魔女は招待するB

気が付くと、外はオレンジ色に染まっていた。もうそんなに時間が過ぎていたのかと驚き、彼らに帰宅を促す。

「先輩達そろそろ帰ったほうがよくないですか」
「えー」
「えーって」

どこか不満気にこちらを見る丸井先輩がまだ居たいと我儘を言う。もう充分遊んだでしょ帰ろうよ。

「晩飯出ないの?」
「家で食べてくださいよ」
「えー」
「人数分無いんで無理です」

晩御飯食べて行こうとするなんてどこまで厚かましいんだ。私はびっくりだよ!

「長居しちゃったね。すごく居心地が良くて困っちゃうよ」

申し訳なさそうに、けれども楽しそうに笑って幸村先輩がそんな嬉しいことを言ってくれた。きっと本当にそう思ってくれていて、自分の空間が、他人にとって心地が良いと感じてくれることがこんなに嬉しくなるものなのだと、初めて知った。自分が褒められたかのような感覚に、言葉にしづらいむず痒さを覚えた。

「これだけ人数が居て、ここまでリラックスができたのは初めてですよ」
「えっへへへ」

柳生先輩の褒め言葉は、先生に褒められている感じがして素直に照れる。私は照れながら後頭部を撫でた。

「これ以上居ると迷惑になるからね。皆帰ろうか」

幸村先輩の言葉に、丸井先輩は渋々返事をした。

「絶対また来よう」

キリリとして不吉なことを言う切原先輩のことは聞かなかったことにして、彼らと玄関まで行くと、ドアに組み込まれた魔法を作動させる。魔法陣が浮き上がると、消えていたドアノブが出現した。

「気を付けて帰ってくださいねー」
「じゃーなー」

丸井先輩は名残惜しそうに頬を膨らませて、手をヒラヒラと振る。そんな彼を見て幸村先輩は微笑みながら、今日はありがとうと言ってくれた。彼らが帰ると、騒がしかった部屋に静寂が訪れ……

「静かになったのぅ」

何故か仁王先輩が普通に座ってた。

「幸村先輩!!忘れ物忘れ物!!!」

慌てて外に飛び出そうとした私を俊敏な仁王先輩が引っ掴んだ。

「仁王先輩も帰るんですよ!ハウス!!」
「今日俺ん家親遅いんよー飯ないから丁度いいかなって」
「知りませんよそんなこと…」
「だめか?」

捨てられた子犬のような瞳をしやがる。仁王先輩のくせになんだその顔は……もう明らかに演技じゃねーか………しかし何故だろうこの断ったら罪悪感が…みたいな感情は。まずい心を支配しにきている…

「…………大したものないですよ」
「別にいい」
「…はー………仕方ない…」
「猫宮は優しいな」
「そんなにやり顔で言われても」

半目で睨めば仁王先輩は面白そうに笑って、ガシガシと私の頭を撫でた。
溜息をついて、魔法を使う。テーブルにあったお皿やコップがスイスイと台所のシンクへ移動してカチャカチャと音を立てながら洗われる。
そんな光景を見て仁王先輩が、おーと声を漏らした。

「魔法使う時は指鳴らすんじゃないのか」
「あれは分かりやすいようにやってるだけですね。スイッチみたいな感じです。音鳴らさなくても魔法は使えますよ」

お皿を洗いながら、晩御飯を作る。作ると言っても魔法である意味自動的にできてしまうが。
冷蔵庫から食材が飛び出し、まな板の上では食材が切られ、フライパンの上は食材が炒められる。仁王先輩はそれを珍しそうにじっと見つめていた。

「面白いですか?」
「物凄くな。お前さんは料理できんのか?」
「できますよー。この魔法、その料理の作り方を知っていることが条件ですから」
「へぇ」

心底面白そうに魔法を見ている仁王先輩がなんだか意外で、私は少し得意げに鼻を鳴らしてみた。