外は茜色に色付き、その色は侵食するかのようにじわじわと校舎の中も朱く染めて行く。
たまにないだろうか。今日はすぐ家に帰りたくないなと思う日が。
私はある。別に家に誰かが居るわけではないが、ギリギリまで学校に居たいなと思う日があるのである。
今日はたまたま、そんな日だった。
ほぼ陽は沈み、間もなく訪れる藍色の世界に少しだけソワソワしながら帰る支度をする。空が茜色と藍色の混ざり合う時間というのはとても幻想的で、一番好きな空だと思う。その時間帯に箒で空を飛べば格別だ。
今日は飛んで帰るかーなんて思っていれば、教室のドアが開いた音がした。
吃驚してドアを見れば、同じクラスのギャルだ。
いや、ギャルと言ってもうるさいタイプのギャルではなく、常に二人で行動していて威圧感が凄いタイプのギャルだ。ギャルというかヤンキーに近いような…
別に授業サボるわけでもなく、かと言って授業中騒ぐわけでもなく。
礼儀正しいヤンキーっぽいな。
金髪なのが清水さんで、茶髪なのが三木さん……だったはず。
今教室に来たのは清水さんのほうだ。
一瞬目が合ったが、すぐに清水さんに目を逸らされた。ですよねー。
ていうかめっちゃ怖い……早く帰ろう…
さっさと帰ろうと、清水さんを横目にドアへ向かう。清水さんは探し物をしているようだった。
…失せもの探しめちゃくちゃ得意ですけど私〜〜〜〜!!ヘイ清水さん!一回やってみないかい!
なんて言えるわけがない。
ここは、控え目に、スッと……
「し、清水さん……探し物?」
「……財布」
「え゛ッ……大変じゃないっすか…」
「帰る時には鞄にあった」
「わ…私……その、探してみようか…?」
「は?」
ギラリと清水さんの目が光った。怖い。てめーに何ができんだ、みたいなオーラものっそいぞ。
「私その占い得意で多分見つけれると思うからその試しに一回やってみないかなってアハハハハハごめんなさい」
ついつい早口になってしまうのは仕方ない。怖いものは怖い。小心者の魔女だもの。
「やる」
「やるんだー……マジか」
「見つけれなかったら今日のご飯あんたの奢りね」
「っしゃー頑張るぞー!」
私は気合を入れて、ポケットに入っているタロットカードを取り出した。奈々先輩の時同様手際よくカードをシャッフルし、扇状に広げれば清水さんに差し出す。
「一枚選んで」
「一枚でいいの?普通何枚かで占うもんじゃないの?」
「あー…私ちょっと、第六感?インスピレーション?的なのがあって、相手が選んだカードから大体読み取れるんだ」
「…すごいね。じゃあこれ」
誤魔化せたかな。第六感でもインスピでもないよ魔法だよ。なんて言えないけど。
清水さんが引いたカードを見てみると、彼女が探している財布についての情報が脳内に流れ込む。
「…清水さん、さっき化粧品…みたいなお店居たんじゃない?」
「……居た」
「買い物してないけど一回財布出したでしょ。で、商品の棚に置いた」
「………あーーーーーーーーーあそこかーーーーーーー」
「店員さんが気付いて、多分預かってくれてると思う」
「多分そうだ、あそこだ。分かった、じゃあ一緒に来て」
「えっ」
「違ったらあんたに奢ってもらわなきゃなんないし」
「あっハイ」
未だ殆ど表情の変わらない清水さんとお店までダッシュした。
その頃には既に藍色一色の空になっていた。