魔女は転換してみる

ついにこの日がやってきた。今日は先輩達と海に行く日です。
あのお誘いを受けた後、クラスの女子から他クラスの女子までが私の元に通いつめ、どうにか私から海行きのお誘いを引き出そうと躍起になっていた。正直怖かった。『海連れてけ〜連れてけ〜』の念が物凄かった。いや、仲のいい子なら…良かったんだけど……初対面の人が圧倒的だったし…ごめんよ……
……誘ったってさ、どうせ先輩達のとこばっか行って私とは遊んでくれないだろうし。
あー奈々先輩と一緒に行きたかった。
けど!水着は奈々先輩と一緒に買った!買い物一緒に行ってくれた!奈々先輩はセンス良くて、しかも私と好みも合うらしく大変気に入った水着を買うことができた。

って思ったんだけど……私は決めかねている。
今日のメンバーはテニス部プラス私。つまり女は私一人だということだ。これは何というか、私的に居心地がちょっと……男だらけに女私一人て。うーん、先輩達が舐められたりしないだろうか……

……よっし、せっかく奈々先輩と水着買ったけど、これは今度奈々先輩と海行く時にしよ!あの時"こっち"も買っといてよかったー




丁度支度を終えたところで、玄関のチャイムが鳴った。
荷物を抱え小走りで玄関へ向かう。

「猫宮ー!行くぞ……………………誰!?」

玄関を開ければ私服姿の丸井先輩が居て、私を見るなり目を見開き固まってしまった。

「私ですよ」
「いや違うだろ!?男じゃん!?誰!?」
「だから私ですよ!魔法で男になってるんですって」
「何で!?」
「いや、先輩達の中に私一人女が居たんじゃちょっと邪魔かなって……大丈夫!体もしっかり男なので女ってバレませ…」
「ぎゃああああ!!」

まだ不安であろう丸井先輩を安心させるべく、着ていたTシャツを胸元まで捲り上げた。今の体は男なので胸なんてあったもんじゃねえ
私の行為を丸井先輩は慌てて止める。慌て過ぎて思った以上に力が入ってしまったらしく、私は丸井先輩を受け止めきれずに後ろに倒れこんでしまった。…良かった、防御の魔法常にかけといてよかった……多分背中死んでた…
そのままの体勢で、自分の上で呻き声を上げている丸井先輩に声をかける。

「丸井先輩大丈夫ですか〜」
「…悪い……っつーかマジでお前猫宮なのか…声も顔も完全に男じゃねーか……髪みじけーし」
「あ、でも下は実物見たことなかったんで再現できてないです」
「やめろ言うなお前は少し恥じらいを持て」

赤いやら青いやら、顔色はよくわからないものの表情はしかめっ面な丸井先輩に頭突きをされた。

「ほら!早く海行きましょ!」
「いや馬鹿お前、それで行くのかよ」
「全員男のほうが先輩達も動きやすくないですか?」
「着替えする時、俺らと男子更衣室入んのか?」
「魔法でどうにかなるし…」
「そういう問題じゃねえ!女子いねーとむさいだけなんだっつの!」
「んぇえ〜せっかく男体化したのに〜」
「誰も望んでねーわ!わかったら早く元に戻してこい!」
「でもほらすごくないですか?程よい胸筋……」
「捲るな!!!!!!」

ぺらりとTシャツを捲るも丸井先輩の手によってすぐさま裾は下ろされ、挙句の果てには穿いていたジーンズの中に押し込まれてしまった。やだダサい
せっかく海パンも買ったのに!!!




仕方なくいつもの体に戻し、普通に女の子の服に着替えた。残念である。多分そこそこイケメンだったのにな…
長い髪を後頭部の高めの位置へ結び、少し気合いを入れる。もちろん、髪ゴムは仁王先輩から押し付け……もとい授かったものだ。

いつもの自分に戻って、玄関で待つ先輩の元へ向かう。丸井先輩は私の姿を見るなりどこかホッとしたようだった。正面からぺたぺたと顔やら頭を触られて、「いつもの猫宮だな」と満足気に頷いている。

まだ出発してすらいないのに何故か疲労困憊な丸井先輩と、幸村先輩達が待つ場所へと向かう。

「おー!来た来た!って丸井先輩すげえやつれてるけどどうしたんスか」
「聞くな…」

先程の出来事を思い出しながら大きな溜息を吐いている。
どうしたんだ?と切原先輩に聞かれたが、よく分からなかったので「暑いのかな」と答えると後頭部に丸井先輩の平手が飛んできた。
なんでよ!!