それから、仕事して帰って寝て、また仕事してを繰り返しすぐに休みがきた。
今日も部屋にこもってパソコンをしていた。
ああ、夜になって暗くなって人が少ない時間帯になったらスーパーに食料買いにいかないと。
今日は肉でも食いたいなぁ、プリンも買ってしまおうかな、なんてもうすでについている腹の肉を増やすようなことを考えてしまう俺だからこんな体型なんだろう。
そういえば、今週は女子社員から声かけられてびっくりした。
「ねぇねぇ、みょうじくん」
「え…、」
職場の廊下を歩いていると1人の若い女子社員に話しかけられた。
「あっ、ちょっと〇〇!」
そこに別の女子社員がやってきて、俺に声をかけた子を引っ張っていきコソコソ話し出した。
別に聞きたいわけじゃないけど聞こえる声で話すから自然と会話が耳に入ってきてしまう。
「いくら人が足りないからってみょうじくんはないでしょ!」
「えぇ?」
「他の男子に声掛けようよ、みょうじくんはないから!」
そんなひそひそした会話が耳に入って、あぁ何かわかった、と悟った。すぐに用事があるからと言ってその場から去った。
まぁ…こんな俺じゃそうだろうな。と自分でも頷けたのが平日の出来事。
せっかくの休みなのに気分が下がることを思い出してしまった。忘れてゲームにでも没頭しよう。
ボス戦に辿り着くまでの道のりが長くてコントローラーを握りすぎていたら、手汗がやばかった。
うわぁ、熱中しすぎた。こんなところ多分あの女子社員とかが見たら気持ち悪がるんだろうな。
…また気分が沈みかけたからタオルで拭いて、ついでにさっぱりするために手を洗った。
別に好きでぽっちゃりしてるわけじゃない。
飯が美味いだけだし、小さい時からずっとこの体型だ。
背も高くないくせにいい肉付きに、ずっとからかわれているからもう慣れたけど。
またゲームを再開しようというところで玄関のチャイムが鳴った。
ゲームソフトをネットで頼んでいたから届いたのか?
立ち上がって玄関に向かった。
朝起きた時の格好からそのまま変わってない格好で出るけど、宅配を受け取るだけだ。
ドアスコープは確認せずにがちゃりとドアを開けた。
「あ…、」
「………え、」
ドアを開けたら、宅配の人がいるはずだ。
それなのに、ドアの前にたっていたのはサングラスをかけてマスクをした背の高い人だった。何か着てる服もかっこよくて俺の知り合いにこんな人はいない。部屋を間違えてるんじゃ…
「…やっほー、来ちゃったよ。」
目の前にいる人はマスクをぐいと下に下ろして、サングラスを取った。
「……か、薫くん…っ!?」
顔を見て初めて、今ここにいる人が薫くんだと分かった。
なんで?なんで薫くんがここにいるんだ?
全く想像していなかった展開に頭がついていかない。
「ど、どしたの…?」
「えー…なんかなまえ、家にいそうだったからさぁ来ちゃった。」
「あ…」
そうだ、今日は仕事があるとかって言って断った日だ。
「仕事は?」
「し、仕事は…や、休みになって…」
「ふーん…」
ドアを開けたままの手が疲れてきた。
出来ることなら早くドアを閉めていたたまれないこの場から去りたい。
俺を見る薫くんの目は俺の言うことを信じてなさそうだし、かなり居心地が悪い。
「あ、ごめん…また誘うから…じゃ、じゃあ…」
自分でもひどい言い様だけど、そのままドアを閉めようとしたのに閉まらない。
薫くんがドアを閉めないように持っている。
「嘘。俺のこと誘ったことないじゃん。」
「ちゃ、ちゃんと誘うよ…」
「ねぇ、中入らせて。」
「えっ…?!や、それは…無理かも…」
「なんで?誰かいるの?」
「いや、そういうわけじゃないけど…」
暑い。汗が垂れる。必死なこの状況に体が異常なのか、汗で服が張り付く。ただでさえ贅肉のせいで汗かきなのに。
「じゃあ、いいじゃん。入れてよ。」
「い、今から予定あるから…」
「そんな寝癖ついた格好して予定あるとか嘘でしょ。」
お邪魔しまーす、と無理やり中に入ってきた薫くんに あぁぁ…ちょ、っと…と声をかけるも無視してずんずん中に入っていった。
「綺麗にしてるんだね」
そりゃ家にいるんだから住みやすい環境にするために掃除するけど…
俺の部屋と薫くんがアンマッチすぎて違和感しかない。
「なまえの部屋初めてー。今日ここでもいいね。」
「…えっ?!…か、帰らないの…?」
「なまえは何でそうやってすぐ追い出そうとするの?久しぶりに会ったんだからさぁ、色々話すことあるじゃん?」
「いや…」
俺から薫くんに話すことなんて何一つないんだけど…。
俺の部屋で寛ぎはじめる薫くんに、この部屋の主である俺がどうしていいか分からなくて立ち尽くした。
「まぁまぁ座りなよ。」
薫くんに促されてとりあえず座った。
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