今日も今日とて日差しが強い。
こんな炎天下で体育をやれなんて無茶を仰る……まあ私暑くないけどね。
炎天下とか言いつつも今日はバレーボールなので体育館だった。それでも風通しが悪い体育館は灼熱地獄で、皆汗だくだ。
可哀想なので一定時間置きにひんやりとした風を体育館に吹き込ませる。その度皆の表情が和らいでいた。
四限の体育が終わって、ジャージ姿でちんたら歩いていると、廊下の先に見覚えのある人物が居た。
「あー!!奈々先輩ー!!」
私は腕を大きく振って奈々先輩の元へ駆けだした。
先輩は私を見るなりぎょっとしていたが、そんなの関係ないもんね。
「いつもいつも騒がしいわね」
「元気が取り柄!!!」
「騒がしいって言ってんのよ」
「元気だから仕方ない!!」
話を聞く気が無いと分かったのか、奈々先輩は大きく溜息を吐いて私はデコピンを食らった。すげえ威力やばい痛い。
「こんな暑いのによくそんな元気でいられるわねー」
「若さと体力を持て余してます」
「もっと有効活用しなさいよ」
「へへー!!」
「へへーじゃないわよ」
呆れ顔だが、どこか満更でもなさそうで。
あれから奈々先輩は、ついに彼と付き合うことができたそうだ。やはり彼もずっと奈々先輩が好きだったらしいが、幸村先輩を好きだと勘違いをして、自分から距離を置いたそう。ああ悲しい。でも結果的に相思相愛になったので良しとしよう。後ろ向いててもしょうがないもんね。
「なんかうるせえと思ったら猫宮かよぃ」
聞き慣れた声がして、振り向くと丸井先輩とジャッカル先輩が居た。あら久しぶり。
「元気がいいと言ってください!」
「どう考えてもうるさいだけよあんた」
「とか言ってー!!奈々先輩嬉しいくせにー!!」
「……」
「すいませんでした」
奈々先輩の鋭い目がさらに鋭く細められ、背筋が凍った。調子に乗るの良くないよね理久学習した。
「……お前幸村くんと同じクラスの奴だろ、猫宮に何してんの?」
丸井先輩が奈々先輩を見た途端、険しい表情になる。眉間に皺を寄せ、敵を見るかのような視線を奈々先輩に向けている。
「何って、お話してるだけだけど」
「接点ねえだろぃ…つーか猫宮お前も何名前で呼んでんの」
「奈々先輩とは仲良しなので心配無用です」
「はぁ!?いつの間に!?」
「内緒っす」
「んだと猫宮のくせに!!」
「どういう意味ですか!?」
キーッと丸井先輩に歯を見せながら奈々先輩にくっつくと、暑苦しいと言って再びデコピンを食らった。仁王先輩の事例があるので、くっついても冷気は移らないよう工夫済みである。
「大丈夫そうだな」
よく分からないけどぷんすかしている丸井先輩をよそに、ジャッカル先輩が安心したように私の頭をぽんぽんと撫でた。
「何がですか?」
「俺ら心配してたんだよ。また猫宮が他の女子に呼び出されていじめられてねえかって」
そんなことを言われ、私も奈々先輩も気まずそうに視線をそれぞれ逸らす。あったけどね、今まさに隣にいる人から……あったけどなかったようなもんだぜ。
「皆さん心配性ですねぇ…」
「お前が危なっかしいからだよぃ」
「いって」
横から手が伸びてきて、私の後頭部からスパンと乾いた音が鳴った。女の子の頭叩くとか何なの丸井先輩。
「仲良いわねぇ」
そんなやり取りを見て、奈々先輩が感心したように呟いた。
「嫉妬!?奈々先輩嫉妬ですか!?大丈夫ですよ今一番仲良しなのは何といっても私と奈々先輩!!大丈夫です心配いりません!!私と先輩だって!!相思相愛!!」
「あ、早く奏多のとこ行かないと!あんたに構ってらんないわじゃあね」
私の言葉に一言も返すことなく、奈々先輩は愛しの彼の元へ駆けて行った。泣かないやい………
「おーまーえーさー」
「うわっ」
途端に背後から重みを感じた。
何故か不満気な声色で人の背中にのしかかってくる丸井先輩に耐えながら重いと抗議をする。
「何俺らよりも仲良くなってんだよ」
「だめですよ先輩、奈々先輩彼氏居ますから」
「そうじゃねーよ馬鹿」
「何の話」
重いよ先輩。何なの。
ちらりとジャッカル先輩を見れば、やれやれといった具合にただ苦笑しているだけだ。いや助けてよ……
「先輩周りの視線が痛いんでホント離れてください」
「お前全然涼しくねえんだけど何なの」
「仁王先輩のことがあったから人に移らないようにしてんですよいい加減重いんですけど」
「あーづーいー」
「離れればいいだけでは!?」
よくわからないが丸井先輩にも冷気をお裾分けしてやれば気持ちよさそうな声がすぐ後ろから漏れた。やめろえろい。周りの女子は息も絶え絶えだぞ自重してくれ。
「ジャッカル先輩は何故助けてくれないのか」
「後が怖いから」
「何言ってるか分かんない…」
助けてと言っているのに、ジャッカル先輩は何かを恐れて一切手助けしてくれない。あんたの相方だろちゃんと面倒見てよ……
そんな視線を送っても、ジャッカル先輩はただただ笑うばかりだ。