「なあ、それおもしろい?」

「………。」

「なー、」

パチリ、パチリ、

小さな指がジグソーパズルのピースを1枚を摘んで、パチリと置いていく。

話しかけてもまるで聞こえていないかのようにただひたすらにパチリ、パチリ、と空白を埋めることに集中していた。

「あ、これ、ここだ。」

そんな幼なじみのパズルを邪魔するかのように、ずいと割り込んで一枚のピースをはめ込んだ。

そうすることでやっと、パズルだけを見ていた目がこちらを見た。

「………じゃましないで…」

「みんな、こうえんであそんでるぜ?」

「……よばれてないからいかない。」

「なんで?おれといっしょにいこうぜ」

「…いかない。…みんないやがる。」

「そんなことない!きょうはドッヂボールやるんだ!なまえもいっしょにやろうぜ」

「…やらない。おれよわいし…。すぐあたるから、おれのことみんないやがるもん…」

「じゃあおれがなまえのこと、まもってあげる。」

絶対になまえを敵のボールから守るんだ、となまえの目を見て宣言したら、なまえは目を逸らした。

「…いい。」

「おれなまえと「おーーい!まおくーん!はやく!はやくあそぼ!」」

「…よばれてるよ。いけば…」

なまえはこちらを見ずにまたパズルを1枚ずつパチリ、パチリと埋めていく。

「…じゃあおれもなまえとパズルしよ。」

「…え、」

「ごめーーーん!きょうはなまえとパズルするから、またこんどなあー!」

「えー!わかったー!じゃあまたこんどねー!」

パタパタと公園に駆け戻っていった友達たちになまえの手は止まった。

「……いきなよ。おれ、ひとりでやるほうがたのしいもん。…まお、いらない。」

なまえは自分の口から出た言葉にハッとして、バツが悪そうに俯いた。

そんななまえを下から覗き込んで笑いかけた。

「おれはなまえとこれかんせいさせたい!」

「……っ、」

途端になまえの顔が真っ赤になって、目は涙が膜を張りうるうると光った。

「みんな、まおがひつようだから…いけばいいのに…。おれいつもひとり…なれてるもん…。」

「なんで?なまえがいちばん!おれがなまえのとなりにずっといるからなまえはひとりじゃないぞ!」

「……すきにすれば…」

「だからな、おれがいつもそばにいるから…」

むりにみんなとあそばなくていいんだからな。

なまえの耳元でそっと囁いた。

「なまえのしたいことならおれもするよ。パズルも塗り絵も、だから――ほかのだれかじゃなくてぜったいおれをよんでな?」

にっこり笑って見てやれば、なまえは俯きながらも持っているピースを握りしめた。

なまえ、これはここ。

なまえの手を導いて微笑むとなまえはありがとうとぼそりと呟いた。

ありがとうなんて…むしろこちらこそありがとうだよ。

こうして刷り込んで俺としか親しくならなければいいのにと俺が思っているなんて知らないだろう。

何も知らないなまえがどうしようもなく可愛くて笑いが零れそうになった。


****


『真緒くん…?』

「あはは、すみません、ちょっと昔のこと思い出してました」

『本当にごめんね。うちの子が…立派に働いてる真緒くんと違って何もできない子なのに…一緒に住むなんて…』

「ああ、いや!気にしないでください!なまえに一緒に住もうと言ったのは俺からなんですから!」

『迷惑じゃないかしら?うまくやってる?』

「全然迷惑じゃないですよ!なまえも色々頑張ってるし、あ、もう仕送りとかは大丈夫です、俺が全部面倒見るんで」

『駄目よ!真緒くんに負担かかっちゃう!』

「大丈夫です!なまえも前向きに頑張ってるし、自立したいって言ってるので俺たち2人で全然余裕ですよ!正直なまえのことすごく心配だったからこうして一緒に住めるの安心してるんですよ。」

『真緒くん…本当に何から何までごめんね…ありがとう。あの子友達もろくにいないから…この先どうなるかと頭を悩ましてたの。真緒くんがいてくれて本当によかったわ』

「あはは、買いかぶりすぎですよお母さん。じゃあ、そういうことでまた連絡します」

『ありがとう。不出来な息子をよろしくお願いします』

「とんでもない!こちらこそ、じゃあまた…」


ピッ…

「ふぅ…完了っ」

電話を終えてリビングに戻ると、なまえがソファでプリンを食べていた。

「…仕事?」

「ん?いやなまえのお母さんから。」

「っ……、怒ってた?」

「何で?」

「真緒の家に居候してること…」

「居候って…はは、同棲って言ってくれよな〜」

なまえの隣に座り込んでずいと顔を近づけるとなまえはどうしたらいいかわからないというようにしどろもどろしている。

「だって…俺無職だし…引きこもりだし…ここに来ても何もしてないし…全部真緒がしてる…」

「それでいいんだよ。俺がそれでいいって言うんだから問題ないだろ?」

「…働いた方がいい…?」

「…駄目。ここにいて。」

「え…」

「なまえも働きたい?」

「……………。」

「ははっ、その間は言わなくてもわかるな。俺に養わせて。なまえの面倒は全部俺がみたい。」


「……すきにすれば…」

昔聞いたことのある言葉に思わず笑った。

「すきにさせてもらおーっと」

すきにするという意味が何なのかなまえはまだわかっていないだろう。

なまえの首元に顔をうずめて、腰に手を回した。

なまえの長い髪からふわりと俺と同じシャンプーの香りがした。

今では毎日お風呂に入らせて、規則正しい生活を送らせている。

「髪長くなったな、切ろうな」

「うん…」

ああ、幸せ。

腕の中にいる引きこもりニートな幼なじみを見てどうしようもなく頬がにやけた。

俺がいないと何もできないなまえ。

俺に対して引け目を感じているのか、俺が何しても抵抗しない。

首筋にキスをしても抵抗しないなまえをいい事に手を服の中に入れる。

ぴくりと耳を真っ赤にさせて震えるなまえに囁いた。

「ずっと一緒だからな…」

俺の服をぎゅっと握りしめたなまえは、いつの日かパズルを握りしめて嬉しそうに俯く幼い頃と同じだった。



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