09
『うわ〜…』
朝の登校中、視界の先に見えたのはすらりとした長身に黒髪の後ろ姿、日傘を指しているため朔間先輩であるのはすぐわかった。
昨日朔間先輩にからかわれた俺はしばらく朔間先輩に近づかないと決めたのだ。
よし、ここはUターンして朔間先輩と離れるのを待とう。華麗にUターンを決めて朔間先輩が離れていくのをじっと待っていると、大神が声をかけてきた。
「何してんだみょうじ」
『おう、おはよ。暴君と戦ってる。』
「はあ…?意味わかんねえ。」
『いいんだよ、大神くんはそのまま純粋なわんこでいておくれ』
「きめぇ!てか吸血鬼ヤローの呼び方で呼ぶな!俺はわんこじゃない!孤高の『はいはい、そろそろ行くぞ〜』おい!遮るな!」
ギャンギャン喚く大神はうるさいがこいつもこれでいて純粋無垢だから可愛いんだよなあと大神の袖を無理やり引っ張りながら歩いていると、俺が今一番会いたくない人の顔がぬっと視界に入ってきた。
「朝から賑やかじゃのう。」
『うわ!さ、朔間先輩…!』
おかしいぞ?さっき離れたはずなのに…
「わんこの声が聞こえるからのう、何かあったのかと立ち止まっていれば…」
『うわあ…早く行けばよかったのに…』
朔間先輩に会うと昨日のことを思い出してしまい、少しイラッとした俺はボソッと本音が口からこぼれてしまった。
「 ん〜?どうしたんじゃなまえくん。我輩におはようの一言もないのかのう?」
そんなことをいいながら俺のほっぺたをぐいぐいとつまんでくるこの暴君をどうにかしてほしいんです俺は。
『あなたにはおはようではなくておそようの方がいいんじゃないでしょうか…てかもう離してください。俺は教室にわんこを連れていく義務があるので…』
「だから俺はわんこじゃねえ!」
「ん〜、そのわんこを拘束している手を離したら我輩も離してあげよう♪」
俺がしっかり握っている大神の袖を示しているが、俺が大神を離したら朔間先輩と2人になってしまうではないか。
それは避けたい。でもほっぺたが痛い。
『その要求は受けられませんよ。もう朔間先輩のわがままに俺は、いだだだだだ!!!いだい!』
あろうことか、さっきまでつまんでいた痛みとはかけ離れた痛みが俺の頬を襲ってきた。
この人本気でつねってやがる…。仮にも俺もアイドルなんだぞ…。
「おお、今にも泣きそうじゃ」
『痛い…痛いぞ大神…』
「お前が離さねえからだろ!」
『大神助けてくれ…』
「俺を離せよ!」
『やだ…大神と離れたくないだだだだ!いだいって!』
「くっくっくっ、なまえはバカじゃのう。」
『ううう…くっそ…』
俺は泣く泣く大神の袖をゆっくりと離した。先に行くといって大神はさっさと行ってしまう。
真緒も大神も皆、俺を裏切ってこの隣にいる暴君に売り飛ばしていくんだ…。
『友に裏切られたこの悲しみ…』
「ああ、太陽の下は不快じゃ…早く行こうぞ。」
『離してくださいよー…俺は1人で行くんで…』
「本当に駄々っ子は困るのう。」
『いやいや、駄々っ子はあなたでs 痛い痛い!』
抵抗する俺をものすごい力で引っ張り出した朔間先輩に引きずられるようにして学校へ向かう。
あれ…俺の朔間先輩回避作戦はどこへ行ったんだろうか…
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