…」

「…ごめん」

もぞもぞと動いて隣で眠る瀬名に背を向けた後、また画面を見つめた。

じっと画面を見つめていると後ろからにょっ、と手が伸びてきてスマホの画面が暗くなった。

「眠れなくなるでしょぉ…。」

「ん…。」

ほら、目閉じてという瀬名の声に仕方なくスマホから手を話して目を閉じた。

体に伝わる瀬名の体温が温かくてすぐに眠気が襲ってきた俺は数分で眠りに落ちた。


***


「おはよ、昨日何見てたのぉ?」

コポコポとお湯が沸騰する音とコーヒーの匂いに朝を感じる。

「おはよ…。ネット通販のサイト見てた…」

「何か買うの?」

「ううん…別にほしいものはないけど、見てるのが楽しい…」

「ふふっ、それ分かるかも。俺も服見てる時は楽しいし」

くすりと笑う瀬名を見て椅子に座った。机の上にはすでに朝ご飯が並んでいる。

「いただきます…」

「はい、どうぞぉ。」

瀬名の作るご飯は美味しくてぺろりと食べたら、瀬名は美味しかった?と聞いてきた。 美味しかった、と答えると少し得意そうに瀬名は笑った。


仕事に行く瀬名を見送ってから俺は寝っ転がりながら昨日の続きでスマホをのぞき込んだ。

特に欲しいものは無いというのは本当だったけど、貧乏だった俺はネットでものを買ったことがないから何か買ってみたい気持ちが少しあった。

でも実物を見たことないし迷う。

じっと眺めていると気になるものがあって買うことにした。

トン、トン、と画面を軽く叩いていって買い物カゴの中に入れる。

住所を入れて…。

名前を……。

名前……。

俺の名前で届くんだろうか、と不安になった。
だってここは瀬名の住所だ。

みょうじ、なまえ、で届くのか分からない俺はない頭で考えて名前の入力画面に文字を打った。




それから数日後、頼んだ商品が届く日がやってきた。

一人でいる時にちょうど、チャイムがなった。
少しドキドキしながら玄関の扉を少し開けた。

「あ、○○急便です〜」

「…はい…」

「えーっと、瀬名なまえさんでよろしいですか〜?」

「っ…」

そうだった、俺はどうやったら届くかって考えて瀬名の名前を使えば届くかなって思って瀬名の苗字を使ったんだった。

いきなり名前を読み上げられてきょとんとした俺は、だんだんじわじわと恥ずかしくなって俯いた。

瀬名…、なまえって…同じ苗字って…。

「あの、あってますか?」

「…っはい…」

「じゃあサインお願いしまーす」

そそくさと書くと宅配の人はぺり、と紙を剥がしたあとありがとうございましたと言って去っていった。

手の中にある箱を見ると瀬名なまえ様、と書かれている

同じ苗字って…まるで結婚したみたいだ…なんて思ってやっぱり恥ずかしくなった。

瀬名の名前を勝手に使ったことと、こんな名前で頼んだことがバレたら瀬名に何を思われるか分からない。

ドキドキしながらすぐに部屋の中に入って中身を取り出したあと、箱を燃えるゴミ袋の中に入れた。

瀬名なまえ…。

しばらくそんな言葉が頭の中をぐるぐるしていた。



「ただいまぁ」

「…おかえり」

帰ってきた瀬名を見たあと、すぐに逸らしてテレビに視線を戻した。宅配便のことを思い出してしまったからだ。


「今日はさぁ、他ユニットとの仕事で皆自由すぎてほんとまとめるの大変なんだよねぇ…ってなまえ〜。ゴミ、ダンボールは分けるって前も言ったよねぇ?ダンボールはこの袋じゃなくてぇ…」

ガサゴソとダストボックスから音が聞こえて、あっ、とダンボールで思い出した俺はすぐに立ち上がった。

俺が捨てたダンボールにはあの名前が書かれている。見られたらいけないと思って焦って向かったけど遅かった。

瀬名の右手にダンボール箱が掴まれていた。

「これは資材ゴミの日に……、これ今日届いたやつ?」

瀬名が宛先のラベルをじっと見ていて、俺はとっさに瀬名のダンボールを掴んだ。

ぐいっ、と引っ張ったのに瀬名は離してくれなくて俺と瀬名で取り合う形になった。

「…っ俺が捨てるから…離して…。」

くん、と引っ張ったのに瀬名はまだラベルを凝視している。

「……瀬名…なまえ……?」

瀬名の声がラベルに載っている宛先を呼んだ。見られたくなかったのに、バレた俺はどうしようと思うよりも恥ずかしさで頬が熱くなった。

「…離して…」

「この名前で注文したんだ?」

瀬名の顔が見れない。怒ってるのか、それとも呆れてるかどっちにしても瀬名の顔を見ることが出来なくて俯くしかない。

「…勝手に名前使って…ごめんなさい…。瀬名の名前じゃないと届かないかと…思って…」

「…瀬名なまえさんですかって聞かれたのぉ?」

「……うん…」

「なまえはなんて答えたの」

「……はい、って……答えた…」

瀬名の質問に自分で答えて恥ずかしくなった。掴んでい
たダンボールを奪い取る気力もなくなってきて瀬名は呆れてるだろうかとちらりと見上げた。

ため息を吐きそうな瀬名の顔を想像していたのに、なぜか瀬名は笑っていた。それも口元が緩んで必死に笑いそうなのを堪えてる感じだった。

「…まるで結婚したみたいだよねぇ」

瀬名の言葉に俺の頬はさらに熱くなった。

「…あー、ほんと…」

今度は瀬名は歯を見せて笑った。

「…怒らないの」

「へぇ、怒ってほしいのぉ?瀬名なまえさん」

「……っ…」

ニヤリと笑う瀬名に俺は全身がかああっと熱くなった。

「瀬名のいじわる。」

「意地悪で結構。俺は元からこういう性格だからねぇ〜」

このダンボールは没収、と言われて俺の手からダンボールは取られた。

もう、バレたし知るもんかと開き直った俺はダンボールを手放してソファに戻ることにした。

「で、何頼んだのぉ」

「…瀬名には教えない。」

むすり、とした俺とは反対に瀬名はずっとニヤニヤ笑っていた。

俺はしばらくは宅配を頼むのはやめようと心の中で決めた。


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