05
2週間がたった。
2週間経てども、何も変わらない。相変わらず俺は引きこもりだし、外に出ることもない。
だけどあのメールだけは2週間たった今も続いていた。
もちろん返信するわけないけど、一日に数回写真だけが送られてくる。
返信がないのに一方的にメールしてくる相手はよっぽどの暇人なんだろうと俺は思ってる。
じゃないとこんなめんどくさいことしないだろう。
だけど別に迷惑メールに設定するほど迷惑してるわけではない。送られてくる写真も不快になるほどのものでもない。
普通の外の風景だったり、食べ物だったり、動物だったり…、そこで俺は気づいたことがある。写真の中に人が1人も写ってないことだった。
そこに俺は妙に親近感を覚えた。ああ、こいつも1人なのかって。
だから俺はこのメールを削除することなく野放しにしていた。
そうこうしているとまた携帯が震えた。来たメールを確認する。
送られてきた写真は月だった。
細くて綺麗な三日月。
思わずカーテンを開いて窓の外を見た。写真と同じ三日月が空にいた。
今日は三日月か。
このメールで外のことを知ることが多い。今はこんな花が咲いているんだ、とか。こんな食べ物があるんだ、とか。
三日月を見ていると、自然と外で月でも眺めたくなった。そうだ、コンビニ行ってその帰りに公園に寄ろう。
夜なら外に出やすい。だって見えにくいし、周りからの視線を感じないから。別に自意識過剰なわけじゃない。ただ明るい昼間だと人の視線が痛く感じるだけだ。
引きこもってる自分への後ろめたさも相まって。
黒いパーカーを羽織って外に出た。夜の空気が気持ちいい。1日中部屋にこもっていた体に新鮮な空気が入り込んで体が軽くなった気がする。
コンビニでホットドリンクと甘いチョコのお菓子を買って出た。
公園はアイツにあったあの日以来だ。
そもそも俺が外に出たのもあの日以来だ。
公園のベンチに座って月を見上げた。
満月の時よりは明るくないけどその仄かな明るさがまた安心させてくれる。
夜はいい。皆いない。暗い。誰も俺を見ない。誰も俺を後ろ指でささない。
1人だ。
だから夜はいい。
出来心から俺も携帯で月を撮ってみた。カシャッという音がなって撮れた写真を確認したけど上手く撮れていなかった。
なかなか写真を撮るのって難しいのかもしれない。そう思うとあのメールを送り主は綺麗に撮っている方だ。
夜の雰囲気と久しぶりの外に高揚した俺は今しがた撮った写真をメールの送り主に返信してみようと思った。
俺も月を見てるぞ、と伝わればいいなと思ったから。
…俺はいつも失敗する。人生の中で何度か大きな失敗をする。馬鹿な出来心で動くから失敗するんだ。
それを経験して塞いでもう失敗しないでもいいように引きこもったのに、俺は馬鹿だからこの三日月の写真を送ってしまったことが大きな失敗だったということに気づけなかった。