今日は謙也に誘われて遊園地に遊びにきた。
まさか二人だけとは思わず待ち合わせ場所で会った時は大変驚いたものだった。
けれど別に嫌なわけではない。
最近よく話すようになって、割と頻繁に連絡も取る。とても気さくで、それは文面でも変わらず、彼との交流は理久のひそかな楽しみになっていた。
「さー!何から乗る!?」
「もちろん絶叫やろ…!!」
最初の恥じらいはいずこへ。
園内へ入れば人の多さに圧倒されたが爆発的に上がっているテンションのおかげでそこまで憂鬱さを感じない。
「よっしゃ、行くか!」
ごく自然に謙也に手を引かれ、少々目を見張るもほどけないようにとその手を握り返す。
一瞬彼は変な顔をしたが、まあ気のせいだろう。
そこからは怒涛の絶叫ラッシュだった。元々自分もスピード感のあるものが大好きで、謙也と遊園地の話をしていた延長で今日誘われたのだ。
あれやこれやと乗りまくり、お昼は二人フードコートで軽食を食べる。
その間も話は尽きず、授業の話や部活の話、生意気な後輩の話で盛り上がった。ここまで気兼ねなく話せるのは彼くらいだろうと理久は頭の隅で考えていた。
「なあ、猫宮は……その、他の男友達ともこうやって遊んだりするん?」
「他?あーたまにあるけど…でも大抵男女混ぜて数人で遊ぶことのほうが多いかなぁ」
「ふーん」
「何よ」
「んーん、別に何でもあらへんよ」
「ねえ謙也くん、口の端にめっちゃケチャップついてるよ。笑っていい?」
「何ではよ言うてくれへんかったん!?笑うな!」
「無理」
「めっちゃ爆笑しよるやんけ!!!」
紙ナプキンでごしごしと口元を拭く謙也を理久は腹を抱えて笑った。
危うくいっぱい食べる君が好きなんて歌ってしまいそうになって冷やりとしたが、まあそれを歌ったところで彼は何とも思わないんだろうなとも思う。
「さあ!謙也くん!次は何乗る!?」
「待て!少し立ち直らせろ!」
「そんな暇ないです〜!行くよ!」
ギャンギャン騒ぐ彼を引っ張って再びアトラクションへと走った。
****
「はー!楽しかったねぇ!めっちゃ走った!」
「お前元気やなぁ」
満面の笑みを浮かべる理久に、謙也は少々呆れ顔だ。
あの後ひたすらに謙也を引っ張りまわし、挙句の果てには理久が迷子になって謙也に探されるという騒々しさを極めた内容となっていた。
でも楽しかったからいいのだと理久は勝手に考えていた。
「遊園地久々に来たけどやっぱり楽しいもんだねえ」
二人でゆっくり歩きながら駅へと向かう。
久しぶりに充実した休みだったと理久は内心ほくほくだった。
「せやな」
ふと、謙也の声に覇気がない。振り回し過ぎて疲れたのだろうかと、理久は隣を歩く彼を見上げる。
いつも通りの表情のようで、どこか寂しさが窺えた。
「けん……」
「お、駅ついたでー」
「あ、ほんとだ」
いつの間にか目の前は駅で、先程の違和感はうやむやのまま改札に入り、二人で電車が来るのを待っていた。
「猫宮、今日楽しかったか?」
「ちょー楽しかった!また来たいね!」
すると謙也は少し複雑そうな表情で、ぽつりと呟く。
「……俺やなくてもええくせに」
騒々しい周囲の音が一瞬止まったのではないかと思う程、その呟きがハッキリと聞こえてしまい、理久は呆然と謙也を見つめた。
「お前はいつも何してても楽しそうやからなぁ……別に俺以外と来ても楽しむんやろなぁ」
何故か拗ねだした謙也に、理久はワケが分からずおろおろしていまう。
「いや…!?そんなことなくない!?今日は謙也くんとだったからこんなに楽しかったんですが!?」
「でも他の男とも遊ぶんやろ?そっちもそれなりに楽しむんやろ?」
「それは普通に楽しむけど……何!?謙也くんどうした!?私遊園地でここまで楽しめたの初めてだよ!それって謙也くんと一緒だからでしょ!」
ね!と思わず彼の手を握る。この気持ちが伝わってほしくて、彼の手を握り締めてじっと彼を見つめた。
「ホンマに?」
「ホンマに!」
「関西弁下手くそか」
「なんだとおい表出ろ」
人が真剣に話しているのに何だそれは。そう思い握っていた手を離そうとしたが今度は謙也にぎゅっと握り返された。
「ほな次も一緒に来てくれるか?」
「仕方ないなぁ」
「遊園地だけやなくて、男と遊びに行くのは俺だけにしてほしいんやけど」
「……えっと………」
「この意味分かるか?」
握られた手が一瞬ほどけたかと思えば、指を絡ませ再び握られる。
ほんのり熱を帯びた彼の視線に、理久は頷くことしかできなかった。
忍足謙也に、駅の改札で、俺じゃなくてもいいくせに、と拗ねられる