朝になって、目が覚めたらバイトのために家を出る時間ギリギリで焦って顔を洗った。
携帯を見ると画面は真っ暗でそういえば昨日電源を落としたまま寝てたんだったと気づいた。
電源ボタンを押して起動させる。
ブブブと振動して画面に光が付いた瞬間、ピコンピコンピコン、と着信やメッセージをお知らせする音がなり始めた。
びっくりして携帯を見ると、何十件と着信がきていた。
スクロールすると全て真緒からだった。
メッセージも昨日の夜からずっと来ている。
【なまえ今どこ?もう帰ったのか?】
【マンションの近く?凛月から聞いた。どこにいる?】
【なまえ?近くにいるなら会いたい。どこにいるか教えてくれ】
そんな内容が読み切れないくらい来ていた。
とりあえずバイトの時間に遅れてはいけないので、そのまま放っておいた。
着る服といえばよれたパーカーとジャージしかないのでそれを来て部屋を出る。
近くのスーパーなので徒歩数分で着いた。
おどおどしながら、事前に連絡を取っていた店長を訊ねた。
「どうも、店長の木村です。軽く面接しようか。」
いきなり面接と言われてドキリとした。
「顔色悪いね、大丈夫?」
「あ、だ大丈夫です…」
「もしかして人と話すの苦手、かな?」
「…は、はい」
「そうかお店だからね、とりあえずお客さんと話すことになれるためにも挨拶とかはしていこうね。徐々に慣れていけばいいからね」
店長は優しそうな人でこんな俺を理解してくれようとしているのが伝わってきた。
お試しということでまずは1日、制服を来て品出しをしようということになった。
「こちらが佐々木さん、品出し担当の先輩だよ。佐々木さん、今日から入るみょうじくんです、まずはお試し期間なので仕事のことを色々教えてあげてください。」
「任せてください店長!よろしくねえみょうじくん」
店長に紹介された佐々木さんは中年の女性で少しきつそうな印象だった。
それから佐々木さんについて、野菜や日用品の品出しをした。
言われた通りに商品を出していると、大きな声で名前を呼ばれてびくついた。
「ちょっと!みょうじくん!!」
「は、はい…」
「これ!この商品ここじゃないわよ?!」
「…え、で、でもさっき…」
「でも、とかそういう口答えはいいの!言われた通りのことが出来ないの?!高校生でも出来るわよこんなこと!!」
「…す、すみませ、ん…」
さっきこの商品はここだって言ってたのに…。俺の聞き間違えだったのか…?強く言われて言い返せなくて俺はそのまま謝って直した。
それからも、数度佐々木さんに呼ばれては怒られた。確かに俺が悪い小さなミスも、怒られて「無能はいらないのよ!仕事ばかり増やさないでちょうだい!」と言われた。
無能という言葉が頭でリピートされて終わりの時間が来る頃には沈みきっていた。
「みょうじくん、今日1日どうだった?」
「……、あの、やっぱりバイトの話は…なかったことで」
「そっか…残念だね。また何かの機会に」
そうして自らニートに戻った。
制服を返してよれたパーカーを羽織りスーパーを出ようとしたところで、佐々木さんと他の女性店員が話しているのが見えた。
「絶対引きこもりよねぇ!あの服!普通仕事場にあんな恰好で来るかしら?!」
「いじめじゃないのよ?社会の厳しさを教えてあげただけだから」
ふふんと笑ってこっちを見る目がひどく居心地が悪くてパーカーの裾を握りながら早歩きで帰り道を急いだ。
もうあのスーパー絶対に行くもんか、と情けないやら悔しいやら、ふつふつと煮えたぎるような思いで部屋に急いだ。
部屋に戻り、玄関をあけようとしたら鍵をあけなくてもドアノブが回った。
俺以外にこの部屋に入れるのは真緒しかいない。
ゆっくりとドアをあけると部屋の奥に赤い頭が見えた。
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