「それで?これはなぁに?」
整った顔を綺麗に動かして笑いながら俺のスマホを片手に見てくる瀬名。
「……パンケーキ…。」
スマホの中に写っているのは今日食べたパンケーキ。我ながら美味しそうに撮れていると思う。
「で?これはいつ食べたの?」
笑顔のまま表情を崩さない瀬名が逆に怖い。
「……この間。」
「はい、嘘ぉ。撮影日が今日の日付だけどぉ?」
にこにこと笑う瀬名は言葉で言ってないのに俺を責めているのがすごく伝わってくる。
これは俺が今日食べたパンケーキをスマホで眺めていたところを瀬名に見られたことから始まった。
「?それどこのパンケーキ?」
「いつものところ…。」
「へぇ、俺それ初めて見るかも。いつ食べたのぉ?」
「きょ、あ、………この間。」
「……ちょっと見せて」
「…この間、食べた。」
「いいから見せて。」
そんなやり取りの上、瀬名にスマホを没収され写真の撮影日を見られてしまい、今日食べたというのがバレた。
瀬名の言いたいことはわかった。
多分、1日大人しくしてろって言ったのに何で出てるのかってことだと思う。
でも俺はパンケーキのおかげで元気になれたと感じているし、よかったと思うけど…瀬名に言える感じじゃないから黙った。
「はぁ…目が離せない…決めた。」
ため息を吐いてから何か決心したように瀬名は俺を見た。
「……?」
「ほら、もう薬飲んで寝るよ。」
俺の身の回りの世話を焼いてくれる瀬名は本当にお母さんみたいだ。
薬を飲んでベッドに入った。
明日は少しでも楽になってるといいなって思いながら。
***
朝起きたら、瀬名に出かける準備をしてと言われた。
どこに行くんだろうかとはてなを浮かべながら言われるままに準備して、俺はあれよあれよという間に連れ出された。
「ここに託児保育ってあったっけぇ?」
凛月が首を傾けて瀬名に言った。
風邪を引いた子供を連れてくる親さながら、俺は瀬名たちのスタジオに連れて来られていた。
「目離してたら治るもんも治らないから連れてきたの。」
肩を竦めながら俺を見る瀬名に昨日のパンケーキの事を指しているのか肩身が狭かった。
「じゃあ俺、保育士役でなまえと一緒にお昼寝してあげよ〜。はい、なまえ、寝るよぉ〜おいで〜」
凛月がスタジオにある布団をずるずると引っ張ってきた。
「くまくん?布団捨ててこようかぁ?」
「り、凛月先輩!瀬名先輩の逆鱗に…!」
「あら、見て。もう王さまと布団の中に入っちゃってるわよぉ?」
「ちょっ!はぁ?!何してんの?!」
憤慨している瀬名をよそに、俺はぐいっと白い布団の中に連れ込まれて、異様にもふもふするその布団の中で王さまと呼ばれている月永レオと入っていた。
「わははっ!!この狭さがいいな!んー!インスピレーションが!」
耳元で騒ぐ月永レオに俺はどうしたらいいのか固まっていると今度は月永レオとは反対側に凛月が入ってきた。
「さあてお昼寝の時間だからね〜今から8時間は寝ようねえ〜」
「それお昼寝じゃないからぁ!」
瀬名のツッコミとか、皆の自由さが何だか可笑しくて俺は少しむずむずした。
マスクしているから分からないけどちょっと口元が緩んでしまった。
何かこうやってわいわいするのって今までなかったから、ちょっと楽しいかもしれない。
だんまりの俺を心配して瀬名は布団から引きずり出してくれた。
「ほらぁ、なまえ大丈夫?」
「…うん」
「ごめんねぇ、心配だから連れてきたけど疲れさせたかも。」
「ぜんぜん…大丈夫。」
「ん、じゃあ今日は早く終わる予定だから大人しく待ってること。」
ビシッと瀬名に念を押されて、コクリと頷いた。
Knightsのメンバーもいつの間にか立ち上がっていて、すぐにダンスや歌を始めた。
俺は隅っこのソファでみんなを見る。瀬名ばかりに目が行くけど。
やるときはちゃんとやる、空気が一気に変わって瀬名たちはすごいな、って思った。
時間はあっという間にすぎて休憩に入ったのか皆散り散りに出ていったり休んでいた。
瀬名も外に出て行った時に、凛月が俺のところへやってきた。
「暇じゃない?」
「ううん。見てて楽しい。」
「そぉ?」
「うん。」
ポスリ、と凛月は俺の隣へ座った。そんな凛月をじっと見て、凛月なら最近生まれた俺の小さな悩み、というか疑問を解決してくれるかもしれないとふと思った。
「なにぃ?何かついてる?」
「ううん。」
「じゃあ何か話したいこととか?」
「………。」
改めて凛月を見た。俺の聞こうとしていることは凛月にとって理解不能かもしれない。だって凛月も瀬名と同じように人気で、友達がいて…そんな凛月に俺の悩みは理解してもらえないかもしれない。
…やっぱり俺の小さな悩みを凛月に言うのはやめとこう。
何でもない、そう言おうとして口を開いたのに凛月は俺より先に喋った。
「話して。優しいりっちゃんが聞いてあげる。」
「………りっちゃん。」
「ふふ♪で、何?悩み?俺は人の悩み聞いたりしないけどなまえだから特別に聞いてあげるよぉ」
くすりと笑ってソファに寄りかかった凛月に俺は静かにぽつりと漏らした。
「……友達って…、仲良いってなんだろう、って…」
凛月は俺の言葉を聞いたあと、じっと俺を見てそれからにやりと笑った。
「そりゃこういうことでしょ〜」
ぐいと肩を引かれて、凛月は俺の肩に腕を回してきた。凛月が肩を組んできているため顔が近い。少し甘い匂いがした。これが凛月の匂いなのかな、って思った。
「これ嫌?」
「…嫌、じゃない。」
別に拒否したいとか嫌だとは思わない。
「こうやっても嫌じゃないなら仲良い証拠じゃない?」
「………」
「だから、俺となまえはもう仲良い友達ってことぉ」
「…わかった。」
そうか、友達ってこんな至近距離でも嫌にならないんだ。確かに見知らぬ人にいきなり肩組まれたら、何なんだって拒否するけど凛月は別に何とも思わない。
休憩は終わったらしく凛月はまた離れていった。
仲が良いって距離が近いんだ…。
そう言われると、この間の瀬名と遊木真の距離も頷けた。
やっぱり仲良いんだ…。
またもやもやと変なことを考えそうになったからすぐに踊る皆を見た。
俺も…俺も…あんな友達がいれば…あれが普通なんだって分かるかも…
そしたら、瀬名と遊木真、ゆうくんを見てもやもやしないだろうって思うんだ。
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