「猫宮の家行きたい」
とある昼休み。教室に押しかけてきた切原先輩に引きずられ連れてこられたのは学食だ。私が居るテーブルには見事にテニス部レギュラーが揃っていた。
え?何で私このテーブルに居るの?びっくりするくらいアウェイなんだけどこれ何?
このアウェイ感に一人きょどりながら弁当をつついていると、先程の丸井先輩の発言である。なんていうかこの間から丸井先輩不機嫌なんだけど何なの。
「別に面白いものなんてないですよ」
「お前の家って時点で面白そう」
「意味分かんない…」
機嫌悪いくせに人の家来たいとか何なんだろう
「いいね、俺も行ってみたいな」
「よろこんでー!!」
「猫宮てめぇ!!」
女神改め幸村先輩が来たいと言うなら仕方ない。ぎゃんぎゃん吠えている丸井先輩なんぞ許してやらんでもない。
結局来ることになったのは、幸村先輩、丸井先輩、仁王先輩、柳生先輩、切原先輩……めっちゃ来るじゃねーか……ジャッカル先輩家の手伝いあるって言うし柳先輩も真田先輩も用事あるって…
柳先輩は残念がってたな。今度ご招待してやろう。ふふん
****
土曜日の午後。
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。やっと来たかとドアを開ければ制服姿の先輩達が居た。
「あ、部活終わりか」
「そー。はよ入れろぃ」
「それが人に物を頼む態度ですか」
「先輩の言うことは絶対だろぃ」
「そういうの職権乱用って言うんですよ!!」
会って早々喧嘩を始めた私と丸井先輩を幸村先輩が困りながらも宥めてくれる。申し訳ない。
どうぞと声をかけ、私は部屋の中へと歩を進めた。
「おや、鍵がありませんよ」
柳生先輩に待ったをかけられた。確かに玄関には内鍵が無い。私が住む間はちょっとばかし魔法で消しているのだ。だが安心してほしい、私の家はセキュリティが万全だ。
「大丈夫ですよ、扉閉めてみてください」
私がそう言うと、柳生先輩は少し戸惑いながら扉を閉めた。するとドアノブを中心に魔法陣が展開し、『ドアノブが消えた』のだ。
「は!?」
切原先輩は目を丸くして固まっている。そう、これが私の鉄壁のセキュリティだ!
「ドアノブがなけりゃドア開けらんないっすからね!鍵穴もないんだから無理無理!」
私がドヤれば、何故か全員疲れたような顔をしている。何で!?
「もうさすがに何も驚くことなんてないと思ってたけど、まだまだ甘かったな」
幸村先輩がふっと息を吐いて、へにゃりと笑う。可愛い天使。あっそうだ奈々先輩が居る今、どっちかっていうと奈々先輩が女神で幸村先輩は天使だな。シフトチェンジ!
全員を部屋に通して適当に座らせる。なんか家に自分以外の人間が居るのって変な感じだなぁなんて思いながら指を鳴らせば台所から食器の音が響いた。
カチャカチャと音を立てながら人数分のコップと麦茶の入ったボトルがトレーに乗ってスイスイと空中を泳ぐようにテーブルまでやって来る。その後遅れて出来立てのようなアップルパイが香ばしい匂いを漂わせながらテーブルの上で止まれば、一人でに人数分カットされ、一緒に来た皿にそれぞれ行儀よく乗った。
よく冷えた麦茶に熱々のアップルパイが全員に行き渡ったところで、私もちょこんと幸村先輩の隣に座った。
「口に合うかわかんないですけどどうぞ」
そう言ったのに反応が無い。は?と思って彼らを見ればまた固まっている。それはブームなのだろうか。やだ幸村先輩その顔可愛いですね。
「…………夢見てるみてぇ…」
ぽつりと切原先輩が呟く。…なんというか、これは私の日常なのだが、やはり魔法に馴染みのない彼らにとってはまるで夢でも見ているかのような感覚になってしまうらしい。物心ついた時から魔法と共に育ってきた私にとってはこれが『普通』だが、彼らにとっては『非現実的』なのだろう。
「うわこれうめぇ!」
そしていつの間にかアップルパイを食していた丸井先輩が叫ぶ。おう良かったな。
「仁王先輩うろつこうとしないでくださいどこ行く気ですか」
「トイレ」
「そっち全然違うでしょ」
やばい、目が離せない。何しでかすかわかんねえぞあの人………