瀬名side

お疲れ様でした〜というスタジオに広がる声にやっと仕事が終わったと肩が軽くなった気がした。

最近仕事を詰めまくってるせいでろくに家に帰れず辟易してるのは何もなまえだけではなかった。

「泉ちゃーん、お疲れ様ぁっ♪」

背の高いしっかりした体をくねりとさせて跳ねるなるくんをちらりと見て元気だなぁと思った。

「お疲れぇ〜」

「今日も早朝からで長かったわねぇ。でもやっとこれも終わったししばらくはアイドルの方に専念できそうね」

「どうせすぐ仕事くるんじゃない〜?ていうか俺早く帰りたいからもう上がるねぇ」

今日は久しぶりになまえが起きてる時間帯に帰れそうだし、いつも寝顔しか見れてないからすぐにでも家に帰りたかった。

「あら、つれないわねー。ねぇグループトーク見た?1時間くらい前に凛月ちゃんが写真載せてたのよ」

「まだ見てないけどぉ?」

「なまえちゃんが載ってたわよ?」

「…は?」

すぐにカバンからスマホを取り出して立ち上げた。

――――――――――

《拾った猫が毛並み悪すぎて栄養摂取なう》
凛月が写真を送信しました。

《肉!!!》

《デザートもたんまりぃ〜》
凛月が写真を送信しました。

《リッツ俺も肉!》
レオがスタンプを送信しました。

《場所はここねぇ〜》

《スオつれてく》

《ス〜ちゃんも?おけー》凛月がスタンプを送信しました。


凛月が写真を送信しました。

――――――――――

どこかの焼肉屋なのか、肉を食べてるなまえが写真に写っていた。

それから王さまとかさくんも一緒の写真まで…


「…なにこれ?!」

「何だか楽しそうよねぇ〜っ!アタシたちも行っちゃう?♪」

「…あったりまえでしょぉ!」

「え、ちょっと、泉ちゃんもう行くの?待ってよぉアタシまだ」「早く!置いてくよ?!」

家に帰るどころじゃない。
家に帰ってもなまえはいないんだから。

くまくんが送ってきていたお店の住所を確認した。

しばらくなまえとご飯食べるのだって出来てなかったのに、何で俺より先に食べてんの?となまえよりは凛月に対して少し苛立った。

準備ができたなるくんと一緒に出て、お店に向かう。

「おい〜っす、早かったじゃん」

「くまくん〜〜??どういうこと?!」

「わはは!にくにくぅ!」

「先輩方お疲れ様です!ここのお肉とても美味しいです!今度うちのシェフに伝えておかねば…」

「もうっ!なーんか仲間はずれにされた気分!すでに出来上がってるじゃなぁい!」

なるくんの言う通り、俺達が着いた頃には座敷部屋の個室の隅でなまえは何故か丸まってくまくんの隣にいる。

なまえのそばに行ってかがみこんで見た。
頬は赤くてすぅすぅと規則正しく息をしている。

「ちょっとぉ…何したの?!」

「え?いっぱい食べていっぱい飲んで寝たの」

「飲んで、って…はぁぁ?」

「セッちゃんも多分くるよって言ったら、来るまで少し寝るって〜」

テーブルの上にはお酒らしきものもあり、なまえが飲んだんだろうそれは半分くらい残っていた。

「はぁぁ…」

お酒弱いんだから飲まないようにって言ってたのに…。

久しぶりになまえとご飯を食べれると思っていたらこんなところに連れてこられてるし、飲まされてるし、寝てるし…。

出るため息は重かった。

なるくんは王さまやかさくんと肉を食べ始めていた。

「本当は家に連れて帰ろうと思ったんだけどさぁ。」

「は???」

「だってちょっと会いに行ったら顔もひどいしなんか汚くなってるんだもん」

「…なんでくまくんがなまえと会ってるわけぇ?」

「なまえの仕事場に俺がちょうど通っただけぇ♪」

「……。」

「やっぱり弱って毛並みもボロボロの猫を放っておくのは俺も良心が痛むし〜」

くまくんの言葉に言い返せなかった。
たしかに、なまえの顔は目の下がくすんでいてよく眠れてないのかと思うほどだった。

髪はパサパサで枝毛がありそうなほど。

そっと頭を撫でたら、なまえは身じろぎをしてなまえの隣に座った俺の腰へ手を回してきた。

完全に寝ぼけてるその無意識の動作に不安になった。

「ちょ、…誰か分かってやってんのぉ…?」

誰でも構わずこんなことしたら気が気じゃない。
それでも腰に回す腕を外すことはしなかった。

なまえはすんすんと俺の服に鼻を近づけている。それからまた俺の腰にしがみついたまま大人しくなった。

「……。」

「猫ってさぁ寂しいとストレス溜まるんだって。」

「……。」

なまえの頭をもう一度撫でた。

「いつも一人で食べてるって言ってて寂しそうに見えたけどね〜飼い主がいない家で一人って寂しいよね〜」

俺が家に帰れてないから、なまえがここまでボロボロになってるんだと言っているのはすぐに理解できた。
いつも寝顔だけ確認してちゃんと生きてる、大丈夫って思って仕事に出てたけど、髪乾かすのもたまに保湿クリーム塗ってあげるのも、全部出来てなかった結果がこれだ。

なまえに寂しい思いをさせてたんだと痛感して顔が歪んだ。

「セッちゃん〜次は家に連れて帰るよ」

寂しくて心の中でみゃあみゃあ泣いてたんだろうか。何も言わないし、いつも通りだと思ってたけど本当は寂しくて仕方がなかったのかもしれない。

「…わかってるよ。でもそれはだめ。」

「え?なまえがいいって言ったら良いよね?」

「だめ。はぁ、次はないようにする。絶対。」

「俺は次に期待しとこ〜」

「はぁ?ちょ〜うざぁい!…でもまあ、ありがと。反省してる。」

「うわっ、あのセッちゃんが反省…!何か良くないことが起きそうでこわ〜」

「ふん、俺はサラダとスープとキムチ、それから牛タン。」

「あ、泉ちゃんもう全部頼んでるわよ♪」

「さすがなるくん。」

それからすやすや眠ってるなまえをそばに、バランスよくヘルシーなものだけ食べて店を出た。

もちろんなまえは起きないから俺の背中におぶって。

「それじゃ、おやすみなさぁい♪」

「じゃあね〜俺の時間はまだまだこれからだけど〜」

「では失礼します、あのなまえさんにもまたよろしくお伝えください」

「セナー、なまえーまたなー!」

「おやすみぃ。」

なまえをおぶったまま皆と別れて帰路につく。

なまえの寝息が耳元で聞こえてその度に胸が締め付けられた。

寂しい思いさせたな、とぎゅっと抱きしめたくなる。

帰って朝、なまえが起きたら二人で話をしよう。
寂しさを感じさせたことを謝ろう。

星空の下を歩きながら、よいしょ、とおぶり直したらなまえの腕がぎゅっと力強くなった。

「しっかり掴んでてよぉ。」

聞いてるはずはないけど、くすりと笑いが漏れた。

明日の朝はきっと頭が痛いというなまえに水を用意して上げないといけないなあと思った。

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