「猫宮ー!!」
「!?」
月曜日、帰りのホームルームを終えて帰る支度をしていれば、後ろのドアから絶叫とも言える丸井先輩の苛立った声が響いた。びっくりした椅子ごとひっくり返るかと思った。
えええええ何何怖いんだけど
ホームルームを終えたばかりなのでまだまだ教室には生徒が居る。彼らからは小さくもないどよめきが起こった。
「どうしたんですか…あ切原先輩もいた」
慌ててドア付近に居る丸井先輩に近寄れば、その後ろでヒラヒラと手を振っている切原先輩が居た。
「よー猫宮」
「わぁ、部活前にどうしたんですか」
切原先輩が居たことに少しびっくりして両手をハイタッチするように軽く上げると、それに応えてくれるように軽くハイタッチをしてくれた。そのまま両手を掴まれて遊ぶように左右に振られる。切原先輩手大きいな、当たり前か。
切原先輩ときゃいきゃいしていると、横から乱暴に肩を組まれた。
「俺も居るんだけど???」
不機嫌MAXな丸井先輩に、私も切原先輩も苦笑した。
「今日はどんなご用件で?」
「何で急に他人行儀なんだよぃ」
「これ以上丸井先輩怒らせたくないし」
「怒ってねーし」
「うそだぁ」
「土曜日、仁王と晩飯食ったんだって?」
「あンの詐欺師野郎チクったな!!」
言わないって言ったのに!言ったのに!!!仁王先輩言っちゃってんじゃん!!!
「あの後仁王だけ居なかったから問い詰めたら吐いたぜ」
「執念が怖い…」
「俺には断っておいてさ〜何仁王には食わせてんだよ〜」
「だって!居たんですもん!残ってたんですもん!そんなこと言うならちゃんと連れて帰ってくれればよかったのに!!」
未だ両手を握ったままの切原先輩に視線を送れば、めんどくせえなこの先輩って顔をしていた。すげえ分かるよその気持ち。
「っつーワケで、海行くぞ」
「どういうワケなのだろうか」
「息抜きにテニス部で海行くんだよ。猫宮も行こうぜー」
人懐っこい笑顔で切原先輩が行こう行こうと誘ってくる。すぐ隣では行くだろ絶対行くだろぃともう決定事項だとでも言うように強制参加を丸井先輩が宣告していた。
「いやでも海行きたいですね」
「じゃあ行こう!」
私の言葉に、切原先輩はパアッと顔を明るくして握る手に力を込めた。
「ていうかそんなことなら普通に連絡くれればよかったじゃないですか」
「仁王のこと直接文句言いたくてな」
「どんだけ怒ってるんすか…」
「食べ物の恨みは怖いって言うだろぃ」
「怖すぎですよ…」
少々顔を引き攣らせながら、ちらりと横目で丸井先輩を見ればいい笑顔をされるだけだった。それが逆に恐怖を増殖させる。
「海……奈々先輩も誘いたい…」
「あー、お前がそう言うかと思って声かけてみたけどよ、彼氏とデートだから無理だって」
「うわあああああん奈々先輩のビキニ見たかった!!!!!!」
「やめろ変態」
「ていうか先輩達部活は?」
「そろそろ行く。詳細決まったら連絡すっから……って俺猫宮の連絡先知らねーや、交換しようぜ」
「いえーいするー」
そう言えば何だかんだで丸井先輩としか連絡先交換してなかったな。丸井先輩に教えてもらったように、切原先輩と連絡先を交換する。また新たに友達が増えた。にやける顔を必死で抑えたけれど既に手遅れだったらしい。丸井先輩に、にやけすぎだと笑われた。
彼らと別れ、教室へ入れば羨望の眼差しに刺殺されそうになる。プラス嫉妬。
………。私が男だったら、こんなことにはならなかったんだろうな。
男として、先輩達と仲良くなれればよかったのに。性別の違いって、難しい。
でも海楽しみだなー!!!!