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学校に行かなくなって三日が経った。

1度だけ鳴った携帯はもう音を出すことも震えることもなかった。

まぁ、こんなもんだろうなって思った。

別に俺が学校行かなくても気にするやつなんて1人もいないだろうし。

…別に寂しいとか悲しいとかそんな気持ちはない。

ただ、ここ数ヶ月の学校生活を思い出しては無理やり頭から消そうとするのが続いている。

話しかけてくれた青葉とか、仁兎とか、生意気だけど割と空気を読む大神とか…。

そこでふと、少し前のライブを見にこないかと誘う大神を思い出した。

俺様の歌を聞けと偉そうに言ってきた大神はステージで嬉々として歌っていた。

…思い出してまたもやもやとした気持ちになった。思い出したところで何が変わるわけでもない。

俺がこうして部屋にいる間もあいつらは笑って過ごしているんだ。

アイドルのあいつらと俺みたいな平凡は住む世界が違いすぎた。別世界みたいな学校に行くより、この薄暗い自分の部屋が俺にはお似合いだ。

夕方になってもダラダラと過ごしていたら部屋の外から声が聞こえた。


なまえ、お使いしてきて。夕飯の野菜。

「……外に出たくない。」

何言ってんの、一日中家の中にいるでしょ。ちょっとは手伝いなさい。

「……はぁ」

こんな明るい時間に外に出るなんて本当に嫌だ。それでも引きこもっていることで親に対して多少罪悪感はある。渋々部屋から出て母親から買い物リストを受け取った。

よろしくと言って1階に降りていった母親にまたため息を吐いた。


適当にクローゼットからパーカーとジーンズを取り出した。携帯と財布を持って重い足取りで玄関に行く。

靴を履いて玄関の外に出ても嫌だなという感情は拭えない。なるべく人目につかないように早く行って早く帰るしかない。

足早にスーパーに向けて俺は急いだ。



歩くこと15分、店内に入って必要なものをどんどんカゴに入れていく。さっさとレジに行ってすぐ帰ろう。

重たいカゴをレジに持って行って会計を済ました。カゴの中身をビニール袋に入れ替えてスーパーを出る。

手にずっしりとかかる重さ。何でこんなに重いんだよ…と母親に愚痴を言いたくなりながら通ってきた道を帰っていた。


「せんぱい、ししょ〜が一緒に来てくれなくて寂しい?ちょっぴりしょんぼりな色な〜!宙と一緒!」

「あはは、夏目くんはあんまり出たがらないですし…」


あ、あれは…青葉だ…あと同じ制服を来た人…。

まさかこんなところで出会すなんて…。

焦って俺は隠れるところがないか周りをキョロキョロ見渡した。

絶対に見つかりたくない、こうしている今も青葉たちは俺に近づいてきている。

咄嗟に俺は着ているパーカーの帽子部分を頭にかけて深く被った。

こうしていれば顔がよく見えなくてバレないだろう。それに前髪も長いし俺の顔を隠してくれるはずだ。


ドキドキする心臓。早く足を動かして俯きながらできるだけ自然に特に不自然なところはないようにすれ違おうとした。


「…あれ…みょうじくん…?」


……っやばい。

さらに深く俯いたのに、青葉は遠慮なんてなしに駆け込んで顔を覗き込んできた。


「やっぱり!みょうじくんだ…っ!」

「ぅ…あ…」

ずりと後ずさった俺に青葉はふわりと笑ったあと、急に心配そうな顔をして俺を見た。

「最近学校をお休みしてるから心配してました…」

「…体調が…悪くて…」

「そうなんですか?!今は…大丈夫なんですかっ?!」

「だ、大丈夫…」

「せんぱいっ、いきなり走るからびっくりしたな〜」

「あっ、宙くんごめんなさい。こちら、同じクラスで3年生のみょうじなまえくんですよ。プロデュース専攻なので関わることがあるかもしれませんね」

「なるほどっ!せんぱいのともだちな〜ともだちいっぱいのせんぱい、宙もたくさんほしいですっ」

「みょうじくん、この子は僕と同じユニットで1年生の春川宙くんです」

「みょうじせんぱいよろしくな〜っ」

「…あぁ…」

「…みょうじくんが来ないこと、転校生が心配していました。私が無理やりライブでステージに連れていったせいかもって…」

「…っ…別に…」

「零くんがそっとしておいてあげてくれって言っていましたけど…」


……は?…そっとしておけ…?

カチン、と頭にきた。

…俺がこうなってるのは誰のせいだと思ってるんだ…っ!それなのに上から目線でそっとしておけ…?はぁぁ?何様なんだ…っあいつ!

こっちは必死で忘れようとしていたのに、それを全部見透かすかのような言葉に沸騰寸前だった。

あいつから電話してきたくせに…っ、そっとしておけなんて…!!むかつく…!

じゃああの電話は何だったんだよ…!



「せんぱい、早く買って学校に戻らないとししょ〜から怒られるな〜?」

「あっ、宙くんそうですね。みょうじくん、学校、来るの待ってますね。」

青葉の笑顔はいつも控えめだ。思いっきり笑ったところを俺は見たことがない。

「……じゃあ…」

煮えくり返ってしまいそうな思いを胸に、手を振る青葉たちと別れて今度こそ足早に家に帰った。

玄関を入ってすぐにキッチンに向かって重たいビニール袋をどさりと置いた。

ありがとうという母親の声に生返事で返して、自分の部屋に戻った。

頭の中で青葉の話が蘇る。

そっとしておけ…なんて何であいつが俺のこと分かったような口で言ってるんだよ…。

俺の事なんか何にも知らないくせに…っ。

あいつが言うままに周りからそっと様子見されているんだと思うと朔間零の思い通りに掌で転がされているようでイライラした。

抗いたい、朔間零なんかの思い通りになりたくない。

…学校に行ってやる。

あいつの思い通りなんかになってやるもんか。