冬の日SS
冬の日 SS



「ううう、寒い!」

木枯らしが吹きつける季節。

寒くてマフラーに顔を埋めて登校していた。前を見ると灰色頭を見つけて駆け寄った。

「はよー。」

「ああ…みょうじか」

鼻先を赤くさせている大神に声をかけて隣に並ぶ。

「朝、寒くないか?」

「おう、凍えそうだぜ。レオンで暖とってる。」

レオンで?!まさか大神からそんな発言が出るとは思わなくて想像してみた。

レオンに抱きついてぬくぬくしている大神…。可愛いところあるじゃねえか…!とは言わない。言ったらプンプン怒るからな。

「へー、でもレオン確かに温かそう。」

あと少しで校門に入るというところで俺の首筋にひんやりと冷たい感触が走った。

いや、ひんやりなんて可愛いものじゃない。真冬に保冷剤を首筋に当てられた感じだ。

「っ!!?!」

びっくりして振り向くと朔間先輩が立っていた。

「なっ、何するんですか?!?!」

あまりの暴挙に声が裏返りそうになる。こんなのいつもの俺いじめが可愛くみえるくらいひどすぎる!心臓止まるかと思った!

「……寒い。」

朔間先輩も大神みたいに少し鼻先が赤い。

これでもかってぐらいぐるぐるにマフラーを巻いてコートを着てる朔間先輩は歩く着ぐるみみたいだ。それでも着こなしてるところがまた…。

「だからって俺の首掴まないでくれますか?!心臓止まりそうだった…!」

「なまえの心臓が止まったら我輩が食ってやろう」

くっくっ、と笑う朔間先輩に呆れた。ていうか寒かったりしたら面倒くさいなんて行って棺桶の中にずっといたりするのに今日はちゃんと登校したのか…。

寒いのじゃ、とボヤきながらまた俺の首元に手をいれようとしてくるから避ける。

朔間先輩はチッと舌打ちしたあと俺のマフラーを掴んで引き寄せた。

「く、くるし!扱いがひどい…!」

「抵抗すんな。」

ぐいと引っ張られ、あとマフラーの下に手を入れられて朔間先輩の冷たい手が俺の首を掴んだ。

「〜〜〜っ!!」

「あー、温かい。」

この悪魔!暴君!俺は全身に鳥肌が立った。
朔間先輩から逃れる手段はないかと体温を奪われながら考える。

そうだ。体を温める方法。あれがある。

「…朔間先輩、自販機いきましょうよ…」

「自販機?なんの用じゃ?」

「俺は先教室行っとくぜ。」

「ん、大神また後で」


首に手を突っ込んだままの朔間先輩を引き連れて自販機の前まで行く。ホットドリンクのゾーンに缶コーヒーがあった。

100円を入れて押すと、ガコンッと出てきた熱々の缶コーヒー。

手に取るとじんわりと温かさが伝わってきた。それを朔間先輩に差し出す。

「はい、どうぞ。」

「何じゃ?」

「あったかいですよ。ほら。」

朔間先輩に渡った缶コーヒー。大きな薄い手に包まれている。これならきっと寒さも解消できるだろう。

コロコロと、両手の中で缶コーヒーを転がしている朔間先輩によかった、これで大丈夫かなと安心した。

「…こんな缶1本で俺様の寒さが消えるとでも?」

エッーーーー。

ちらりと朔間先輩を見上げると不服だと言うような顔だった。

「で、でもあったかいでしょう?!」

「こんなのすぐ冷める。」

ムッ、としたよう朔間先輩にどんだけ寒がりなんだよ!とツッコミたくなる。

「…はぁ、カイロとかないし今渡せるものはありませんよ。」

このわがまま魔王どうにかならないのかとため息を吐くと朔間先輩は缶コーヒーをポケットに突っ込んだ。

「暖を取る。」

「どうぞご自由に。」

じゃあ、俺は教室戻りますんで、って言う前に朔間先輩が俺のマフラーを掴まれて引き留められる。

「お前が暖。」

「……はぁぁっ?」

「来い。」

「えっ、ちょっ、HR始まるんですけど!ちょっ朔間先輩!」

朔間先輩の手は缶コーヒーのおかげか充分温かくなっていた。冷えてないじゃないか!と思ったけど朔間先輩はどんどん俺を引っ張っていく。


その後、部室で暖を取るとか言われながらずっと朔間先輩の腕の中に固定されていたのは誰にも言えない俺の黒歴史だ。



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