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「みょうじ先輩、これちょっと形が…」

「ちょ、ゆうたくん…そんな正直に言っちゃ…!」

「でも…ここ明らかに間違って、」

「……〜〜っ、ほっとけよ…!」

俺が一生懸命、裁縫しているのにこの双子たちは俺の手元を覗き込んで間違いを指摘してきた。

集中しすぎて間違ってるなんて気づいてなかった俺は指摘されてムッときて縫っていたものを前かがみになって隠した。

俺は最近この軽音部の部屋で裁縫することが多くなってきて今日もどうせアイツは棺桶の中で寝ているんだろうし使ってもいいだろうと隅っこでチクチクしていると双子たちがやってきた。

ここにいれば必然的に会う回数は増える。けど、俺はこの双子たちとはあんまり話したくなかった。

だって、パーソナルスペースというものを知らないのかこいつら近いし、俺としては本当に離れたい。

隅っこにいたのに、さらに隅に行くように後退した。

「あははっ、みょうじ先輩追い詰められたネズミみたい!」

「アニキ、俺もそれ思った〜!」

くすくす笑いながらそんな俺を見下ろす双子に本当にこいつら嫌だ!としか思えない。

俺より2つ下なのに、俺のこと年上として敬ってる感じが全然しないし、むしろ友達感覚で話しかけてくるから困る。っていうか話しかけるな。

ダメだ、こんなんじゃ進まない。

もうこの部屋から出ようとカバンごとかき集めて立とうとしたのに双子から抑え込まれた。

「ストーップ、どこ行くんですか??」

「…っ、他のところでやる」

「え〜別に練習の邪魔じゃないし、ここでやっても全然問題ないですよ?」

「もっと静かなところでやりたいんだよ」

「まぁまぁ、そう言わずに♪さっきのことは謝りますから♪」

ぐいっと押されて動くなと言わんばかりに固定されてしまった。どうしようかと考えていると、ドアの所に人が立っているのが見えた。

ちらりと見るとそれにつられて双子たちもドアの方を見る。

「あっ、転校生さん!」
「わ〜どうしたんですか〜!」

途端にきゃっきゃとドア付近にいた転校生の元へ掛けていく2人。

3人で談笑しているところを見ながらふと転校生の手に持っているものに目がいった。

どうやら衣装っぽくて、そういえば前に転校生が作らないといけないとかって凄まじい速さで手を動かしていたやつじゃないか…?

あの布きれが今はあんなにしっかりした衣装になっていることにびっくりした。

俺は自分の手元を見た。
何を作っているのか分からない、よれよれの布切れ。間違えて歪なしわが出来て失敗作だ。

やっぱり俺には…、無理だ…。

ぐしゃりと布を握りしめて、この部屋から出たくなった。何でも器用にこなす転校生に俺がついていけるはずもなく、失敗しかできない。

ため息を思い切り吐き出したくなったのをぐっと堪えて我慢したら、ギィィと音が聞こえて、向こうに置かれている棺桶が開いた。

目を向けてしまったので中から出てきた奴と目が合ってしまった。

一瞬で逸らしたけど。

最悪な気分なのに最悪な奴と目が合って最悪だ。ここに来るんじゃなかった、と後悔していたら目の前にアイツがきていた。

アイツって、もちろん棺桶から出てきたヤツ。

「……なんだよ。」

「…一番に目に入ってきたのがお主の泣きそうな顔で目覚めが悪くてのう。」

「っはぁ?目腐ってんのか?泣いてねえし」

「おかしいのう。寂しいよ〜えーんえーん、って聞こえたんじゃが…」

「目も腐ってれば耳も腐ってるんだな…」

歯ぎしりしたくなるほどにイラッとした。こいつ、俺のこと馬鹿にしてる。

言っとくけど俺はお前が大嫌いだ。
大嫌いな奴に馬鹿にされてムカつかない奴がいるもんか!

握っていた布をさらに握りしめてしまい慌てて手を離した。

その隙に俺の手にあったものが朔間零に取り上げられてしまっていた。

「か、返せ…!」

「……んー、これはひどいのう」

かあっと顔が熱くなる。こいつだけには絶対見られたくなかったのに。

朔間零は俺が間違ったところを指でなぞって、笑った。

「笑うな!これはただの練習用で…!」

「ほう、練習か!熱心なのはいい事じゃ♪やっとやる気になったかのう」

朔間零は勘違いして俺が練習するほどに熱心に取り組んでいると思いやがった。苦しい言い訳が墓穴を掘ってしまい、焦る。

「ち、違…」

朔間零から返された未完成の布を受け取り、すぐにカバンに入れ込んだ。

「まぁ…転校生の嬢ちゃんと比較するなと言っても難しいかもしれぬが…。自分のペースで進めばよかろ?」

こてんと首を傾けて俺にそう言った朔間零に少しだけ胸が軽くなってしまった。

「別に…比べてない…。てか、こういうの…興味ないし…」

「ククク、強がりじゃのう」

笑いながら朔間零は俺の頭を撫でた。

「…っ、やめろ!」

振り払って、朔間零を睨む。

「完成が楽しみじゃのう♪ま、指はあんまり刺すでないぞい。痛そうじゃ」

そう言って朔間零は立ち上がって双子と転校生たちの方へ行ってしまった。

何だ、あの優しい朔間零は……。
俺の絆創膏だらけの指を見て怪我するな、なんて…。
あいつあんな奴じゃなかったはずだ。あんな優しい言葉、言うような人間だったんだろうか。胸がドキドキして、少し痛い。

少しだけ俺の中の朔間零という人間が変わりそうになった。…けど過去の記憶が蘇った。

あの瞳、あの表情、忘れるな…俺が傷ついた原因を忘れるな…。騙されるな。あいつは暴君だ!俺の敵だ!最低最悪人間だ!

自分に必死に言い聞かせた。
揺らぐ心を掴んで、絶対に動かないように。