本当は、すぐに瀬名の裾を引っ張りたかった。
もう帰ろうよって言いたかった。
でも瀬名は楽しそうに話しているし、そんな瀬名を邪魔するのは気が引けた。
笑い合う2人を見ていたくなくて俺はふらりと動いた。 瀬名の用事が終わるまで外で待っておこうと思って黙ってお店の外に出る。
外に出ただけで沈んでいた気分がほんの少しだけ軽くなった気がする。
さっきの瀬名とゆうくんを見ていると長くなりそうだと思い、俺も少しだけ他のところを見ようと歩き始めた。
通りをとぼとぼと歩いているとギターの音と歌声が聞こえてきて何の目的もない俺は自然と足がそっちに向かっていた。
音を辿ると時計台がある広場で弾き語りをしている人がいた。その人の周りには数人歌を聞くために集まっていた。
俺は離れたところから突っ立ってその人を見た。
普通に上手いし、いい声だと思ってぼーっと歌を聞く。
とにかく何も考えないことにした。
ただただ無心で広場にいる人を眺めた。
歌っている人、歌を聞いている人、ベビーカーを押すお母さん、子供と手をつなぐ家族連れ、夫婦っぽい人たち、カップル、若いグループ。
…瀬名と二人で来てたはずなのに。瀬名は俺の隣にはいない。
突っ立ったまま空を見上げた。
視界一面には水色の空と白い雲がはいってくるのに、どうしても2人の話していたところが浮かんできて空を睨んだ。
今日は俺と二人で来たのに…。
瀬名はパンケーキ食べる時に少し不機嫌になってたし、やっぱり同じ仕事してて、話が分かり合える人のほうが楽しいのかなって思った。
ゆうくんの方がずっと長い付き合いだし、いっぱい話せるし、顔もスタイルも何もかも整ってるし、俺よりもゆうくんと過ごす方が楽しいかもしれない。
やっぱり俺って瀬名にとって面倒見ざるを得ないおじゃま虫…なんだろうか…
だって、人の気持ちは永遠じゃないってこの間、瀬名の帰りを待つ時に見たテレビドラマで言ってた。
瀬名の気持ちが変わったら俺っていらないのかもしれない。
ああ、何でこんな変な事考えるんだろう。どんどん気分が重たくなって見上げていたはずの空は地面に変わっていて、頭は垂れていた。
弾き語りの歌詞が何だか悲しく寂しい曲でそのせいだと思いながらもう帰って布団に潜り込みたくなる。
「なまえ…!!」
瀬名の声が聞こえたと思ったら肩を引かれていた。
「……瀬名。」
少し焦ったような瀬名の顔に俺も少し驚いた。
「…どしたの。」
何でここにいるの?服は?ゆうくんは?
そう聞きたくても聞けない。
「どうしたのって…、気づいたら店にも外にもいないから焦るに決まってるでしょぉ?!」
「…楽しそうだったから…」
「もう…どっか行くなら行くって言ってよねぇ…。服どころじゃないし…」
はぁと大きく息を吐いた瀬名に、俺がゆうくんとの時間を邪魔しちゃったのかと思い、ごめんと呟いた。
「ふらりとどっか行っちゃうから…居なくならないか心配になるの。」
ほら、帰ろうか。
そう言って歩き出した瀬名についていく。
少し…安心した。
瀬名が焦って俺を探してくれたんだと思うと心の中がほっとしたんだ。
瀬名がゆうくんとずっと話して、俺のことなんか忘れてこのまま来なくて、俺はずっと突っ立ったまま弾き語りの人を眺めていたらきっと寂しくて悲しいだろうなって思ったんだ。
瀬名が俺を探してくれて、迎えにきてくれてよかった…。
俺が瀬名のことを好きなように瀬名も俺のことを好きでいてくれてるからだって自分に言い聞かせた。
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