外で待ってるなら、中に入ってればいいじゃん。

なんて凛月の1言で連れてこられた部屋に俺はぽつんと座っていた。


たまたま外出してて、たまたま瀬名の近くに来たから、たまには2人で外食もしたいなと思って瀬名に連絡したら合流しようという話になって瀬名たちKnightsがいる建物に来ていた。

大きく綺麗な見上げるほどの建物の下で瀬名を待とうと時間潰しにスマホを眺めていると凛月に声をかけられたのが事の発端だった。

「あ、なまえ〜おい〜っす。何してんの?」

「…凛月…。」

「出待ち〜?」

ニタリと笑ってきた凛月にコクリと頷いた。

「…はぁ、今俺がからかったのわかってる〜?」

「……?」

「まあいいや、外で待ってるなら中入ればいいじゃん」

「でも…」

「あ〜大丈夫。ここス〜ちゃんちのものだから」

大丈夫大丈夫とぐいと引っ張られて俺は建物の外から中に連れて行かれた。

ここで待ってるといいよ、と言う凛月に連れてこられたのは休憩室のような部屋で、なぜか布団が1組敷かれているという不思議な空間だった。

何をするわけでもなく、瀬名か凛月が来るのを待つしかないとじっと黙って座っている。

今日は何食べようかな…なんて考えていると、部屋のドアが開いたため瀬名か凛月かと思い顔をあげた。

「うわぁっ!!びっくりした!!」

「……、」

入ってきたのは瀬名でも凛月でもなく、明るい髪色にメガネをかけた、テレビでも雑誌でも見た事のある人だった。

黙って座っている俺を見てびっくりしたのか仰け反っている。

「あ、あの、ここにはどうやって…」

どうして俺がここにいるのか不思議な顔をしているTricksterの遊木真。そんな顔でさえも整っていて見てしまう。

俺より背も高いし、スタイルのいいその姿に俺は目を逸らせなかった。

黙ってばかりの俺に焦ったようにしている。
部外者がここにいると不審に思われるかもしれないから、ここにいる理由を話した。

「瀬名…さん…を待ってて…。」

「泉さんを…?」

泉、さん…。

その呼び方を聞いて 凛月から写真を見せてもらい、いつの日か聞いていた通り親しい仲なのかと思った。

こくりと頷いて肯定の意思を示す。

「泉さんなら多分、もう少しでここに戻ってくると思うけど…」



「ゆーうくん!先にいくなんて…あれ、なまえ?」

瀬名のいつもより高い声が聞こえて、ドアの方を見ると瀬名がちょうど部屋に入ってきていた。

「あっ、泉さん、人を待たせてるの?!」

「待たせる予定じゃなかったんだけどねぇ。撮影長引いたから。大体今日は俺とゆうくんとなるくんだけの撮影のはずだったのに…」

ぶつぶつという瀬名とそれにあははと苦笑いしている遊木真。

さっきから見ていると仲が良さそうで瀬名にいたってはいつもよりテンション高い気がするし、まず遊木真との距離が近い…。

それに…、泉さんなんて…俺なんていずみの名前を呼んだのは数回しかないのに…。

なんてそんなところに目をつけては、少しムッとする自分が何を思っているのかは簡単に分かった。

「なまえ、どうやってここに来たのぉ?」

「…外で瀬名を待ってたら…凛月に連れてこられた。」

「くまくんか…あいつ何も言ってなかった!」

「だってさぁ、結局こうなるじゃん?」

ふぁぁふ、とあくびをしながら部屋に入ってきたののは凛月だった。

「早く言ってよねぇ!」

「ううーんっ、疲れたぁ。」

「凛月くん、そのまま寝たら衣装崩れるよ?!」

遊木真が驚いたふうに凛月に言う。

なんだこれ…俺だけ疎外感を感じていたたまれなくなる。

確かにずっとずっと前からの付き合いとはいえ、ここまで仲が良いなんて知らなくて内心戸惑っていた。

昔から知ってるってこんなにも仲が良いんだろうか…。これって普通なんだろうか…。

なんて、昔からの知り合いなんて誰もいない俺には分かるはずがない。

「なまえ…?どうしたのぉ?」

「……いずみ、帰ろう…。」

ああ、呼び慣れない言葉。

遊木真の「泉さん」に比べて俺の「いずみ」はどこか浮いたようで固くて無機質。


いきなり名前で呼んだ俺に驚いたのか瀬名は少し目を見開いてこっちを見ていた。

俺は何をそんなに焦っているんだろう。

瀬名の袖を少し握って、帰ろうと促す俺は自分から見てもひどく滑稽だった。



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