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誰かを好きになったことは人並みにある。
異性をちょっといいなとか可愛いなとか、そんな感じだけど異性に惹かれるというのは経験したことがある。
それこそ、人間の本能で惹かれるっていうのは多くの人が経験することだと思う。
…俺の場合はそれが今回は、相手が同性で、…自分でも信じられないけど朔間先輩だったということ。
初めて自分の気持ちに気づいてから、その日は眠れなかった。
電気を消した部屋の中でベッドに寝っ転がって真っ暗な天井を見上げたままずっと考えていた。
ドキドキしていた気持ちは考えれば考えるほど、熱が高まるようで うわぁぁ…と1人で恥ずかしくなっていた。
それでも俺の中にある理性が、必死でそれを抑えようとしていた。
(朔間先輩が好き?いやいや、何考えてんだよ。あの俺様何様零様、魔王様だぞ?あの人が好き?)
好き、になっちゃったんだよなぁ。
(ていうか、そもそも男じゃん。仮に俺が女だとしても朔間先輩はハードル高すぎだろ。っていうかそもそも男って時点で勝負どころじゃなくね?試合にも立てなくね?)
…だよなぁ。
(朔間先輩は誰にでも優しいし、まあ俺にはひどいけど。でもそんなたまに見せる優しさに惚れちゃっただけだろ?そんなの誰だって惚れるって。あんな誰しもが認めるハイスペック人間、同じ男でも惚れるって。だから俺が惚れたのはただ朔間先輩の優しさに当てられただけで朔間先輩から見たら周りにいるその他大勢の生徒の一人に過ぎないわけ。生徒Aなわけ。わかるか?)
…だよなぁ…。
(仮に、俺がもし朔間先輩と並ぶような超ハイスペック人間だとしたら可能性は1%はあるかもしれないけど、それはないだろ?だって俺は…)
平凡だもんなぁ…。
部屋の天井を見あげながら1晩中考えた。
俺は朔間先輩を追いかけてきた。
半ば逆に引っ張られるような形だったけど、それでもあの背中を追いかけてきた。
俺の周りにはそんな人間がたくさんいる。大神もアドニスもひなたとゆうたも、他にもたくさんいる。凛月もそうだ。
そんな数多くいる中の一人。平々凡々な俺が朔間先輩に近づけたことってあったっけ…。
そんなことを考えてろくに眠れず次の日になってしまった。
気づいてしまった好きという気持ちはまだ高まりが完全には抑えきれなくて少しだけ熱かった。
それでも必死で平常心を保ちながら1日を過ごした。
放課後はダンスの練習をしようと計画していたため、一人で空き教室に来た。
校内資金が必要なレッスン室なんかじゃなくて、ただ大きな鏡が立てかけてあるだけの教室。
一人だけなら問題ないし、充分だ。
ストレッチをした後、音楽をかけて覚えたい振り付けを確認していく。
『♪〜♪〜』
1、2、3、でステップ、1、2、ここでターン…
何回も何回も繰り返して1時間が経ち、2時間が経っていた。
『♪〜、〜っ〜はぁっ、』
汗が髪からポタリと落ちるほど何回も通しているのになかなか上手くいかない。
『…、♪〜、』
それでも何とか身につけたくて、休まずステップを踏んでいると、フラッとして上手く踏めずに曲とずれてしまった。
『…っ…はぁ』
深呼吸のようなため息を吐いて曲を止めた。
息切れのせいで肩が大きく上下した。
…朔間先輩ならこれだけ踊ってもまだまだ余裕だろうな…。大神も体力あるし、アドニスだって…。
鏡に写っている自分は汗だくの姿ではぁはぁと息が切れている。上がった体温のせいで顔は真っ赤だ。
…鏡の前に立つ俺はどこからどう見ても男。朔間先輩の背中を追いかけても足元にも及ばない平凡な人間だ。
『………。』
対面にいる俺を見た。
俺は大神やアドニスみたいに何か取り柄があるわけじゃない。女子でもない。
(誰が誰を好きだって?)
俺が…朔間先輩を…
(好きになってどうすんの?まさか結ばれるとでも?どこまでも普通な俺を誰が好きになる?)
…だよなぁ。
繰り返す自問自答。
朔間先輩を好きだとしても、その先に明るい未来は待っていない。
たとえ想いを告げたとしても、いや告げるつもりなんて毛頭ないけど、この恋は始まる前から終わってるんだ。
汗で湿った腕を見た。
手首には朔間先輩からもらったブレスレット。
…こういうのを貰って俺は浮かれすぎたのかもしれない。
鏡の前で自嘲気味に小さく笑った。
今ならまだ引き返せる。
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