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ライブの日が近づくほど校内は活気づいていた。
「みょうじくん、おはようございます」
「おはよう…」
毎朝声をかけてくれる青葉も色々関わっているのかここ最近忙しそうだった。
俺は席について自分のカバンを開ける。
「ついにライブ間近ですね。みょうじくんは当日早くから準備に入るんですか?ライブは夕方からでしたよね」
UNDEADのライブは夕方から。朝より夜の方が力が覚醒してやりやすいとかなんとか朔間零が言っていた。
「…俺は準備とか手伝いに関わってないから…。」
スカスカのカバンから黒のペンケースを出して机の上に置いた。
「えっ?プロデュース、2人でやるんじゃなかったんですか?」
「…プロデュースとか…出来ないし…」
青葉の目を見ず、いつものように俯いで長い前髪で視界をシャットアウトした。
俯くだけで周りが見えなくて安心する。どんな視線を送られていても見なければ、傷つくこともない。
「じゃあ当日は観客席の方で見るんですか?」
「…見ない。」
「えっ」
「色々…予定があって…見れないから…」
「そうなんですね…。みょうじくん…DDDの時もいなかったですよね?」
「…あの時も色々、予定があったから…」
「そっか…。」
青葉との会話は途切れた。無理があるだろうか、プロデュース専攻のくせに校内ライブにも尽く参加していないというのは青葉にはおかしいと思われてしまっただろうか。
やる気のない人間。
そう思われても仕方ない。いや、どう思われたって…別にいい…。
「…ごめん、トイレ行ってくる。」
その場に居られなくて席を立った。青葉がどんな表情で俺を見ているか分からないけど横をすり抜けて教室を出た。
…居心地が悪い。皆ライブに向けて動いてる中、俺は後ずさりして踵を返して走りたくなっている。
「………」
早く、早く終わってくれればいいのに。そしたら、またいつもが戻ってきて俺はのらりくらりしながら毎日を学校に来て義務みたいに過ごしていくんだ。
あと何日。そうやってカウントしながら俺は早く嵐が過ぎるのを待った。
****
待ちに待ったライブ当日。
皆待ち遠しかっただろう。特に大神なんかは日に日にボルテージが上がっていってるみたいだった。
俺も別の意味で待ち遠しかった。早く過ぎ去って欲しかったから。
夕方の開始まであと数時間。
「みょうじ先輩!」
「っ…、なんだよ…」
1年生の葵兄弟のどちらかにいきなり飛びつかれた。
「もー、そんな猫背で、とぼとぼ歩いてるの校内でもみょうじ先輩だけですよぉー!すぐわかっちゃった!」
なんだよ、それ俺を貶してんのかよ…。
「あと少しでライブ開催!ほら、先輩も会場入りしないんですか?」
「…俺は予定あるから…」
「えーー?そうなんですか?」
「ていうか…お前らも出るんだろ…」
「そそ♪ゆうたくんはもう会場に行ってますよー」
てことは、今俺の目の前にいるのは兄のひなたの方か…。
「そう…。俺、急いでるから…」
葵ひなたの前から逃げるように廊下を早歩きで歩いた。
おかしい、俺が参加しないのはあいつらも知ってるはずなのに。誰に何と言われたって俺は見に行かない。
俺は帰り支度をして図書室に籠ることにした。
ライブが始まれば校内は人が少なくなる。そこを狙って帰ろうというわけだ。
突然校内にチャイムがなった。BGMと共にライブの集客放送が始まった。
仁兎の声だ。さすが、放送委員長だけあって聞きやすい。
始まった、校内の雰囲気が高くなる。
嫌だ、早く帰ろう。
早く、早くこの場から逃げなければ。
俺の心臓の鼓動も少し早くなっていた。こんな放送されてしまえば、否が応でも想像してしまうUNDEADのライブ姿。
あの4人が…ライトアップされたステージで歌って……
想像しただけで頭を抱えたくなった。考えるな、考えるな。あの時の歓声、響く振動、脳にこびり付くほどの歌声、雷に打たれたような衝撃、思い出すな。思い出すな。
もう、校内には居られない。帰ろう。
カバンを引っ掴んで図書室から出ようとした時だった。
ヴーー、ヴーー
ポケットの中に入れた携帯が震えている。
取り出して、着信中と表示された画面を見た。
「……っ」
俺は携帯を握りしめたまま、動くことができなかった。