「じゃあLINEだけでも教えろよ!お前消しただろアカウント!」
「だる」
「もー!!!!」
いい加減話が進まないと思いLINEくらいならばと理久は切原にアカウントを教えた。そして即座に通知オフにする。そうでもしないと奴は暇だからといってスタンプ祭りを始めるのだ。
「じゃあまた会いにくるからな!!あとマジで勉強やべえ時は教えて!!」
「また来るの……?いやだから勉強は先輩達に教えてもらいなさいよって」
切原は理久の言葉を聞いているのか聞いていないのか、結局ただ気まずそうにしていた先輩達と一緒に帰っていった。二度と来るな。
何となく、彼らを見送りながら自分のLINEアカウントを開く。
「………、今またアカウント消したらどうなるかな」
「やめろさすがに切原が可哀想だ」
「いてっ」
ごつん、と日吉にチョップを食らう。
「ちゅーかこないだ部室来た子やんな?」
「あ、先日はどうもすいません」
そういえば他にも人が居たのだったと理久は思い出す。彼らを見やれば中心にあの有名な跡部先輩も居て、どこか芸能人を見ている気分だ。
というか自分が氷帝に居ることが切原にバレてしまったことが問題だ。きっとまた会うことになってしまうだろう。どうしたものか。
ふと、理久はスマホの画面をつける。
「何してるんだ?」
唐突にスマホを弄りだした理久を訝し気に日吉が覗き込む。
「どのくらいの衝撃与えたら人間の記憶飛ばせんのかなって」
「おま……」
「冗談だよ」
かちりとスマホのディスプレイを消す。
周囲にはドン引きしたような空気が流れていた。
****
帰る、と歩き出せば日吉に止められ、家まで送ると言われた。
既に辺りは薄暗く女子が一人で帰るには危ない状況だからだそうだ。
「切原と関わりはないんじゃなかったのか?」
そういえばそんなことを言ったなと理久は思い出す。
「苦い思い出しかない相手との関わりを知らせたくなかったんだなぁ」
「ある意味仲が良さそうだったがな」
「ご冗談を」
はははと理久が乾いた笑いをこぼす。
「今日は切原に言われて私を呼んだってこと?」
「いや、立海の幸村さんが跡部さんに頼み込んだらしい。切原が猫宮に会いたがってるからどうにか会わせてくれないか、と」
「超厄介」
ぐっと眉間に皺を寄せ、理久は顔を顰める。そんな理久を見て、日吉は小さく噴き出した。
「何よ」
「お前は意外と元気な奴なんだな」
「はぁ?」
「もっと大人しいイメージだったんだよ」
ふふ、と随分おかしそうに彼は笑う。何がおかしいのか理久にはさっぱり分からない。
「知らない人ばかりの学校だからね、そりゃあ猫被るよね」
「何故お前は氷帝に来たんだ?」
「親の転勤。本当は神奈川の外部の学校受けるはずだったんだよ…切原から離れたかったし少しランク落としてゆるーく学校生活送れるとこに行こうと思ってて」
「お前なぁ…」
「けど何かお父さんが東京の支店に転勤になりーの、お前の学校決めてきたからー!って。一週間は口利かなかった」
「あー……」
「なんというか、人生緩やかに生きたいものだよ」
同い年の言うセリフとは思えないなと、日吉は呆れたように笑った。