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なまえ、あんた学校行かないの?

「…行かない」

勝手に転入承諾書に書いたのは謝るけど…お母さん学校行ってくれて嬉しかったのよ…?

「…もう行かない」

…そうは言っても…お友達?今、迎えに来てるわよ?

「…は?」

母親の言葉に一気に目が覚めた。

誰が、来てるって?

スウェット姿で玄関の前に立って、玄関の前にいるだろう人間に気づかれないようにゆっくり扉を開けた。

1cmの隙間から外を見た。

「あっ!遅せぇよ」

こいつ…昨日の…確か大神とかなんとか。
勢いよく玄関のドアを閉めた。

「……何であいつが…」

背中をドアにつけて考えを巡らせた。けど、どれだけ考えても何も接点のない大神がここに来ている理由がわからない。

もう一度ゆっくりと玄関のドアを開けて玄関の前にいる大神を見た。

「……何でここにいるんだよ」

「あの吸血鬼やろ〜から迎えに行けって言われたんだよ。」

「…今日は学校行かないから帰ってくれ。」

「それ嘘だろ。どーせまた行かなくなんだろ。引きこもりだったって聞いたぜ」

「……関係ないだろ。」

「俺だって来たくて来たわけじゃねーし!…関係あるから来てんだよっ!」

「帰ってくれ。」

「一緒に登校しないといけねえんだよ。」

「…1人で行くし、今日は体調悪いから無理だ。…明日から行く。」

そう付け加えた。行かないけど。

「だから、あんたを連れてかねぇと俺が困るんだよ!!」

「何でだよ。関係ないだろ。」

「……って言うから…」

ボソボソと言う大神に、は?と思った。
聞こえない。

「何?」

「だから…っ、あんたを連れてったらギター一緒に教えてくれるって言うから!!!」

「………」

照れたように言う大神にどろりと嫌な感情が浮き出た。

なんだよ、こいつ。朔間零にギター教えてもらいたくてこうして動いてんのかよ。どんだけあいつが好きなんだよ。イライラする。

朔間零に言いように言われて俺を迎えにきている大神も、そんなことを言って使わせる朔間零にもイライラした。

「……帰れよ。」

「そうしたら意味ねぇっつってんだろ。」

「…帰れって!朔間零には…俺が言っとくから…」

「何怒ってんだよ。」

「怒ってない。調子が悪いだけだ。だから休む。」

「はっ、引きこもりの常套句かよ。」

「っ!…帰れよ。」

「いいから早く準備しろよ。」

「行かない。」

「行く。」

「行かないって」

「ぜってー行かせる。」

玄関先で言い合っていると、仕事に行く父さんが出てきた。

朝から元気なのはいいことだがお前も学校があるんじゃないのか、と言われて口を噤んだ。

大神の目までそうだ早く準備しろと訴えてきていて、本格的に苦しくなった俺は家の中に入り込もうとしたのに大神から掴まれて入れない。

「っっしっつこい!!」

「ぜってぇ諦めねぇからな」

諦めなんてものを知らなさそうなその目が怖かった。俺は諦めも挫折も底辺も味わっているのにそんなものとは無縁だと言うようなその強い眼がひどく心地悪かった。



***



結局大神に根負けして、俺は家の中から外へ連れ出されていた。

「もう学校行くんだからいいだろ…別々で行きたい…」

「逃げられたら困んだよ。」

「…逃げない。」

「どうだか。調子悪いとか、明日は行くとか嘘ばっかり言ってるから信用ならねぇ」

こいつはイライラすることばかり言う。

ムッとして朝からイライラするのは精神的に負担だ。ああ、早く帰りたい。今すぐ引き返して布団の中に潜り込みたい。

そうこうしていると学院が見えてきた。

正門をくぐって、昇降口へ入る。
未だに履き替えが慣れなくて、少し遅れていると大神が来た。

「じゃ俺2階だから。」

「え、2年…?」

「あ、昼休み、軽音部の部室に来いよ」

あいつ2年だったのか…!年下にノコノコとついてきた自分を殴りたくなった。

最悪だ。しかも昼休みだって来いなんて何で命令されないといけないんだよ。

靴箱に向かってはぁとため息を吐いた。

「あ、みょうじくんおはようございます。」

「…あ、お、はよう…。」

そういえば誰かにおはようと声をかけてもらったのは…随分と昔のことだ。

青葉は教室に行かないんですか?と振り向いた。

待ってくれている青葉に歩み寄った。

今日は無事に過ごせますように…。