〜はじめての猫カフェ〜

瀬名の部屋は雑誌がいっぱいある。

瀬名の載っている雑誌は全部綺麗に揃えられていてソファに座ってみていた時、目を引かれたものがあってじっと見ていると瀬名が横からちらりとのぞき込んだ。

「猫カフェ?」

俺の手にしている雑誌には瀬名たちKnightsと猫カフェのコラボ特集だった。

猫たちと遊んでいるところや抱っこしているところが載っていた。

「…ここって…猫…いっぱいいるの…」

俺は猫カフェというところは行ったことない。カフェなら行ったことある。いつものパンケーキ店とか。

でも猫カフェは行ったことない。雑誌に目を落としながらぽそりと瀬名に聞いてみた。


「まぁ猫カフェだし。お客さんが猫たちを見て癒されながらお茶できるっていうのがコンセプトだからねぇ」

「触れるの…」

「お店にも寄るらしいけど…。行きたいのぉ?」

「………別に。」

8枚にわたる雑誌特集をぺらりと見る。猫がのびをしたり、手を舐めている仕草だったりそんな写真も載っていた。

「…行きたいんでしょぉ。」

この間のお店、いつでも来てくれていいって行ってたし連絡しとけば優遇してくれるって言ってたから、と瀬名は携帯を出し始めた。

「次の休みに行く?」

「……うん…」

こくりと頷いてしまった。

行ってみたかった。どんなところか。どんな感じなのか。
瀬名の誘いに頷いてしまい、今更よかったのかと気になったけど瀬名はすぐに連絡を入れてくれた。


***


内心楽しみにしていた猫カフェに行く日。
朝早くから目が覚めて出発の時間まで待ち遠しかった。

瀬名に起きるの早いって言われたけど猫カフェに行けるのが嬉しかった。


瀬名が連れてきてくれたのは女性が好みそうなお店で男2人で入っても大丈夫なところなんだろうかと少し不安になる。

「あっ、瀬名さんいらっしゃいませ。どうぞゆっくりしていってくださいね」

出迎えてくれたのは柔らかな雰囲気を纏った女性でその後ろを1匹の猫がついていくように歩いている。

入った店内は猫がたくさんいて、椅子に座って丸まっている猫や、他の猫とじゃれている猫、高い位置から店内を見下ろしながらしっぽをゆらゆら揺らしている猫、想像よりたくさんいて俺はどこに目をやっていいか分からなかった。

