拾捌

今日は練習試合ということで、我が氷帝のテニスコートにはあの立海メンバーが揃っている。
圧巻、まさに圧巻である。

「よし、始めるか」

跡部の一言で豪華絢爛な練習試合は始まった。とは言えのうのうと見ている場合ではない、自分には自分の仕事があるのだと理久はコートに背を向けた。
ドリンクを作りそれを配りに行く。最初は手間取っていたものの、今は慣れたものだ。
加藤達はスコア係だ。真剣な表情で試合を眺める二人はとても格好良く、中身は自分のほうが年上であるにも関わらず少し憧れてしまった。

「ドリンク持ってきましたー」

休憩になった頃合いを見計らい、理久はドリンクを運んだ。漫画で読んでいたにしろ初対面だ、立海怖い。氷帝メンバーとはまた違った圧がある。氷帝はとにかく跡部の圧が強いせいもあるだろうけれど。

「ありがとう」

そう微笑むのは幸村だ。実物美しすぎるだろうと理久は心の中で叫んだ。

「君は……新しいマネージャーかい?」
「そうです、つい最近からです。もう慣れたとは思うんですけど、ドリンク口に合わなかったらすみません」

幸村の美しさ故に目を合わせることができず、視線を少し逸らしたまま理久はへらりと笑った。

「大丈夫、ちゃんと美味しいよ」

こんなん恋に落ちないほうがおかしいて。

「ありがとうございます〜」

理久は諦めにも似た気持ちで幸村に目を向けると、その天使のような笑顔にノックダウン寸前状態となった。見るんじゃなかったわ。

「見惚れすぎ」

誰かに笑いながら横から突かれた。理久はほんの少し顔を顰め自分の横を見上げると、おかしそうに腹を抱える丸井が居た。

「お前名前は?」
「太郎」
「嘘吐くなおい」
「嘘じゃないです!親に付けてもらった大事な名前ですよ!」

拳を握り、そう熱弁をしていると

「猫宮理久ちゃん、他人様に迷惑かけへんの」

クイ、と襟を掴まれたかと思えば背後から忍足にそう窘められた。いらんことすな。

「太郎じゃねーじゃんか」

やっぱりなという顔で丸井が言うと、忍足はわざとらしく溜息を吐いた。

「すまんな、この子ちょっと阿呆やねん」
「忍足さん酷くね??」
「これ以上迷惑かける前に氷帝んとこ戻ってきなさい」
「私を何だと思ってんですか」
「ほら行くでー」
「会話のキャッチボールができね〜」

そのままズルズルと氷帝陣営に引っ張られて行くと、問題を起こすんじゃねえと跡部に頭を叩かれた。
いや!待て!問題なんて起こしてないんだけど!

「まだそんなことしてませんけど!?」
「何か起きる前に釘刺しておかねえとな」
「そんな私のことトラブルメーカーみたいに言う」
「近からず遠からずだろ」
「私の扱いくそすぎ〜」

何故?

「お前の態度のせいじゃないのか?」

至極真面目な顔をして日吉が言う。私の態度の何がいけないというのだ、そりゃ中身は成人しているが一応中学生として跡部達年上は敬っているはずだというのに。

「物怖じしなさすぎて年下感がない」
「それはつまり神経が図太いと言われているのかな?」
「そうとも言うかもしれないな」
「日吉お前は何で半笑いなの?」

人を小馬鹿にしたように笑う日吉を蹴飛ばすと、倍にして叩かれた。トリップ万歳と喜んでいたのに、誰がこんなことになると予想できただろうか。
もう少し、もう少しだけ夢小説のような青春を味わいたいと思ったが、後の祭りである。