向日と忍足そっちのけで言い合い(一方的)をしていると、そっちのけにされていた向日が割って入った。
「日吉お前!変なやつ入れんなよ!」
「他の女子のようなおかしさはないから大丈夫ですよ」
「つーかオカルト好きな女子なんてなかなかいねーだろ!騙されてんだよ!」
「……猫宮お前、正しく伝えてないのか?」
日吉は呆れたように理久に視線を送る。理久は腕を組んで大きな溜息を吐いた。
「むしろ正しく伝えようとしたって正しく伝わらないのがオチでしょう。信じる人はなかなか居ないって」
理久の言葉に、日吉は眉間に皺を寄せ「そういうものか」と呟いた。
「さっきから何の話をしとんねん自分ら」
「そうだぜ!俺らに分かるように話せよ!」
どうしたもんかと理久と日吉は顔を見合わせる。手っ取り早いのは実際に"視て"もらうのが一番だが。
「私、ちょっと他人より感覚が鋭いようで。視えるんですよ、そういうモノが」
「嘘くさ」
向日が鼻で笑う。
「あとは危機感知とか直感力が冴えてるんですけど。向日…さん?あなたが探してる赤色のシャープペン、机の左脇に落ちてますよ。自宅の。」
そう言った途端、向日の表情が固まった。そして畳みかけるように理久が続ける。
「あとエロ本の隠し場所、母親にバレてますよ。クローゼットの……」
「うわああああああおま!!!待てお前!!!!」
「んぐッ」
突然顔を真っ赤にした向日に理久は口を塞がれる。塞ぐ手の勢いが割と強くて若干痛い。
「な、おま、なんで、は!?」
答えようにも口を塞がれていて答えることができない。
ようやくその事実に気づいた向日が手を離した。理久は大きく息を吸う。
「で、場所ってのはクローゼットの……」
「馬鹿馬鹿馬鹿なんでお前言い直そうとしてんだよ!!!!!」
今度は口を塞がれるわけでもなく思い切り頭を叩かれた。身長が近いせいでしっかりと叩かれてしまった。
「あとそっちの、忍足さん?あなたが探してる映画のDVD、棚移動してますよ。洋画って探すのちょっと難しいですよね。店の正面から見て左から3列目の棚の、真ん中の段にありますよ」
そう言えば忍足は目を丸くする。わかる、洋画って探すの難しい。
「まあこういうことなんですけど……向日さんセレクトのエロ本タイトルでも言いますか?全部言えますよ!」
「言うな馬鹿!!!!!!分かったから信じるから!!!!!やめろ!!!!!」
「痛い!!」
先程よりさらに勢いを増して頭を叩かれる。これは女の子相手に出す力ではない…
「驚いたわ……こんなことってあるんやな…次岳人の家行った時はクローゼットの中探してみよか」
「人ん家で何しようとしてんだよ!!!移動させるに決まってんだろ!!!」
「ほなまたこの子に聞いてみればええな」
「うわああああああ鬼かよ!!!!」
阿鼻叫喚ってこういうことを言うのかなと理久は感心するように小さく頷いた。
「で、こういう奴なんで、入部は文句ないですよね」
「むしろ入部させて監視しねえと!!いつバラされるかわかんねえ!!」
「ねえ私の意思は?」
疑いが晴れたのはいいことではあるが、部活に入るなんて承諾した覚えがない。
「私別に部活に入りたくないわけじゃなくてさ、部活終わる頃って日が沈みかけてるでしょ?その時間に帰るのって色々寄ってくるから面倒くさいんだよ。あんまり一人で帰りたくないというか…だから明るいうちに帰りたいわけで……」
「俺が家まで送る」
「その『もしかしたら何か見れるかも』みたいな顔してなけりゃ最高にかっこよかったのにな〜」
とりあえず、テニス部の顧問であるあの人に入部取り消しを申し込んでこようと思う理久だった。