俺の幼なじみはぽっちゃりしてる。
おまけにダサい。おまけに暗い。
いつも1人。
100人いたらほとんどがぽちゃダサななまえの印象について良いとは言わないかもしれない。
俺の記憶の最初からなまえはいる。
小さい頃から幼なじみのなまえ。
もうあの時からなまえはぽっちゃりしてた。
肉付きが良くて腕は丸々してて、顔も頬も丸々してた。俺はあの頃から、なまえの丸々さを面白いと思っていた。
近所の子たちと皆で遊ぶ時も、なまえは鈍臭いしすぐに泣きそうになるし、ごにょごにょ言ってて何言ってるのか分からないし、正直皆から遠ざけられていた。
顔が丸いからアンパ〇マンや、体型を見て雪だるまなんて言われて泣きそうになっているなまえはいつも俺の隣にひっそりと来るようになっていた。
俺は外面はいいから、どうしたの?なんて笑いかけてあげていた。
そしたら、なまえはもっと泣きそうになりながら何でもない、と言いながら俺にぴったりと近づいてくる。
何でもないわけないのに。見てたし、俺。
さっき雪だるまって言われてからかわれてたじゃん。
でもなまえは何も言わずに俺にぴったりとくっついてくる。
正直、肉がついてるからかなまえは体温が高いし暑苦しかった。でも、不思議と他の子たちみたいに突っぱねたり、拒絶したりする気にはならなかった。
ああ、暑いな。くらい。
それからなまえは俺の隣にしか来なくなった。
皆がどれだけ俺の隣にいることを批難しても、なまえは縮こまりながら俺の隣にひっつくようにいたんだ。
それが、何だかすごく心地よかった。
俺だけが必要なのかな、って。
求められてる実感が俺を嬉しくさせた。
でもだんだんと学年が上がるにつれて、なまえは俺のところにあまり来なくなったし、小学校を卒業する頃にはなまえは教室でも1人だった。
俺は話しかけたりするけど、あんまり目を合わしてくれない感じ。家に行って話す時だけ、俺を見てくれる。
中学に上がったら尚更、距離を感じた。
俺もその頃は遊んでばっかりだった。なまえは1人だし、別に大丈夫かな、って思ってたのにある日見かけたら、なまえは知らないやつと笑って話してた。
あんまり笑うことないのに。ムッとして家に帰ってからなまえに聞いたら薫くんには関係ないとか何とか言うからさらにムッときた。
あれだけ俺にひっついてたくせに。
もう知らないとなまえに背を向けたのに、女の子と遊んでても何してても頭の中になまえが出てくるし、女の子の喜ぶ顔を見ると嬉しいけど、なまえが喜んだらどんな顔するだろうとか考えてしまってしばらくモヤモヤしてた。
そんな状態で高校に上がって、バラバラになった。
高校に上がってなまえのことなんか忘れて自分の自由のままに遊ぼうって思ってたのに、やっぱりなまえのことが忘れられなかった。
なまえは今何してるんだろう、とか、一人で部屋にいるのかな、高校で友達できたのかな、とか。
やっぱり気になった俺は、高1の時、女の子と遊んでるのを途中でやめてなまえの家に行った。
家にはなまえしか居なくて、久しぶり〜元気してた?なんて言って部屋に入った。
久しぶりになまえを見た時点で俺の気持ちはもうすでに確実に色づいていたと思う。
お互いの高校の話をした。なまえはこくこくと聞いているだけで、黙ったまま。
遊んでたり好き放題やってることを俺はペラペラ話しているとなまえが突然口を開いた。
「薫くん、変わったね…。」
「…は?」
「なんか…薫くん、全然知らない人みたい…まあ…元から俺とは遠い存在だけど…」
そう言ったなまえに何故かカッときて、気づいたらなまえを押し倒してた。
「…変わった?はは、どこが変わったの…?……俺は何も変わってない…。」
すごく低い声が出た。なまえは怯えたような目で俺を見上げてた。俺は家の事とかあって色々荒れてたから。
それも相まってそのなまえの言葉に反抗したくなって、カッときたんだ。
俺は何も変わってない。ずっと前からなまえを気にかけてることや、なまえがいつも何してるか、なまえは誰が好きなんだろうとか、ずっとずっと前からなまえのことばかり考えてたのに。
それは変わってないのに。
当の本人のなまえがそんなこと言うから。
それで気づいたのが、俺はなまえが好きなんだってこと。
多分異性でさえ、なまえを好きな人なんていないだろうと思うけど、俺はなまえが好きなんだってその時わかった。
あれだけ女の子と遊んでて、色んな経験してきたのに、俺はこんなぽっちゃりでダサくて皆に遠ざけられるような陰湿で暗い男の子が好きなわけだ。
笑える話だけど、それに気づいた時俺は何かすごくすっきりした。
ああ、そうだったんだって長年のモヤモヤが晴れた感じ。
それから開き直って、俺はなまえに連絡をとるようになった。離れてた分を取り戻すかのように。
そうして高校を卒業して、なまえが社会人になってからもそれは続いた。
なまえは俺が頻繁に連絡する理由をよくわかっていないみたいだし、俺が有名だからかよく思っていないみたいだけど。
もう、この曖昧な関係に痺れを切らしそうだったんだ。もう俺から動くしかないって思った。
恋愛に関しては自信ある。
伊達に場数を踏んできてるわけじゃない。
ぺろりと唇を舐めた俺を呆然と見るなまえは焼かれて食われる前の子豚のようだった。
さあて、この目の前の子豚くんをどうしてやろうかな。
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