魔女だってたまには失敗する

「あー面白かった」

バシャバシャと音を立てて私はずぶ濡れで浜辺へ上がった。

「くっそ……めっちゃ海水飲んじまった…!覚えてろよ猫宮…!」

後ろで丸井先輩がうねり声を上げているが素知らぬ顔である。やられたらやり返す!倍返しだ!って前に流行ったから!使い時なくて使ったことなかったから!

「超アトラクションだったっスね」
「疲れた…」

切原先輩としてはすごく面白かったようで、物凄い満足気だ。仁王先輩は疲弊しきった顔をしている。何度も言うけどそもそもの原因は仁王先輩あんただからな。

「さー"乾燥"〜」

海水でべたつく体に乾燥魔法をかける。それに加え塩分除去も忘れない。おかげで瞬時に快適になった。

「おい猫宮だけずりーぞ」
「じゃあかき氷」
「どういうことだよいいけど」
「丸井先輩素敵!」
「棒読みじゃねーか」

丸井先輩含め一緒に遊んだ三人に"乾燥魔法"をかけ塩分も取り払う。全身のべたつきはとれ、三人とも声を出して感心していた。
さーかき氷かき氷……の前に時間停止を解除して、っと
時間が進み始めれば浜辺の賑わいが一気に戻って来る。一瞬、耳をつんざくようなそのボリュームに顔を顰めた。

「幸村先輩ーかき氷食べに行きましょうよ」
「…うん……あのね、ちょっとその……問題が…」
「?なんですか?」
「………」
「……?」

幸村先輩は物凄く気まずそうな顔をして、どこかを指さした。幸村先輩が指さす方を目で追い、見上げてみれば驚いたまま固まる跡部さんが居て。

「………おやぁ…………これはまさか…」
「……そのまさかだと思う…」
「はい"停止"!!」

今度こそ、我ら立海を除いた全ての時間が止まる。そのまま私は片手で額を押さえ天を仰いだ。

「…………間違えた」
「大変だったんだぞ、弦一郎vs氷帝の大乱闘になるかと」
「ちょっとそれ面白そう…」

素直にそう言えば柳先輩に頭を叩かれた。すいません。

「うーん……まあ跡部達も他人に言いふらすような人ではないし、言ってもいいかとは思うんだけどさ」

幸村先輩が困り笑いをして、柳先輩に叩かれた私の頭を優しく撫でてくれる。もうそれだけで痛みが引いたよありがとうございます。

「それはだめ」

幸村先輩の言葉に異議を唱えたのは、丸井先輩だった。続いて仁王先輩までもが「だめじゃな」と丸井先輩に賛同した。何故。

「どうせ跡部のことだからこれからちょっかい出してくんぞ、取られるかもしんねーじゃん」

ぷう、と頬を膨らませてそう言う丸井先輩にどう反応していいか分からず、戸惑いながら幸村先輩やら柳先輩の表情を窺った。

「ふふ、丸井は猫宮さんが大好きだからね」
「おう」
「えー肯定しちゃうんだ丸井先輩…」
「本当のことだし」
「わお漢気感じるぅ…」

照れるわけでもなく真顔でそう言うものだから、照れるタイミングを逃してしまった。お、おお……と返事になっていない返事をすれば幸村先輩が小さく噴き出した。
そして仁王先輩をちらりと見れば、こちらも妙に真剣な顔をしていて、目が合うと私を指さして

「大事な玩具」
「少しは丸井先輩見習ってくれませんかね」

恨み事を言ったって仁王先輩に効かないことは分かっているが言いたかった。そんな私の心の内を見透かすかのように、仁王先輩にはへらりと笑った。
まあこれ以上面倒事が増えるのは勘弁だったので、私は一人頷いて、跡部さん達に"記憶操作"の魔法をかけた。