女の子の友達

 きーんこーんかーんこーん、と授業の終わりを告げる鐘が鳴り響く。起立、礼、と号令係の声に眠たい目を擦って顔をあげる。どうやら僕がうたた寝している間に授業が終わっていたらしい。
 お昼だなあ、と大きく欠伸をすると、ばしんと頭を叩かれる。力の抜けていた体はそのまま机に戻る。おでこが痛い。起き上がって振り返れば、案の定滝だった。


「痛い」
「馬鹿者。喜八郎、授業開始五分で寝る奴があるか!」
「ここにいるけど」
「屁理屈を言うな!お前、何度も指されていたんだぞ」


 まあ起きないお前に代わって優秀な私が答えておいたがな!と自慢気に前髪を払って笑う滝夜叉丸に適当に返事をする。この後普段なら人の話はちゃんと聞け、と頬っぺたがぐんぐん伸ばされるんだけど、滝が僕の顔に手を伸ばしたときに、廊下から声をかけられる。
 僕も滝も思わず固まった。滝に自分から声をかけるのなんてそう多くない。誰だろう、と振り返ったら女の子だった。


「平くん、昨日はごめんね、ありがとう」
「ああ、神庭さん。気にするな。七松先輩があんなことをするのも三之助がどこかに消えるのもいつものことだ」


 私は去年も体育委員だったから、慣れているだけだ。と答える滝に、女の子、神庭さんだっけ?神庭さんは申し訳なさそうに眉を下げる。なんとなく見覚えがあるような気がしなくもない。同じクラスになったことあるんだっけ。ぼんやりしたまま話を聞いているとどうやら同じ体育委員で、委員長や後輩についていけずに、滝の世話になったようだというのがわかる。


「昨日も平くんに探させちゃったし、私ももっと頑張るね。
そうだ、これ、つまらないものだけど」
「いや、だが」
「トッポだ!」
「こら、喜八郎!」


 神庭さんの持っているトッポに目を輝かせると、滝がまたぽかりと頭を叩いてくる。暴力はんたーい。そこまで痛くない頭を大げさに痛がってみせる。神庭さんは楽しそうに笑ってトッポを差し出してくる。


「私、今まで平くんのこと、自分の話しかしない嫌な人だと思ってた。でも、平くんって面倒見もいいし、普通にいい人だったんだね」
「い、いや!私が面倒を見てやらなければ喜八郎はろくに生活できないし……!」
「僕、滝がいなくてもちゃんとやっていけるし」
「平くん、今まで誤解しててめんね。これからもよろしくね」


 じゃあね、と手をひらつかせて教室を去っていく。
 トッポを押しつけられてぽかんとしたままの滝からトッポをふんだくる。ばりばりと開けて滝を見上げる。よかったね、お友達ができて。口をもごもごさせて視線もあっちこっちに行く。顔を真っ赤にして、嬉しいんだろうね。一袋食べてから未だ動かない滝の足を蹴り飛ばす。


「さぁて、ご飯食べようか」
「いっ!き、喜八郎!」


 友達百人できるかな?





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まあ、滝には無理だろうね。そうだな、僕含めて五人くらいが精一杯じゃない?
2011/08/06 如月アスカ