12
ズキズキと頭に響く痛さに自然と視界が開けた。
目に見えるのは天井。
どこの天井か知らないが、思わず拳を握る。
(力も入る…。よかったー…生きてた…)
頭の痛さは尋常じゃないが体を起こしてみると、ベッドに覆いかぶさるように寝ている凛月がいた。
ずっとここにいてくれたんだろうか、優しいなあ凛月は…。
起こさないように周りを見渡して、ここが保健室だということを把握した。
さて、ここからどうしようかと考えているとシャッとカーテンが開けられた。
「おう、起きたか。異常はないけど、頭打ってるからな。しばらく安静にしとけよ?」
佐賀美先生の声に凛月も目を覚ました。
「ん〜…、…!なまえ!大丈夫?」
『凛月〜…、ごめんな?ありがと。凛月いなかったら俺どうなってたか…』
「本当変なところで鈍臭いんだからなまえは…。でも何もなくてよかった…。俺久しぶりに焦った」
『ははっ、だよな〜。俺も凛月の焦った顔見たの久しぶりだった』
笑いながら会話する様子に佐賀美先生は大丈夫だと判断したのか、帰るときは送ってやるから言えよ〜とだけ言って戻って行った。
「そうだ、兄者に連絡しないと。」
『え?朔間先輩?』
「ずっとここにいるって言ってたんだけどイベント準備が切羽詰まってるのもあってさあ。佐賀美先生になまえは大丈夫だから、イベント準備に行けって言われて…」
「なまえが起きたらすぐに電話しろよって言われたんだけど。命令口調が今思い出しても腹が立つ…!トマトジュースで溺れ死ねばいいのに。」
『はは、朔間先輩、口調戻ってたのか』
苦笑いしながら凛月の話を聞く。
朔間先輩に命令されたのが心底嫌そうだ。
「なまえが倒れた時から完全に前に戻ってた。俺が連れていくとか行って、抱き抱えてここまで来たんだけどねえ」
『あ〜…朔間先輩が連れてきてくれたんだ。でも凛月がいなかったら俺そのまま地面に落ちてたわ』
「本当ヒヤヒヤさせるよねえ。とりあえずあいつに連絡しとくよ。」
『あっ!いや、朔間先輩にはいいよ。』
「え?なんで?」
『ほら、イベント準備あるしさ。俺ももうそのまま帰ろうと思うし…』
「でも…」
『凛月。大丈夫だから。』
凛月の言いたい事も分かる気がするが、俺はどうしても今朔間先輩に合わせる顔がない。
脚立から落ちた時、複雑なモヤモヤとした気持ちを抱いてしまった自分がいたことに、朔間先輩にどんな顔をして会えばいいのか分からないのだ。
お礼を言わずに帰るのは申し訳ないが今だけは、あまり会いたくない。
『頭痛いし今日は早く帰って寝ることにする。』
「…はあ、まあなまえがそう言うならいいよ。」
『ん、ありがと。本当に助かったわ〜』
「じゃあまた明日ね」
『うん。またな〜』
凛月は心配そうな顔をしながら保健室を出ていった。
佐賀美先生に甘えて車で送ってもらうことにした俺は帰り支度をする。とにかく、早く朔間先輩に会わないうちに帰りたい。
***
『ただいまー』
佐賀美先生に送ってもらい、家に着いた。
おかえりという母親の声に今日のことを話す。
『ちょっと学校で頭打ってさ、気分悪いから今日はご飯なしで。もう寝る。』
『あー…あと、もし…朔間先輩…、零くんが来ても俺寝てるから、って言っといて。』
さすがに家までは来ないと思うけど、さっきから来ている不在着信の量に不安になって矢継ぎ早に母親に伝えて自分の部屋へ入った。
震える携帯をベッドに投げて、制服を脱いで着替える。
一応携帯の画面を確認してみると、やっぱりさっきからずっと朔間先輩だ。
『うわあ…怒ってんだろうなあ…』
基本朔間先輩から着信があったら折り返し電話しないと、キレられる。
以前、折り返すのを忘れていた時に 忘れてました!すみません〜!と謝ったところ、無言で睨まれたことがある。
思い出しただけで、またあれがくるのかとげんなりするが今はどうしても出られない。
怒られてもいい、今は無理。頭が痛かったって言えば許してくれるかもしれない。
それよりも今はこの胸のざわつきをどうにかしたくて、払拭させるように無理やり目を閉じて眠りについた。
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