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とある休みの日。
理久はめぐるに誘われ遊園地に来ていた。

「おおう………吐きそう……」

入園直後から絶叫アトラクションを乗りまくり、ついに限界を迎えためぐるは青い顔をしてベンチに座り込んでいた。

「あれだけ乗ったらねぇ…」

二人とも絶叫が苦手なわけではない。が、やはり限度というものがある。理久としてはまだまだいけるが、めぐるが先に音を上げてしまったのだ。

「待ってて、水買ってくる」
「ごめんねぇ……」

必死に吐き気を我慢しているめぐるに笑いを堪えながら、近くの自販機まで歩く。自分の飲み物も買っておこうかと選んでいると、近くで「あ」という声が聞こえた。
条件反射のように振り返ると、そこには日吉が居た。

「…………ぇええええ!?何故!?」
「…マジか」

日吉も目を丸くして驚いている。
私服姿の彼は余計にイケメン度が増していて周囲の女の子達が色めきだっているのがよく分かった。

「日吉くん遊園地とか似合わねえー…」
「うるさい」

少し照れくさそうにフイと顔を逸らす。それが大変可愛らしかったというのは言わないでおこうと理久は思った。

「友達と来たの?」
「部活の先輩に無理矢理連れ出されたんだよ」
「わお」

ということはテニス部か。ならばさっさとめぐるの元に戻ったほうがいいだろうと、購入した飲み物を抱えてめぐるが待つ場所へ歩き出した。

「楽しんでね〜」
「待て」
「?」
「猫宮は誰と来てるんだ?」
「めぐるだよ。絶叫乗りまくってダウンしちゃって復活に時間かかりそうなんだよ」
「じゃあお前は暇なわけだ」
「暇ってことはないけどまあそんな感じかな」
「立花のとこまで俺も行く」
「何故?」
「いいから」

****

「日吉くんじゃん……やっほ…」
「具合悪そうだな」
「まあね……超グロッキー…」
「めぐる、水」
「ありがとう…」

理久から渡された冷たい水をめぐるはこくこくと飲む。先程よりもスッキリしたようだが、まだ顔色は優れない。

「日吉くんは誰と来てるの?忍足先輩達?」
「まあそんなところだ。いつの間にか置いていかれて、探すの面倒だから一人で歩き回ってた」
「えぇ……」

探してやれよ…と理久は思ったが言わないでおいた。

「立花はまだ動けないのか?」
「無理……」
「じゃあ少しだけ猫宮借りてもいいか?」
「いいよ〜」
「えっ」

借りるとはどういうことだ?理久はワケが分からないという顔で日吉を見る。

「じゃあ猫宮、ちょっと付き合え」
「何に、ねえ何に?!」
「ゆっくりでいいからね〜」

のんきなめぐるの声をバックに理久は日吉に引きずられるようにしてその場から離れた。

「一緒に来ている先輩達に断られてな、お前が居て丁度良かったよ」
「ねえ日吉くん、マジで言ってる?」

理久が連れてこられたのは、お化け屋敷だ。

「苦手か?」
「得意ではないな!?」
「苦手じゃないなら大丈夫だろ」
「一人で入ってはどうだろうか……!!」
「同行者の反応を見るのも楽しみの一つなんだよ」

フッと日吉は笑う。その笑みが、理久にとって悪魔のように感じられた。

「俺がついてる」

こんな時に、そんな素敵なセリフを言われても。