先輩達と知り合ってからというもの、教室でちらほら話しかけられるようになった。
まあほぼほぼ先輩目当てに話しかけてきてるのが丸分かりなんだけど、それでも誰かとお話できることは割と嬉しかった。この際なりふり構ってらんない!
……って思ってたんだけど、みんな口を開けば仁王先輩が丸井先輩が幸村先輩が〜〜〜ってお決まりのように喋り出す。
ぶっちゃけそろそろ飽きた。分かる、分かるよ、先輩達かっこいいよね分かる。でも私は彼らに恋してるわけではないから本当大変申し訳ないんですけども興味が無くて。
最初は相槌打ってたり、先輩達と自然に会話できるように機会を作ったり、先輩達の好みとか探ったり。
疲れたーもう私疲れたよーーー
いやいや、最初から分かっていたことじゃないか。それでもその方法を選んでしまったのは自分だから仕方ないんだけど……ぼっちが恋しい。
自分で蒔いた種とはいえとても疲れたので、限りなく気配を消しクラスの女子に捕まらないようこそこそと逃げる日々を送り始めていた。
そんな時、二度目の呼び出しを食らった。今度は三年生からだ。死ぬ、今日こそ死ぬ。
呼び出してきたのは三人で、真ん中に居るお姉様は長い綺麗な髪を手で払いこちらを鋭く睨み付けている。わお三人共お綺麗だ。怖い。
「幸村くん達に目をかけてもらえてるからって調子乗んじゃないわよ」
どうしよう、漫画とか小説によくあるセリフでイマイチ緊張できない。気を抜くと無意識に噴き出してしまいそうだ。
というかこの先輩、ちょーっと違和感あるんだよなぁ。
幸村先輩が好きなように見えて……それは表の顔のような…そう取り繕ってるような……私の第六感がそう告げている。
「あんたなんかより、幸村くんに釣り合うのはあたしなんだから……ちょっと、聞いてんの?」
「じゃあ占ってみますか」
「は?」
「私ちょっと趣味で、占いやるんですよ。幸村先輩があなたのことをどう思ってるか、占ってみませんか?物凄く得意なんです、占い」
そう言うと、彼女の目が揺らいだ。絶対好きでしょ占いとか。おーおー迷ってる迷ってる……
「ふ、ふん!どうしてもって言うなら、やってあげてもいいけど?」
かかったー!
私はポケットからトランプと同じ大きさのカードの束を取り出す。所謂タロットカードだ。だがしかしそんじょそこらのタロットカードではない。理久オリジナルだ。世間一般のタロットカードは出たカードの意味を解釈して、占い結果を導き出す。
それは当たっているかもしれないし、全く当てはまらないこともある。カードの意味を理解するのは難しい。
そこで私のカードである。基本的にワンオラクルで占うが、私が導いたカードは、占う対象その人への答えを『カードそのものが』教えてくれるのだ。
こちらが解釈をするまでもなく、カードが『言葉』で教えてくれる。私が作ったカードながら大変優秀だ。
占ったが最後、あなたの心は丸裸よ!
手際よくカードをシャッフルして、選びやすいよう扇のように広げた。
「一枚引いてください」
私がそう言えば、彼女はおずおずと一枚引く。
そのカードを受け取ると、カードを通して彼女の過去現在未来に加え心境が手に取るように分かった。
カードが翻訳してくれてる、みたいな。
幸村先輩の気持ちを占うように見せかけて、私は彼女の『恋愛』を占った。
───ああ、やっぱり。
「…だめですね。幸村先輩は、あなたとは結ばれません」
「そんなはずない!!そんなわけないわ!!」
「いやいや確かですよ。先輩が結ばれそうなのは、同じクラスで茶髪で数学と化学が得意でバスケ部でいつもリンゴのパックジュースを飲んでてむぐぉッ」
他にも言うことあったのに!途中で誰かの手によって口を押さえつけられた。
押さえつけてきた相手を見れば、目には戸惑いの色、顔は真っ赤に茹で上がった彼女が口をぱくぱくさせて私を凝視していた。
んもー!幸村先輩よりもめっちゃくちゃ恋心寄せてる人いるじゃないですかあんたー!!盛り上がってきたーッ!!!
彼女は、後ろで首を捻っていた二人を追い払うように追い返し、再び私に詰め寄った。
「ちょっとどういうこと何であんたが知ってるのよ何よ何なの意味わかんないここここのあたしがあいつのことが好きみたいじゃない……ッ!!」
「はて、あいつとは?好き?え?」
「〜〜〜〜ッ!!」
きっと傍から見れば私の顔は殴りたい程うざいに違いない。そう意識しているから確実にそうだ。
「先輩と私初対面だし、別に調べたわけじゃないですよ。言ったじゃないですか、得意だって」
「ああああああたしが!あんなやつと…!!」
「でも先輩、幸村先輩よりもずっとずっとその人が好きですよね」
「うわああああああ言うなあああああああ!!!」
先輩は顔をますます赤くさせ、若干涙目である。
「……あいつだって…あたしのこと嫌いだわ。結ばれるわけないじゃない…」
フッと目線を落とし、辛そうな表情を浮かべる彼女は、先程までの威勢のよさが嘘のようで。これが恋かぁなんて少し勉強になった。
「えーでも、私の占いでは希望しかないように見えるんですけどね」
そう、別に絶望的な結果は何も出なかった。むしろ幸せを掴むことができる未来がすぐそこにある。
けどそれは、努力と、壁を乗り越える勇気が必要不可欠なようだった。
じっと彼女を見ていると、観念したかのように、話を聞かせてくれた。