「蔵、準備できた?」
「おう」
「じゃあ行こっか」
シャンパンゴールドのパーティードレスに身を包んだ理久と、パリッとしたスーツを完璧に着こなした白石がホテルの一室から出て来る。
ふと横に目を向ければ、同じようにスーツを着た財前と謙也、そして千昭が居た。
「お待たせー」
「そこまで待ってへんよ、ほな行くか」
待ち時間嫌いなくせに……大人になったなと理久は感心した。
その隣では少し眠そうに欠伸をしている財前が居る。一番スーツ似合っとるやないか自重しろ最高だ。
心の中でグッと親指を立てる。
とまぁ、何故こうしてスーツやらドレスを着ているかというと、なんと今日は咲良と真田の結婚式だからだ。
今ちゃんと聞きましたか?咲良と、真田の、結婚式。
高校を無事卒業して、あたしは受験勉強嫌すぎて結局就職した。逃げたんじゃない、道を変えてみただけだ。
咲良は真田と一緒に居たいということで神奈川の大学を受験していた。離れてしまうのはとても寂しかったが、仕方なかった。
そしてそれから数年。ついに結婚することになった。
誰よりも先に報告をしたのはあたしだったということでそれはもう喜んで喜んで、祝福をした。
その時既に同棲していた白石も一緒に喜んでくれた。二人で何度「ついにか…」と言ったことだろう。なかなか込み上げてくるものがあったのだ。
神奈川での結婚式なので、みんなと予定を合わせて一緒のホテルに泊まった。
楽しみ過ぎてあまり寝れてないけどモーマンタイ!
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ウエディングドレスを着た咲良は本当に綺麗で、言葉が出なかった。その表情はとても幸せそうで、見ているこっちが無性に泣きたくなるほどである。
次元を超えた恋が実った瞬間だ。色々すげえ。
「咲良、綺麗やなぁ」
隣に居た千昭がぽつりと呟く。
無意識にそう言ってしまう程、綺麗なのだ。
「そうだね」
二人肩を寄せ合い、目の前の光景にほぅっと息を吐く。
結婚式が進む中、思考は少し昔へ遡る。
中学生に戻ったあの日から今日までを思い返す。脳裏に浮かぶのはあの濃い日。それは昨日のことのように新鮮で色鮮やかだ。懐かしさが心を満たしていく。
ふと視線を周囲に向ければ懐かしい顔ぶれが多々あった。
立海メンツはもちろんのこと、氷帝に青学に我らが四天宝寺。元、だけどね。
もう皆学生ではなくて、前のように会うことはなくなってしまったがちょくちょく連絡は取っていたので久しぶりという感覚は無いように感じた。
彼らから再び咲良に視線を戻して、そっと目を閉じる。
あっという間だったなぁ……
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「副部長ぉおおおおお!!」
「うわ赤也泣いてんだけど!マジかよ!」
「いつまでも騒がしい奴じゃの…」
泣きじゃくる赤也を丸井と仁王がいじっている。大人になった彼らはただただイケメンである。
ジャッカルは苦笑いを浮かべ、巻き込まれないように数歩下がって三人を見ていた。幸村と柳は保護者オーラを発しているように見えた。学生の頃と変わらず賑やかな彼らを見ながらどこか嬉しそうに微笑む幸村は天使のようだった。GJ。
ブーケトスをするとのことでわらわらと皆が集まってくる。
イベントが大好きそうなメンツが今か今かと待ちわびているようだ。向日に赤也に丸井に…あ小春ちゃん……菊丸ぴょんぴょん跳ねてる…アクロバティックで取りに行ったらだめだよ…うわ向日も飛び始めた
咲良がくるりと後ろを向いて、勢いよく花束を投げた。
あたしは特に興味が無かったので、花束の行方を目で追っていると、一人の腕が伸びその花束を掴んだ。
お!?誰だ!!?と思ってその人物に目をやると
「「「白石!!?!?」」」
皆の声がハモった。予想外の人物に、あたしは目を見張った。えーあんたそういうの欲しい人だったか?
自分が投げた花束が白石の手にあることに気付いた咲良は何故か喜んでいて。
取っちゃったー、といい笑顔でこちらにサムズアップをしている。そのままこちらへ寄ってきて、花束を渡された。
「え何であたし」
「理久のために取ったんやで」
「予想外過ぎてびっくりした」
「嬉しい?」
白石の顔が覗き込んでくる。いつもの優しい表情の中に少しの不安が見えた。
「んふふ、嬉しい」
花束の香りを吸い込めば花の甘い良い匂いが全身を巡る。
その幸福感に表情を綻ばせれば、白石はほっと息を吐いて隣に寄り添った。
「花束渡した意味、分かっとる?」
「分からん」
「雰囲気で感じ取れや」
「分からん」
別に意地悪で言ってるんじゃない。もしもあたしの解釈が間違っていたら恥ずかしいからだ。ただの自惚れにはなりたくないんですよ……勘違い恥ずかしい…
「俺にお前の人生くれっちゅーことや」
「もうあげてる気でいたよ」
「いやいや、完全に貰うには書類書かなアカンねん」
「何て言う書類?」
「婚姻届け言うんやけどな」
「マジかー大阪帰ったらその書類すぐ貰いに行かなきゃ」
「大丈夫や、万が一に備えてもう準備してあんねん。無駄を省くため俺の分は記入済みやで」
「やだしっかりしてる……さすがだね」
「せやろ」
茶番が一区切りついたところで、お互い堪えていた笑いがこぼれた。
「理久はええの?俺に貰われるで」
「是非貰ってほしい」
「決めるのは大阪帰ってからでええねんで」
「帰ってからも何も、もうずっと前から決めてるもん」
「ほな遠慮なく貰うわ。言葉通り、死ぬまで離さんからな」
「喜んで」
こんなめでたい日に、自分までめでたくていいのだろうか。
咲良の幸せそうな笑顔を見ながら、これが夢でないことを実感するように白石にくっつく。あたしからくっつくことが珍しいためか、白石は少し目を見開いたがすぐに笑顔を浮かべてあたしの腰を引き寄せた。
「理久、好きやで。大好きや」
「あたしも大好き」
****
「あといい加減名前で呼ぶん慣れろや」
「人前では無理ぃいいいいい」
「これからお前も名字白石になるんやで」
「ああああああああ」
END