「へえ〜なまえくん恋人いたんだ?!」
客である俺の前に座ってニコニコと笑うミルクティー店員は今日もイケメンだ。
向かい合わせでボードを持ったまま腰掛けエプロンの姿で座っているところが様になっている。
仕事に戻れば、とやんわり言ってみたのに、いまお客さんいないからだいじょーぶ。と言ってそのままずっと入店した時から俺の前に居座っていた。
「恋人っていうか…住ませてくれてる…っていうか…」
「え、ヒモ?」
「え……」
「うそうそ!…えー…なまえくん付き合ってる人いたんだ…。どんな人?」
「……かっこよくて…優しい。…ちょっと口が悪い時もあるけど…」
「え、男? 」
「……。」
こくりと頷くとミルクティー店員はそうなんだ、と頷くだけだった。
「…引かないの?」
「何で?俺バイだよー。」
「……そう。」
「その人とは付き合いは長いの?」
「いや…まだ…」
「ふうん。出会いは?」
「……助けてもらって…。」
「へぇ、優しいんだねその人。」
「…うん。」
パンケーキを1口ずつ食べながら話をする。
同い年で顔見知りということもあって話しやすくて不思議と会話は続いた。
ミルクティー店員の質問に俺は答え続けていく。
「そんで、一緒に住んでるんだ?」
「……うん。」
「その人の友達とかとは一緒に遊んだり?」
「…あんまり…。ちょっとしか…知らない。」
「仕事は何してる人なの?」
アイドルやってるなんて言えないから俺は押し黙った。
「知らないの?」
「…いや、」
「…なまえくん大丈夫?騙されてない?」
「え…?」
「だってさっきから聞いてると、年上でイケメンで優しくて、…ってそんな完璧人間いる?!なんかなまえくんほわー、ってしてるし騙されてないか俺心配になってきたよ?!」
「ち、違う…そんな人じゃない…。本当に優しくて…それにたとえ騙されてても、別に…俺は一緒にいれるだけで…」
「…助けられてそのまま惚れちゃったって感じ?よくあるような雛鳥が初めてみたものを母親と間違えるような……。」
「…違う!」
少し声が大きすぎたみたいで、ミルクティー店員は驚いていた。
「ごめんごめん、俺が言い過ぎだった。そんな完璧人間いたらめちゃめちゃモテるだろうし、ほんとかな…ーって。疑ってごめんね、」
「………。」
さっきまで美味しかったパンケーキはただの甘いものと化していた。
「……ごめん。最近なまえくん、来る度に寂しそうな顔してたから…何かあったのかと思って色々聞こうとしてた。ごめんね。」
ミルクティー店員はしょげたように俯いた。
自分のためを思って言ってくれたことなんだと考えると少し罪悪感が生まれた。
「………別に怒ってない…。」
「…じゃあ最近寂しそうなのはその人と関係ある…?」
「………。関係ない。」
「………。」
本当?と言いたそうなその目から俺は目線を逸らした。
何で俺のことにここまで関わってくるんだろう…。
もう話したくない、というようにパンケーキをつつくとミルクティー店員は わかった、でも何かあったら相談してほしいな、いつでも待ってるから。と言って席を立った。
俺はただただアイスカフェオレのコップから水滴が落ちるのを見てミルクティー店員が去るのを待つ。
トゲトゲしたような気持ちになっているのが自分でもわかった。
その理由が、早く帰ると言っても相変わらず忙しくて帰れない瀬名に対してなのか、瀬名のことを疑ったミルクティー店員に対してなのか、そもそも瀬名みたいな完璧な人に釣り合わない俺に対してなのか、考えたくもなかった。
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