本日二度目。何故私は海に投げられねばならないのだ。
もうちょいキャッキャウフフな遊び方はないのか。
息を吸うために急いで水面に顔を出して一言文句を言おうと丸井先輩を捜した。
「おー飛んだ飛んだ。俺のほうが飛んでねぇ?」
「いーや俺ん時のが飛んだ」
「んなことねーだろぃ!絶対俺!」
「俺の飛距離には到底及ばんのう」
「んだと仁王!!」
人を飛ばした距離で争わないでほしい。
「えー!じゃあ俺も飛ばしたい!猫宮!早く上がってこい!」
「嫌っすよ!!!」
切原先輩がキラキラとした顔をして早く来いと手招きをしている。投げ飛ばされるって分かってて行く奴が居るだろうか。少しは考えてほしい。
……よーし…頭きたぞ……確かにな、さっき男達に絡まれたのは私が悪かった。確かに悪かった。
が。心配してくれて投げられたのならまだ少しは納得できたけどな、飛距離争うってのどうよ。
だったら自分達が飛んでみればいいのでは???
先程まで喧騒に包まれていた浜辺に静寂が訪れる。あるのは波の音だけ。
私達以外の人間は時を止め、ぴくりとも動かない。
「……あれ、」
浜辺からこちらを見守っていた幸村先輩達も目を丸くして、辺りの光景に驚愕している。
「今度は私が飛ばしてあげますよぉ」
「……おい待て、猫宮待て落ち着けって」
「発射3秒前ー」
途端に青くなる丸井先輩には目もくれずカウントダウンを始める。
切原先輩は何が何だか分かっていないようで、辺りをキョロキョロしていた。
「さーーーん、にーーーー、いーーーーーーち」
「待て待て待ておまっ……うわああああああ!!?」
ふわり、と三人の体が宙に浮くと、私を投げた時のようなスピードで海に引き寄せられた。少しして、三人が海に落ちた音がした。落ちた余波で水面が大きく揺れる。
「ぶっは!!!!猫宮てめぇ!!!」
「私が一番飛ばせたんじゃないですかね」
「鼻に水入ったじゃねーか!!」
「私二回も鼻に水入ってんですよ一回くらいいいでしょ!!」
頭からずぶ濡れになった丸井先輩は張り付く髪を掻き上げ私に怒声を飛ばす。ふんっ
「まさか飛ばされるとはのう」
「元々の原因は仁王先輩ですからね」
「女の子は皆喜ぶと思ったんじゃがの」
「何を参考にしたんですか?絶対間違ってますよそれ」
濡れた髪の隙間から覗く仁王先輩の目は色気抜群で、これ写真撮って売りさばいたらすごいことになるんだろうなと全然関係ないことを考えてしまった。
「めっちゃおもしれー!もっかい飛ばしてくれよ!」
「切原先輩めっちゃ元気〜よしまた三人まとめて飛ばしますか」
「ざっけんな!!やめろ馬鹿!!」
「ふふふ、丸井先輩、無駄ですよ。改めて私の魔女としての力量見せてあげましょうか」
私はにやりと笑って、魔法を発動する。
水面が大きく揺らいだかと思えば海水が竜巻のように巻き上がり、私の背後に大きな水槍が三本、蛇が鎌首をもたげるように佇んでいた。
「シャレになんねーわ!!」
「うはははは!!!木っ端微塵にしてくれる!!!」
「すんじゃねええええええ!!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ四人を、浜辺に居る保護者達は少し戸惑い気に見守っていた。
「猫宮の力は未知数だな」
「あれは俺達が全て知ることはできないだろうね…」
柳は興味深そうに顎に手を当てて笑い、幸村は空笑いをするだけだ。
「…おい幸村、あれは、というかこれは一体どういうことだ」
突如投げかけられた言葉に、柳も幸村も顔を見合わせた。そしてその言葉を発したであろう人物に目を向ける。
「…………あれ…跡部……というか……氷帝全員……?」
「………猫宮は少し手違いを起こしたようだな」
立海だけでなく、何故か氷帝全員までもが"動けていた"
理久は魔法をかける指定条件を間違えたらしい。だが彼女は気付いていなかった。丸井達三人を仕留めようと必死だったからだ。
「…柳、今すぐ氷帝全員殴って気絶させようか」
「落ち着け精市。混乱している」
「そうだねちょっと落ち着こう。動揺し過ぎて間違えちゃった、真田今すぐ跡部達殴って気絶させて」
「全然落ち着いていないぞ精市。こら弦一郎も殴りかかろうとするんじゃない」
浜辺は浜辺で阿鼻叫喚と化していた。