クラスメイトBの話

 次は綾部先輩のもとに向かおう、と先輩の教室の前まで来てふと気が付く。綾部先輩と言えば、無類の土いじり好きとして有名だ。いつも制服を土だらけにして、先生に注意されたこともあるんだとか。そんな先輩が、昼休みに教室にいるだろうか。昼休みが始まったとたんご飯を掻っ込んで穴を掘に行きそうだ。
 でも土といっても、この広い学園には、いくらでも穴を掘る場所がある。グラウンドだって、砂場だって、花壇だってあるんだから。残りの時間を使って探すよりも、クラスの人に当てを聞いたほうがよさそうだ。予定を変えて平先輩に取材に行くのも少々時間が足りない。どうせだったら平先輩と神庭先輩は後回しにして、先に他の関連した人に聞くとしよう。平先輩たちは交流が狭いから、ある程度目処はたってるし。
 そうと決まったら、まずは綾部先輩の居場所を尋ねよう。ついでに平先輩たちのことも聞いておく。教室にいたならそのまま綾部先輩に取材。よし、これでいいかな。鉢屋先輩も、一週間くらい前に言っておいてくれたら、もう少し計画をたてられたのに。後で抗議をしておかなくちゃ。
 メモを取り出して半開きのドアを開く。ざっと見渡した感じ、綾部先輩はいないようだ。やっぱりね。机に頬杖をついて暇そうにしている先輩を発見。あの人に聞いてみよう。


「すいません」
「…ん、オレか?何か用?」
「僕、学級委員長委員会の者なんですが、校内新聞の取材をさせて頂きたいんです」
「校内新聞?」
「はい。平先輩と神庭先輩の恋愛模様についてです」


 平……。とぼそりと先輩は呟く。その表情は心底嫌いなものを見るようだった。まぁ、平先輩は嫌われやすい人だとは思うけど、ここまで嫌悪感を露にするなんて、昔何かあったんだろうか。うずうずとする好奇心に、少しばかり尋ねてみる。


「平の話をオレの前でしないでくれ。オレはあいつみたいに浮かれた自惚れ野郎が」


 大嫌いなんだよ。大きく溜め込んで、先輩は吐き捨てるように言う。どうやら藪蛇だったようだ。失敗したな、と頭を掻くと、先輩は重たいため息を吐いた。


「平のことなら綾部に聞けよ。あいつなら飯食ってすぐに高等部校舎裏の花壇に行ったから。普段はあそこにいるはずだ。よく見かけるからな」
「ありがとうございます。ご協力ありがとうございました」


 ぺこり、と頭を下げて教室を出る。綾部先輩を探して取材したら昼休みも丁度終わるだろう。それにしてもびっくりした。まさかあそこまで嫌いな人がいたとは。申し訳なかったなぁ、と盛り上がっていた気分が沈む。誰かが誰かを好きになるように、嫌いになることもあるんだなぁ……。申し訳なさに階段を掛け降りる足は自然と早くなる。よし、気分を入れ替えていこう。





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何事も楽しいことばかりじゃないようです。

08/02 如月アスカ