むしゃくしゃして、何にも考えられなかった。
ずんずんと家から離れるように歩いた。
歩いて歩いて、途中いつも行ってるパンケーキ店の前を通ったけど、パンケーキなんて見たくなかった。
これ以上パンケーキを見たら嫌いになりそうだったからさっさと通り過ぎた。
「――くん、なまえくんっ!」
後ろから聞こえてきた声にハッとして振り向いた。
「ひ、さしぶり…っ、」
駆け足で近寄ってきたのはパンケーキ店のミルクティー店員だった。
「……どうも。」
「ごめん…さっき店の前通ったの見て…何か深刻そうだったから来ちゃった…。何かあった?」
エプロン姿のままくるなんて、お店はいいんだろうかと思う。
この感情を目の前にいるミルクティー店員にぶつけるわけにはいかないから「何もない…」と呟いた。今は一人にしてほしかった。
「今からどっか行くの?」
「………。」
どこに行く宛もなく、何て返そうかと迷った。
「あ、俺もう上がるからさ、夜とかどう?なまえくんともっと話してみたいって思ってたんだよね。」
「………。」
「何か嫌なことあった?言わなくても全然いいけど、一人より一緒に駄べったほうが楽じゃない?」
「別に一人でも…」
「まあまあ、ほら、店の中で待っててよ。アイスカフェオレ奢るから!」
ぐいぐいと手を引っ張られて店へ連れていかれた。
どこに行く目的もないし…いいか…、ゆうくんが
出ていくまで時間潰しとしてご飯食べるくらいい。全く知らない人じゃないし…。
椅子に座る俺に美味しそうなカフェオレを運んできてくれた。
「……これ…」
「ん?いいよ、俺の奢り。」
「……ありがとう。」
優しい。何でこんな俺に優しくしてくれるんだろう。冷たくて甘いカフェオレが喉に染み込んで楽になった。
ちょっとだけ、ミルクティー店員がいつもよりかっこよく見えた気がした。
少ししたら、私服姿のミルクティー店員が出てきて、一緒に店を出た。
普段ホールでの腰エプロンの姿しか見たことなかったから何だか新鮮だった。私服だと、同い年という親近感が少し増した。
「あ、ご飯。俺んちに行く?宅飲みしようよ。冷蔵庫も色々あるし。俺作るよ。」
「…え…」
てっきりどこかで食べるかと思っていたのに、まさか家に行くとは思わなくて足を止めた。
「狭いアパートだけど、落ち着けるかな、って。」
「………。」
「嫌…?」
「…嫌…ではない、けど…」
「じゃ、決まり。いこ。」
俺の家こっちね、と店から割と近いところにあった。
少し緊張した。
瀬名以外の人の家に入ることがなかったから。
部屋の中は綺麗で狭くなんてなかった。
清潔感ある部屋でミルクティー店員の好感度は高そうだな、って思った。
「…お邪魔します…」
「どーぞ!適当に座ってて!」
それからミルクティー店員は器用に色んな料理を作って出してくれた。
すごいなあと思っていると、いつか厨房に入りたいんだ、と言っていた。
俺はお酒はあまり、飲めないからいらないと言ったけど、これジュースみたいで美味しいんだよと勧められると甘そうなその匂いには勝てなかった。
少し飲みながら、美味しい食べ物を食べて俺は瀬名とゆうくんのことなんてすっかり忘れていた。
「なまえくん〜、こっからが本題だよ〜、で今日はなにがあった…って…寝てる?」
「ん……。」
ぽわぽわふわふわ、そんな感じ。
もう寝っ転がって大の字になりたいな、なんて考えていた。
「なまえくん〜?あれれ、寝ちゃったかぁ」
少しだけ、ほんの数分だけ寝させてほしい。
冷たいフローリングにぺたりと寝そべった。
「あはは、猫みたい。」
その言葉、前にも瀬名に言われたなあ、なんて思いながら気持ちのいい夢の中に吸い込まれていった。
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