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「日吉くん」
「何だ」
「苦手ではないけど得意ではないから、多分ひっつくけど、それでもいいのか」
「別に構わない」
「手握るどころじゃないよ、ねえ、今からでも日吉くんの先輩探してさ、先輩達と行きなよ」
「再三断られた」
「ねえええええ私も無理なんだけどおおおおおおやだやだ怖いんだけどやだああああああ」

理久の手を引く日吉と、意地でも動かないとひたすら耐える理久。傍から見たらカップルがいちゃついているように見えるだろうが本人は必死だ。

「猫宮」
「ここのお化け屋敷めっちゃ怖いって有名じゃん無理だってぇえええ」
「俺の背中に隠れててもいい」
「後ろから脅かされたらどうすんのおおおお」
「見えなきゃ問題ないだろ?」
「ああ言えばこう言うぅううう」

結局理久は根負けし、日吉に手を引かれながらお化け屋敷の入口をくぐるのだった。

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最初は日吉の手を握り締め、薄目でゆっくり歩いているだけだったが、奥へ進むにつれて恐怖は増す。
手から腕、最後は背中にしがみつくという何とも情けないスタイルになってしまった。
散々悲鳴という悲鳴を上げまくった理久は、お化け屋敷を出る頃にはほぼほぼ抜け殻状態であった。

「っく、ふふ……」
「ねえ何で爆笑してんの!?ねえ!日吉くんよ!ああああもう怖かったあああああリアリティ半端ねえなここ何なんだよここおおおおお!!」

未だに恐怖で震える体を擦りながら、その恐怖を紛らわせるため周囲に迷惑がかからない程度に叫ぶ。
そんな理久の傍らで日吉は片手で顔を覆いブルブルと震えながら笑っていた。

「ご覧よ!!ねえ!!この震えの止まらない私の手を!!ご覧なさいよちょっと!!私見たことあるよこういう震え!!うちのおじいちゃんだよ!!」
「ぶっは!!」

ついには日吉が膝から崩れ落ちる。

「笑いすぎだってば!!」
「……すまん…っく」

ようやく笑いが治まったのか、息を整えている。
だがしかし悲しいかな理久の手の震えは止まらない。

「はぁ………猫宮、手」

小刻みに震える理久の両手を日吉の手が包む。改めて見れば自分より二回りほど大きい日吉の手に、妙な感心を覚えた。

「くっ……すげえ震え…ッ」
「まだ笑い足りないか!!」

日吉は理久の両手を握ったまま顔を俯かせ再び笑い始めた。今日のことは一生死ぬまで忘れないと心に誓う理久であった。

「あー!!居た!!日吉お前どこ行ってたんだよ!!」

そんな二人の元へテニス部の先輩達がやってきた。
赤い髪の向日さん、丸眼鏡の忍足さん、はちゃめちゃに背がでかい鳳くん、常識人っぽそうな宍戸さん。鳳くんは目立つから知っている。
手を握り合っている状況を大変冷やかされたが理久はそれどころじゃない。あんたらがお化け屋敷を拒むから代わりに自分が大変な目に遭っただんだと言いたかったが、そこまで仲も良くないのでぐっと堪えた。
めぐると来ていることを知ると、めぐるも呼んでみんなで周ろうということになり、理久はベンチでグロッキータイムであろうめぐるの元へ走った。

その後テニス部の彼らと周る遊園地は、思っていた以上に楽しく、たまにはこういうのもアリだなと思う理久だった。