パロディ ※もしも瀬名がシェフだったら

高級店シェフ瀬名×ホームレス男主





お腹が空いていた。

歩く力がなくて、いつもの手段を使おうと街中の大きな通りから外れた路地裏を歩いていた。

ボロボロの服を身にまとった俺に見向きするやつは誰もいない。

そこを歩いていても、皆見なかったフリだ。

目的の場所まで絶え絶えになりながら、ずるずると歩く。

入り込んだのは大きな店の裏。

高級レストランと有名な白が基調の建物に、裏の排気口からは美味しそうな匂いが常に出てきている。

影に身を潜ませて俺は、その時を待った。

暫くして店の裏口から人が1人出てきて大きな袋をすぐ近くにポイ、と置いて中に入っていった。

来た…!あれだ!


すぐに駆け寄って大きな袋の口を開けた。

中に入っているものは生ゴミや、残った食べ物、その中から綺麗なものだけを取っていつも食べている。

こんな食べられるものを平気で捨てるなんて罰当たりな奴らだと思いながら今日は何があるかとゴミ袋の中に頭を突っ込んだ。

「…何してんのぉ?」

ゴミ袋の外から声が聞こえてきてハッとした。

ガサガサ、と音を立てながらゴミ袋から顔を出して見上げた。

「………っ」

そこには真っ白なコックの服を来た男がいた。厨房から暗闇に漏れる光が逆行で顔がよく見えない。

やばい、バレた。

逃げないと。

急いで立ち上がって逃げようとしたのに、腕を掴まれていた。

「っ、は、なせ…っ」

腹が減って弱っているせいか小さな声しか出なかった。

「…何でうちのゴミなんか漁ってるわけぇ?」

どれだけもがいてもそいつの手は離れなかった。

馬鹿だな。何で、なんて分かってるだろ。俺の格好を見ればわかるだろ。ろくに食べるものもないホームレスだって。

「…っはなせ…っ」

警察の世話になんてなりたくない。ぶんぶんと腕を振る。

「…お腹空いてんの?だから漁ってたわけ?」

「…っ」

唇を噛み締めて無視をした。住処も何もない俺だけど、ないに等しいプライドが反応した。

「…少し待ってなよ。持ってきてあげるから。」

は…?

俺の手を話してそいつは厨房の中に入っていった。すぐにまた裏口が開いて小さな紙袋を手に戻ってきた。

「ほら、食べなよ。余ったベーグルとエッグサンド」

「………。」

無言で男を見上げた。その男は青い目をしていた。髪はグレー、いや銀?そんな色味だった。

「…払う金なんてない…。」

ぼそりと水さえも飲んでいない喉から枯れた声がでた。

「別に金なんていらないし。いらないなら別にいいけどぉ?」

そう言って紙袋を引っ込めようとしていた。咄嗟に手が伸びて紙袋を掴んでいた。

「……いる。」

「…ならどうぞ。」

受け取って、すぐにその場でエッグサンドに齧り付いた。勢い余ってむせた。

無言でバクバクと食べているとまたその男が中に入って戻ってきてペットボトルの水をくれた。

水をごくごくと飲んだ。
体に染み渡ってくるみたいだった。

エッグサンドの卵が口につこうと気にしなかった。

とにかく噛んで、飲み込む。
エネルギーを体の底から欲しがっていた。

そんな俺を見てそいつは言った。

「…行くところがないならここで働く?」

「…………。」

俺は咀嚼を辞めて膨れた頬でそいつを見上げた。

これが俺が瀬名泉という男に雇われた時の話だ。



****


厨房で俺は同じように白い服を来て立っていた。

瀬名泉というシェフに拾われ俺は働いていた。

仕事は食器を洗うこと。ゴミを捨てること。

余った料理が全部俺のところにきて、それを俺が捨てて、食器を洗う。


そんな仕事をしていると、手をつけられていないような食べ物もやってくるわけだ。勿体ない。

食べられるものを食べないなんて勿体ない。

だから、俺は手付かずのエビフライを手に持った。

それから口の中に放り入れた。

サクサクの衣がプリプリのエビを包んでいて美味しい。

もぐもぐとしていると、肩に強い痛みが走った。

「こらぁぁ…!!」

振り向くと瀬名泉がいた。

俺の肩を掴んで鬼のような形相をしている。

「………。」

振り向く前にエビフライは全部飲み込んだから大丈夫だ。

何だというように瀬名泉を見上げた。

この人は実はここで1番偉いシェフというものらしい。皆、さん付けかシェフと呼んでいる。

瀬名泉は腕組みをして片眉を上げた。

「今の、ちゃんと見てたからぁ。食べたでしょぉ、エビフライ!」

「…食べてない。」

「口に衣がついてんだけどぉ!何回言ったらわかるわけぇ?食べ残しを食べない!」

「……勿体ない…」

「はぁ…、ここじゃ食べ残しは捨てるものなのぉ。わかる?なまえが食べてた頃とは違うの。食べ残しを食べるのが普通、じゃないのぉ。わかる?」

「…………。」

俺がムスッとしていたのがバレたのか瀬名泉はこめかみをピクピクさせていた。

「それに、賄いを出してるでしょぉ?俺が作ったやつを!」

「うん、美味しい。」

瀬名泉の作る賄いは美味しい。ここで働いてる皆は裕福だから別に賄いを必要とする人はいないけど、俺は貧乏人だからいつも瀬名泉が食べさせてくれる。

美味しいから、それを伝えると瀬名泉のこめかみは落ち着いた。

「…ふぅ、まあそれは当たり前でしょぉ。そりゃしっかり食べて骨と皮のその体を健康にしろとは言ったけど!食べ残しを食べろって言ってるわけじゃないの!」

「………勿体ない。」

「あぁ!!勿体ないけど仕方ないの!とにかく食べない!食べたかったら仕事終わって俺のところに来ればいいから!そしたら作ってあげるからぁ!」

「……ハンバーグが食べたい。」

「あぁ!わかったわかった!じゃあもう食べないこと!わかったぁ?!」

「……うん。」

こくりと頷けば瀬名泉はもう一度念押しして、コックに呼ばれたから戻っていった。

瀬名泉がハンバーグを作ってくれるらしい。

だから俺はそのあとは美味しそうな食べ物が色々俺のところに来ても我慢した。

終わったあとに瀬名泉のところに行ったら、ちゃんと出来たてのハンバーグが出てきた。

頬張りながら食べていると、瀬名泉が頭を撫でてきた。


俺はハンバーグが食べれて幸せだ。



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