プロローグ
プロローグ
『零くん、零くん…、重たいよぉ…』
「泣き言言うなって。早く来い。」
学校の帰り道、10歳にも満たない小さな体にランドセル2つは重かった。
教科書や水筒が入った黒色のランドセルを背中に、もう一つのランドセルは両手に抱えて持っていた。
少し先を歩くのは、背が高くて黒髪をふわりと風になびかせて歩く姿。
何も持っていないため身軽にさっさと歩いている。
『れいくん…おもたぁ…』
泣きそうになりながら弱音を吐くと、鼻で笑われて更に先に歩いていってしまった。
心の中で同じクラスの真緒と一緒に帰ればよかったと後悔しながら歩く。真緒が一緒ならこんなにひどいことされないのに。
教室を出たところで捕まったんだ。朔間零という2つ年上の幼なじみに。
首根っこを引っ掴まれて「帰るぞ〜」という有無を言わさない力で連れて帰られたのがこの有様だ。
ランドセル持ちという辛いことをさせてくるこの幼なじみにはいつも悩まされていた。
歩き疲れた俺は、足取りも乏しくなってきて一歩一歩が遅くなる。
『れいくん…』
もう誰か助けてほしいと空を見上げると、雲一つない青空に飛行機雲が見える。
飛行機の後ろに一直線に引かれた白い線に興味を注がれてわぁっ、と嬉しくなった。
『零くん!空!飛行機ぐ、ぁっ!!っ』
上を見上げたまま歩きながら、空を見てと言おうとしたら何かにつまづいて体が前に倒れた。
ランドセルを持っていたため手がつけなくてそのままズシャッという音とともに地面に転けてしまった。
じんじんと膝小僧が痛い。
『……ぅ、ぅうっ!ひっ、ひぐっ、うぇぇ…』
転けたことで重たいランドセルにも転けたことにも嫌気がさして簡単に涙が零れでてくる。
体を起こすこともせず、転けたまま泣き始めると、前からため息を吐く声が聞こえた。
「はぁ……ったく何で転けてんだよ。」
ザ、ザ、と歩いてきて視界には真っ白な運動靴が見えた。
『うぇぇ…っ、ふぇっ、ひこ、飛行機…っ、』
「はぁ…?ほら、立て。」
まだ転んだままの俺を引っ張って立たしてくれた。
ぽんぽんと、服についた土を払って泣きじゃくる俺の顔を覗き込んでくる。
『いたい…っ、いたいよぉ…れいくんのせいだ…っ、』
「何で俺のせいなんだよ、お前が上見ながら歩いてたせいだろ?」
『ぅうっ、いたい…っ』
「………。」
突然俺の涙を乱暴にぐいと拭って、無言のまま顔を近づけてきた。
何をされるのかと思えばおでこにちう、と柔らかい唇が触れた。
『…っひぅ、なんでちゅーするの……。』
「……これで痛いの飛んでくから。」
『……まだいたぃぃっ…』
「…チッ、おんぶしてやるから、ランドセル貸せよ。」
俺の背負っていたランドセルと自分のランドセルを手に持ってそれから俺の前に背中を見せてしゃがんだ。
「ほら、」
おぶってやる、と背中を見せたその姿に、俺は迷うことなく体を預けた。
おんぶしてもらうといつもの自分の目線より高い景色に少し気分が落ち着いた。
『……零くん、重い?』
「はっ、なまえは馬鹿か。俺を何だと思ってんだよ」
ケラケラ笑ってスタスタと歩き始めた。
それでもやっぱり重いのかつつつ…と首筋に汗が流れ落ちていた。
俺には2つ年上の乱暴でいじわるでちょっぴり優しい、朔間零という幼なじみがいる。
プロローグおわり
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