「なまえ、中入るよぉ」

瀬名に呼ばれてはっとして中に入る。

他のお客さんも食事をしながら傍に近寄ってきた猫を撮ったり、眺めたりしていた。

低いウッドチェアに座る。メニューからドリンクとフードを頼んだ。待っている間に様子見をしていた猫たちがのそりとやってきた。

「……っ」

うわ…、猫が寄ってくる…。

白、黒、茶色、斑…色も種類も違う猫たちが寄ってきて雑誌で見たような猫に囲まれた状態になるのかと思うとムズムズした。

俺の膝の上で丸まってくれたりするんだろうか…と考えてしまいそうなったら可愛くて写真に撮りたい…。

猫たちが俺の傍に寄ってくるのをじっと待つ。

「…………。」

「…なまえ…。」

じっと待ったのに、なぜか猫たちは皆瀬名の方に集まって行った。

ゴロゴロ喉を鳴らす猫に瀬名はこしょこしょと喉を触ってあげていた。気持ちよさそうに猫は瀬名に擦り寄っている。


「……。」


俺の周りには猫1匹いない。想像していたのと違って心が悲しくなった。一匹くらい、傍に来てくれてもいいのに……。

「あぁ…なまえの耳が垂れてる」

瀬名がカシャリと音を立てて写真を撮った。瀬名は俺に携帯を向けていた。

「……猫撮ってよ…」

「はいはい。ほら、皆なまえの横にも行ってあげようねぇ」

瀬名が猫に呼びかけても皆瀬名の周りでまったりし始めている。俺のところになんか来る気ないんだ…。

俺は猫に嫌われる体質だったのかな…なんて少しショックを受けていると注文していた料理が運ばれてきた。

仕方ない。瀬名の近くにいる猫を撮ってあとは眺めるだけにしよう…。料理も猫の形をしていて可愛い。かしゃりと撮ったあと温かい料理を口に運んだ。

瀬名を見ると相変わらずにゃあにゃあと擦り寄られている。瀬名はマタタビか何かだろうか。

あまりに瀬名が猫から人気者すぎて面白くない。口数の減った俺はパクパクと食べる。

「なまえ、何拗ねてるのぉ」

「…拗ねてない」

「あ、ほらなまえの横にも来てるじゃん」

言われて見ると灰色の毛並みにブスっとしたような顔の猫が俺に近寄ってきていた。

何か瀬名の周りにいる可愛かったり綺麗な猫たちと違う…。

ふん、と言いそうな顔で寄ってきた猫に俺はそれでも俺に近寄ってきてくれた唯一の一匹だから、とうずうずして待った。ゆっくり歩いてきて俺の隣で俺をじろりと見上げてきた。

触らせてくれたりするのかな…とそっと手を動かした。

パシッ

猫のしっぽに手を叩かれた。触るな、という意味か。

「………。」

やっぱり俺は嫌われるのか…。諦めて俺は食べる方に集中することにした。

「ほら、なまえこの猫可愛いよぉ」

瀬名がまだ子猫を脱したばかりくらいの小さな猫の頭を撫でながら見せてきた。

「……かわいい…」

かわいいから、俺も触ってみたい…。と思ったけど我慢して眺めるだけにした。

別に塩味の食べ物じゃないのにしょっぱく感じるのは何でだろうとブルーな気持ちになっていると俺の手を叩いた愛想の悪い猫が俺の足を前足でふにふにと押してきた。

「……っ!」

えっ…なに…。遊ぼうってこと…?
こいつ…ブスっとしてるくせに可愛いところあるじゃないか…と俺が手を動かすとまたしっぽで手を叩いてきた。

なんだ。やっぱ嫌なんだ。


「ふふっ、その猫なまえみたい。ブスっとしてるところとか似てるよねぇ」

瀬名が面白そうに俺とこの猫を撮り始めた。

「…俺、こんなに愛想悪くない…」

恨めしそうに瀬名を見ると瀬名は膝の上に綺麗なロシアンブルーの猫を乗せていた。

いいなあ…俺もあんな感じに猫と触れ合えたら…。
横を見るとブスっとした猫一匹。

瀬名が羨ましいと思っていると瀬名が俺に似ていると言った猫がのそり体を起こして俺の太ももに足をかけた。

何をするんだろうと思うと俺の太ももに体重をかけてのしりと上がった。

「…っ!!!」

瀬名!瀬名!見て!

目で瀬名を見ると瀬名が肩を震わせてくすくすと笑っていた。

「っっ!」

膝の上に猫が乗っている。丸まって。

雑誌で見たみたいに。奇跡だ。

うわああ…膝上が温かい。すごい…本当に乗ってる…。

「よかったねぇ」

こくこくと頷いて丸まった猫を見下ろす。

柔らかそうな…背中。撫でても良いかな…。
手をそっと動かした。今度はパシッとしっぽで叩かれることはなかった。ゆっくり、そろりと背中を撫でる。

「〜〜っ!」

手に伝わる柔らかい毛並みの感触、温かさ、すごく癒された。

「……かわいい…」

あれだけ俺のことしっぽで叩いたりしてきたのに、触らせてくれるなんて…。

可愛くてスマホでちゃんと膝上にいる状態を撮った。パンケーキと同じくらいお気に入りの写真になった。

「……瀬名…ありがとう」

連れてきてくれて。

「どういたしまして。俺もいい写真撮れたしねぇ♪」

ふふんと笑う瀬名は満足そうだ。

はじめての猫カフェ。俺も美味しいご飯に可愛い猫たちと触れ合えて嬉しかった。

緩んだ口元を瀬名にバレないようにそっと隠すと膝上に乗っている猫がにゃあと鳴いた。


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