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「あ、みょうじくん起きた?おはよう」
『!…す、すんません…』
青葉先輩は俺が爆睡していたのを知ってるみたいでふんわり笑った。
「ふふ、ぐっすり眠れたみたいで。」
『いやー…本も読まずに…まじですみません』
本の整理をしている青葉先輩を見ると、罪悪感で申し訳なくなる。
「全然気にすることないよ。珍しい人も見えたしね。」
『珍しい人…?』
「あ、内緒だった。そう、俺もびっくりしたんだ。」
『へえ…。あ、本の整理ですか?手伝いますよ ?』
「ありがとう。でも大丈夫だよ。もうすぐ終わるし」
『そうですか…。じゃあ俺は失礼しますね。』
「うん、またね」
失礼します、とぺこりと頭をさげて図書室を出た。
寝起きで喉もかわいたし飲み物でも買って帰るか、と自販機の前に行き、カバンの中の財布を出そうと手を入れた。
カサリと手に触れたのは紙袋みたいな感触で俺のカバンの中にそんなものは入ってないぞ?と中をまじまじと見る。
『なにこれ…』
カバンの中に入っていたのは、黒色の上品そうな厚い紙袋だった。中から出して、目の高さまで持ってきて、再度 なんだこれは?と首が傾いた。
そっと紙袋の中から丁寧にラッピングされたものを取り出してみる。
中身は俺が前から欲しいと思っていたもので、そういえばこれってこの前朔間先輩と買い物行った時に見ていたものだったような…。
そこまで考えたら俺はもうビビッときた。
誰が俺のカバンの中にこれを入れたのか。
凛月が言っていたこと。
自惚れかもしれないけど、もしかして。
自販機から一気にダッシュで図書室に向かって走る。
息切れ切れに図書室に入り込んで、目当ての人を見つけた。
『あ、青葉先輩!!』
「わ、みょうじくん。どうしたの?」
『さ、さっき、もしかして朔間先輩来てました?!』
「あー…分かっちゃった?」
『っ!、ありがとうございます!』
やっぱり、朔間先輩が来てたんだ。
青葉先輩から返事を聞いてすぐに図書室を出た。
こんな顔も見せずに、物だけ置いていくなんて卑怯だ。多分、頭を撫でていたのだって夢じゃないと思う。多分、本当に朔間先輩が無でてくれてたんだろう。
朔間先輩を探して、駆け回り、軽音部の部室に来たところで、息を整えて、そっと扉を開けた。
もう外は夕暮れ時で、真っ赤になっている。
部屋の中には誰もいないけど、棺桶はある。
もしかしたら、この中にいるかもしれない。
棺桶に近づいて、縁に手をかけ棺桶を開けてみた。
狙い通り、目を閉じた朔間先輩が寝ていた。
窓からさす夕日に照らされて、整った顔に影ができ本当に吸血鬼のようだ。
『…あのプレゼントって朔間先輩ですか…?』
ポツリと声に出して言ってみるが、起きてないのか返答はない。
『た、誕生日プレゼントとして受け取っていいんですか…』
今までまともなものくれたことないくせに、いきなりこんなもの貰ったら嬉しいに決まってるじゃないか。
それも朔間先輩から。
『ずるいですよ…。いきなりこんな…』
まさか朔間先輩がこんなことするとは思ってなかったから、あまりにも意外で驚きを超えて嬉しさが大きかった。
だって、あの朔間先輩が、俺様何様零様が、俺のためにプレゼントなんて…
じっと寝ている朔間先輩を見ていると、ふと触れたくなった。
寝てるなら気づかないかな。
そっと手を伸ばして朔間先輩の頭に触れた。
撫でられたように俺も朔間先輩の髪を撫でるように手をすべらせる。
なんだろう…気分は寝ている野獣をビクビクしながら撫でるというチキンレースみたいな感じだ。
今起きたら、確実にヤバイだろう。だって俺朔間先輩の頭、撫でたことないし。
いつも下に敷かれているが、今は大人しいこの魔王様を撫でているという優越感ににやけてしまう。
ニマニマしながら、朔間先輩を見ていると閉じられていた形のいい目がパチリと開いた。
『…うおっ!』
いきなり開くものだからビビって手も止まった。
「…。」
『あ、いや、これは…。髪に何かついてるから取ろうかと…』
焦りながら言い訳を言っていると、朔間先輩に手を掴まれて棺桶の中に引きずりこまれた。
朔間先輩の上に乗っかる形になってしまう。
「食われたいか?」
『…め、滅相もない…。』
あああ!寝起きで機嫌悪いのか?
俺を見上げる目が怖くて、目をそらしながら下を見る。
『て、ていうかあれ…。朔間先輩ですよね?』
「なんじゃ、あれって。」
『カバンの中に入ってたやつ…』
『この間買った時のやつですよね?!あれ、俺用だったんですか…?!』
「…はあ、鈍すぎ。イライラする。」
『…っ!お、俺用ってことでいいんですよね…?』
「うるさい。それぐらい分かるじゃろ。」
イラッとしたのか目を細めてこれ以上言うなというような視線で朔間先輩が見てきた。
俺が乗っていても難なく、体を起こして俺と同じ目線になった朔間先輩に目を合わせられなくて、やっぱり下を向いてしまう。
『え、いや、その…朔間先輩がこんなことするなんて…思ってなくて…』
『いや、まじ嬉しいです…。あ、ありがとうございます…。』
照れながらもちゃんとお礼を言った。だって朔間先輩が予想もしないことをするから悪い。そりゃ照れるだろ。
さすがに重いだろうと棺桶からどこうとすると、ぐいっと引っ張られ、耳元で囁かれた。
「ありがとうの言葉じゃ足りぬ。お返しは倍返しでよろしく頼むぞ♪」
『は、はぁっ?!倍返し…?!』
「当たり前じゃろう?あ、体でもいいけど。」
『そんなお返しはしませんよ…!』
なんだ。いつもの朔間先輩じゃん。この間は怒ってそのまま別れてしまったからどうしたもんかと思ったが機嫌が直ってくれてよかった。
至近距離にいた朔間先輩が俺の頬をぴとりと触って呟く。
「なまえが愛がほしいと言えば、我輩はそれ以上の愛を与えてやるのに。」
『あ、い…』
それは朔間先輩が大神や双子たちに向けている、親鳥のような大きな愛のことだろうか。
俺はそんな愛を求めるようなことはしない。だって俺にはそんな資格ないから。大神や双子みたいに才能があるわけでもないし。ただの凡人で、朔間先輩に使われてるだけのそんな人間だ。
そんな俺が朔間先輩を求めるのは良くないと思った。こうやって何か貰えるだけで嬉しいのに。
朔間先輩はいつもひどいけど、本当は優しいんだってことも知ってる。才能溢れて皆から支持される人。
だからこそ、俺はそんな朔間先輩に我が儘を言いたいとは思わない。
俺は近くでそっと、そんな輝く朔間先輩を見れるだけでいいんですよ。
何も言えずにただただ朔間先輩を見つめることしかできない。
少し寂しそうに目を伏せた朔間先輩に心が痛くなった理由が俺には分からなかった。
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