「見たことない植物ばかりだね」
「私達魔女しか育てることができない植物ですからね。この花から取れる花粉は薬の調合に使うんですよ」
「すごいな」
何だかんだで順応性抜群な先輩達は既に寛いでいる。
仁王先輩の動きに注意を払いながら、幸村先輩と植物談義に花を咲かせていた。
「なー猫宮ー、仁王先輩に作ったあの髪ゴム俺にも作ってー」
どーんと人に寄りかかってきた切原先輩にそんなことを言われた。……いやいや、先輩その、申し訳ないんだけど先輩が髪ゴム使ったら大変なことになるんじゃ…
「お前今何考えた?俺の頭見て何考えた??」
「ッく、!」
「部長何笑ってんスか!?」
私の考えが分かってしまったのか、幸村先輩は思い切り顔を背け肩を震わせながら笑いを噛み殺している。むしろ我慢するほうが体に悪いんじゃないかというくらい笑っている。
「俺髪ゴムなんて使わねーから!別なやつ!」
「えー……面倒くさい…」
「仁王先輩には作ったくせに!」
「引っ付かれるの困りますもん」
「俺だって快適に学校生活送りたい!快適に部活したい!!」
「いやすごい面倒くさいこの人…」
人の服を掴んで泣きまねをし始めた切原先輩はどこまでも鬱陶しかった。何だろう全然可愛くない泣きまね。出直してきてほしい。
「俺と猫宮は仲良しじゃからのぅ」
「えー私初耳!仁王先輩どさくさに紛れて隣の部屋覗こうとしないでください!ちょっと!女子の部屋!!」
「女子?」
「キレる5秒前ー!!!!!!」
私がそう叫ぶと仁王先輩は大人しく柳生先輩の隣に座った。よろしい。
「つーかよ、猫宮お前、こないだ一緒に居た奴って幸村くん追っかけてた奴だろ。何で仲良くなってんだよ」
アップルパイを頬張りながら鋭い視線を向けてきた丸井先輩に、一瞬言葉が詰まる。
丸井先輩の発言を受けて、そういえば、と幸村先輩が呟いた。
「蒼井さん、だっけ。最近全然近くに来なくなったな。彼氏ができたとか…」
「あー……いや、本当は奈々先輩に呼び出しされたんですよね。幸村先輩に近づくなーみたいな」
「呼び出されてんじゃねーかよ何で誤魔化したんだあん時!」
「まあまあ……奈々先輩ね、本当はずっと好きな人が居て、幸村先輩のことは好きなフリをしていたみたいで」
事の顛末を彼らに話せば、気の毒そうな、なんとも苦々しい表情に変わっていく。分かる、分かるよ。かわいそすぎるよ本当に。
「それで最近やっと相思相愛になって、私とも相思相愛になった」
「多分それお前の勝手な思い込みだぞ」
「なんてこと言うの丸井先輩!そんなことないもん!絶対違うもん!」
私は丸井先輩が間違っているということを示すため即座に奈々先輩にメッセージを送る。
『私と先輩相思相愛ですよね!?』と送れば秒で既読がつき、『は?』という極々短いメッセージが返ってきた。どうしよう嬉しい。
「うわぁ……猫宮気持ち悪………にやけんなよ…」
「この溢れんばかりの愛がこもった奈々先輩からのメッセージを見てにやけるなっていうほうが無理」
「…いや……いやいやいやいや…えっ、これどこに愛……え?…うわこええ!俺もう猫宮がこええわ!」
奈々先輩からの返事を見た丸井先輩が何故か悲鳴のようなものを上げた。何で。
「あーーーーー何か彼女欲しくなってきた」
「なんじゃ赤也、一丁前に」
「だって今の話聞いたら羨ましくなるじゃないスかーーーー」
「そうかのぅ…」
「先輩達彼女居ないんですか?」
何気なしにそう聞けば、全員が首を横に振った。えーッ、意外。
「腹立つくらいモテてるのに」
「本当お前一言余計だな」
「丸井先輩の影響かな…」
「関係ねーわ!!!」
キレる丸井先輩から逃げるように、私は柳生先輩の後ろに隠れた。柳生先輩はおやおやと笑いながら、子供を見守るかのように匿ってくれた。誰が子供だ。
丸井先輩が怖いので、私のアップルパイを彼に渡すと一瞬で機嫌が直った。子供は丸井先輩だった。
「最近癇癪激しいな丸井先輩…」
私がぼそっと言うと、仁王先輩がクツクツと小さく笑った。
「お前さんのせいじゃ」
「えぇ?」
「その蒼井とかいうやつに猫宮が取られたと思っとるんじゃろ」
「え…そんなに奈々先輩と仲良しに見えますか…?どうしようすごく照れる……」
「猫宮の思考回路めちゃくちゃじゃの、話にならん」
「面白すぎてお腹痛い……」
「幸村君、笑い過ぎですよ…」
目尻に涙を溜めて笑い転げる幸村先輩に、柳生先輩は苦笑するしかなかった。