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校内は近日行われるイベントで至る所で人が行き交っている。
例に漏れず、俺も真緒と一緒にイベント準備のため外で設営の手伝いをしている。

『真緒、凛月のやつどこに行ったんだよ…。あいつ絶対どこかで寝てるだろ…』

「多分な〜。まあ凛月がいてもあんま変わんないと思うし…俺となまえでサクッと終わらせようぜ」

『正直、脚立の上で作業するの疲れてきた…』

「あと少しだし頑張るぞなまえ!」

『ん〜…』

やる気のない返事と捉えられてもおかしくない。

外の日差しに照らされているこの状況を考えると凛月には無理だろうな、と思っているといきなり足をかけている脚立がグラりと揺れた。

『うわっ!!!』

落ちる、と思って焦って下を向くと揺れは収まり、脚立に手をかけた朔間先輩が楽しそうに俺を見上げていた。

『ちょ…、朔間先輩!?危ないじゃないですか…!!』

かなりびびったため、ドキドキしながら怒りをあらわにしていると、下からケラケラと楽しそうな声が聞こえてきた。

「時にはスリルも必要じゃよ」

『必要ないです!』

何しにここに来たんだと思って下を見る。朔間先輩の隣には転校生がいた。
なにか伝えることがあるのかもしれない。脚立を降りて、転校生へ声をかけた。

『お疲れ、今回のイベントも転校生のプロデュースだったよね?忙しいだろ?』

真緒と話している朔間先輩を尻目に、こくこくと頷く転校生は俺に配置確認の資料を渡してきた。

『お〜、ありがとう。助かるよ。朔間先輩はただの付き添い?』

なぜ朔間先輩も来ているのか、おおかた転校生に付いてきただけじゃないのかと思っているが一応聞いてみた。転校生曰く、今回は朔間先輩も協力する部分があって色々と一緒に動いているらしい。

『へー、そうなんだ。確かに最近お昼とかも転校生と一緒に食ってるもんな。朔間先輩にひどいことされたらいつでも言えよ。あの暴君、さっきみたいにいきなり何するか分かんないからな…。』

苦笑いする転校生に真面目に訴えていると、離れているのに朔間先輩はこちらへ向いて微笑んでいる。

「なまえ、聞こえておるよ。」

『う…地獄耳すぎるだろ…』

朔間先輩に呆れながら資料を転校生と2人で見ていたら、強い風が吹きつけてきて飛びそうになった紙をとっさに掴んだ。

『今日、風強いよなー。』

こんなに強いとさっき取り付けた機材が外れないかと心配で上を見上げる。

少し締め付けが甘かったのかグラグラと揺れていていつ外れてもおかしくない状態だ。

『あれ危ないな、ちょっと直してくる。』

すぐに脚立に脚をかけると、転校生は風が強いからと脚立の脚を持って支えてくれた。
お礼を言いながら、登っていると突然転校生の叫ぶ声が聞こえて何があったのかと下を見る。

俺より上を見て叫ぶ転校生と、朔間先輩が駆け寄ってくるのが見えた。

上がどうかしたのかと顔をあげると、直そうとしたいた機材がぐらりと傾いて、俺の方へ向かって落ちてきていた。

このままだと下にいる転校生も危ないと思い、下を見れば朔間先輩が転校生を引っ張って脚立から離れさせていた。

俺も逃げるために脚立を降り始めたが間に合わなそうだ。せめて頭だけでも守ろうと腕で頭をかばう。

ちかくして腕と頭に強い衝撃が走った。その瞬間、まるで視界がスローモーションのように動いて一気に思考能力がストップした。

ぐらりと揺れた視界に脚立から足をはずして落ちていることが想像できた。

(ああ、俺このまま落ちてしまうのかな…)

そんなことしか考えられない俺はゆっくりと動く視界の中で朔間先輩の腕の中にいる転校生を見て、少し心臓がキリキリとした。
心の中でなぜか少しだけ、守ってもらえる転校生が羨ましいと思ってしまった自分がいた。

俺に向かって何か叫んでいる朔間先輩の顔に、必死そうな顔を久しぶりに見たなあと思った。

このまま落ちて誰か助けてくれるだろうか、もう一度衝撃を受けるのは嫌だけど、動かず落ちゆく体ではどうすることもできない。

地面に落ちるだろうなというところで体の下に何か当たってそのまま受け止めてくれた。

視界には空が見えて、ぼんやりとしてきた。すると、俺をのぞき込む顔があってくっきりしない視界でも凛月だということは分かった。

朔間先輩じゃない。

心のどこかで朔間先輩が来てくれるとでも期待していたのか俺の頭は朔間先輩じゃないことになぜかもやもやとした気持ちが生まれた。

凛月は今まで何してたんだとは思ったが、とにかく今は受け止めてくれて助かった。
ああ、凛月もまた焦った珍しい顔をしている。

あとでお礼言わないとなあ。
だんだんと狭まる視界の中、そんなことを思って意識を手放した。

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